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鬼切り夜鳥子 ~百鬼夜行学園~
普通の高二男子、久遠久は、ある日幼なじみの桂木駒子の異変に気づく。 全身に不気味な式神の刺青をまとった駒子は、夜鳥子と名乗る中世の女陰陽師の霊とともに、 同級生や先生に取り憑いた鬼たちと1人で戦っていたのだった。 駒子と一緒に戦うことを決意する久遠。倒す鬼は5匹。期限は1週間。 2人は鬼を倒しきることができるのか!? 「俺の屍を越えてゆけ」等でおなじみの鬼才ゲームデザイナー桝田省治が初めて書き下ろす、 妖艶な伝奇アクション。
一押しする点でどうしても避けては通れない点なので、 作者のことについて最初に述べさせていただきます。 桝田省治 この名前はゲーマーの皆様方の方が、確実に知っている名前です。 『リンダキューブ』『俺の屍を越えてゆけ』などの奇抜なアイデアを形にしたゲームを次々と、 世に送り出したゲームデザイナーで、この人が手がけたゲームそのものが、 一種のブランドにさえなっているというほどの、人気ゲームデザイナーというわけです。 この人の代表作である上記二作のゲームは、 『プレイヤーを楽しませる』という点に特に気を遣ったらしく、 ゲームシステムとゲーム内設定が切っても切れないほど密接に繋がっており、 「操作キャラ=プレイヤー」という図式を上手くプレイヤーに思わせるようにしています。 さて、本作「鬼切り夜鳥子」も例に漏れず、没となったゲーム企画書が元となったそうです。 「鬼切り夜鳥子」はやはりゲームが元となっているため、 ある種予定調和的なシナリオ構成となっています。 「OP→ADVパート→アクションパート→バトルパート→ED→最初に戻る」を、 明らかに意識した構成で、これが最後まで崩れることはありません。 そのうえアクションパート、バトルパートに相当する部分が、 最終的な目的は一緒となっているので、 『ある種予定調和的』と言った意味がわかってもらえると思います。 で、『面白くないのか』と問われれば『そうだったらここに投稿するか』となります。 さすがに鬼才とも奇才とも言われたゲームデザイナーだけあり、 アイデアと、それを繋げる舞台設定、キャラクター設定、 そしてゲーム的設定を恐ろしく密接に繋げてあるのです。 そうすることで『作品の面白さ』と『キャラクターの目的』が融合し、 違和感なく作品世界でキャラクターたちが暴れ回れるのです。 「キャラクターの動機が弱い」なんていうことがなくなっているわけですね。 ライトノベルでは舞台設定とキャラクター、最終的な目的までもが、 ちぐはぐに繋がっているものが大多数ですので、 その点においては凡百のプロ作家にさえ劣りません。 以上の点をはじめ、ゲームというエンターテイメントにおいて定評を得たデザイナーですので、 ライトノベルというエンターテイメントにおいても、 しっかりと「面白さのキモ」とも言うべきを掴んでいるのです。 こういう点は、参考にしたいですよね。
名前からして「馬」の字が入っている通り、走りまくる運動部系爽やか美少女です。 昨今のライトノベルではエロゲの影響か、 「さあ萌えろ!萌えるがいい!萌えなきゃ損だ! ってか萌えないと作品そのものが楽しめないぞ! いやそれ以前に作品そのものがキャラ萌えのためにあるし!」 というアクの強すぎるヒロインが多いですが、 駒子嬢はそういう点をぶっ飛ばす正統派ヒロインです。 また、ヒロインがエロいシーンを演ずるのも現在のライトノベルの定番で、 駒子嬢も例外なくエロシーンが続出ですが、 健康的なエロで挿絵で乳首が出ようが気になりません(ぇ おそらく今のライトノベルの現状など知らないであろう作者が、 こういうヒロインを出してきたあたり、なんだか皮肉な感もしますが。
小説としての文章あんまり上手じゃありません(汗 生涯初の小説なのですから、当たり前と言えば当たり前です。 仮に皆さんは、初めて書いた小説を人脈があるからと言って出版できますか? ……私は死んでも断りますね。さすが枡田。俺たちにはできないことを平然とやってのける。
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彼女を言い負かすのはたぶん無理
打ち込めるような部活も見つからず、平凡な毎日を過ごしていた桜井祐也の高校生活は、 ディベート部副部長・九重崎アイラとの出会いによって激変する! 美少女としての魅力がずば抜けているだけでなく、学園中から恐れられる「ディベートの天才」。 頭脳明晰かつ強引な性格のアイラを言い負かせる者など誰もいない! 桜井はそんな彼女と遭遇し、思いもかけなかった自分の才能を開花させていく……。
「未来の猫型ロボットは少年にとって有害である。是か非か」 を議論するような普通じゃないディベート部の話です。 ゲームやスポーツと違って、言葉でやり取りするディベートは、 文章で直接その面白さが伝わるので読んでて楽しいです。
『彼女を言い負かすのはたぶん無理』というタイトルの「彼女」であるメインヒロイン。 彼女と主人公との出会いがとても衝撃的でした。 ある意味、木刀を振り回したり、魔法で爆死させようとする他のラノベのヒロインより、 ずっと恐ろしいことを初対面の人間にしてるよこの人! でも、傲岸不遜なのに思いやりもあってどこか憎めない、そんなキャラです。 俺も、こんな先輩のいる高校生活を送りたかった!
主人公の男の子の論理や説得力が、まだまだ弱いからだと思います。 次巻からの更なる成長と活躍を期待しています。 訴えるなよ、小○館! それとマイナーなレーベルなので、書店によっては手に入りにくいかもしれません。 私がこの本を見つけたお店では平積みでしたけど。 というか出版元がPHP研究所って、何があったんだPHP!
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凍りのくじら
藤子・F・不二雄をこよなく愛する、有名カメラマンの父・芦沢光が失踪してから五年。 残された病気の母と二人、毀れそうな家族をたったひとりで支えてきた高校生・理帆子の前に、 思い掛けず現れた一人の青年・別所あきら。 彼の優しさが孤独だった理帆子の心を少しずつ癒していくが、 昔の恋人の存在によって事態は思わぬ方向へ進んでしまう……。 家族と大切な人との繋がりを鋭い感性で描く“少し不思議”な物語。
作品スケール、設定の派手さに事欠かない作品は幾らでもあります。 でも何か物足りない。物語でやっていることはこんなに派手なのにどうしてだか不満が残る。 いませんか?そんな方。 僕もその一人なんですけど。 そんな方にオススメなのが本書。 「凍りのくじら」 この作品には先ほど書いたような派手な設定は全くありません。 少なくとも現実の世界から離れたような物は唯一つありません。 「それはもうライトノベルじゃぁ無いんじゃないか?」って突っ込みされそうですが、 どうかお許しの程を。 本書を読んでいる時にまず感じるのは、 「嗚呼、こういうのってあるよな……」的感情。 何が〜的なんだよって言いたくなりますが、実際それだけ自然に見えるのです。 他の作品だと、ありえそうも無い展開を描写でカヴァーしていくような感じを抱くのですが、 この作品にはそういったものは微塵も感じません。ほぼ自然体。 でもかといって、退屈な物語ではなく、確かにありふれた世界観ですが、 何故だかとても読みやすく、加えて自然な展開の為、 それだけ一句一句が生々しく伝わってきます。 けれども物語が進むに連れ、作風に合わないほどの勢いで緊張感が増していきます。 400ページ弱に及ぶ長さでも、飽きる事はありません。 むしろ下手なラノベの方がよっぽど飽き易いです。 かの国民的漫画「ドラえもん」を作品に組み込んでおり、 各章のタイトルがドラえもんの道具の名前にしてある為、 それぞれの章で折り合いをつけることが出来るので、途中で混乱する事も滅多にありません。 (辻村深月さんの作品は大抵こういった作風ですが、ネタに「ドラえもん」を起用している上、 本作品が長さでいうと辻村さんの作品の中でも最短の為、 非常に読みやすいということでこの作品を推します) ミステリー中心の講談社ノベルスで、ライトノベルっぽい設定すら無い、 もはやライトノベルとは呼べないような作品ですが、 それでも冒頭で書いたような不満を持つ方にとっては大いに読む価値があると思います。 たとえ不満が無い方でも、本書を読むことで、 現実の、普段は気付かないような些細な事に気付く目を持てるようになる。そんな気がします。
現実的な作風なので女子高生にもかかわらず萌えません(笑)が、 そう言った要素とは別次元の魅力が多々あります。それが萌えかどうかは判断し兼ねますが…… 自分は男ですが大いに共感が持てました。
ただそれを踏まえた上でのオススメである事は言うまでもありません。
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