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 目指すのは、世界の果て。辿り着くのかわからない。でも旅をやめようとは思わない。

旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。


 ○読者投票結果
 最高です!一押し。 87
 おもしろいです! 22
 なかなか良いです。 8
 ふつうです。 1
 イマイチです。 0
 おもしろくないです。 0
 買うと損します。 0

ジャンルSF
著者萬屋 直人
出版社: 電撃文庫(メディアワークス)
発行年月: 2008年03月
本体価格 590円 (税込 619 円)
TenHieさん(男性・21歳) コヨーテさん(男性・16歳) 紅色卍朗さん(男性・18歳)一押し!

■ 解説                               

 世界は穏やかに滅びつつあった。
 「喪失症」が蔓延し、次々と人間がいなくなっていったのだ。
 人々は名前を失い、色彩を失い、やがて存在自体を喪失していく…。
 そんな世界を一台のスーパーカブが走っていた。
 乗っているのは少年と少女。
 他の人たちと同様に「喪失症」に罹った彼らは、学校も家も捨てて旅に出た。
 目指すのは、世界の果て。辿り着くのかわからない。でも旅をやめようとは思わない。
 いつか互いが消えてしまう日が来たとしても、後悔したくないから。
 記録と記憶を失った世界で、一冊の日記帳とともに旅する少年と少女の物語。


■ TenHieさんの書評                       

 固有名詞が喪失する『喪失症』。
 紙面上から文字が消えるに留まらず、その固有名詞が指し示すものの存在自体が
 消えてゆくその現象は『人の名前』とて例外ではなく、
 無慈悲にもその人から名前を奪い、色彩を奪い、果ては存在まで奪ってゆく。
 そんな病気が蔓延した世界を1台のバイク(スーパーカブ)に乗った少年と少女が旅をし、
 道中出会う人達の思いに触れてゆくという物語。

 重苦しい話になるのを覚悟して読んでいましたが、
 旅をする2人の自然体で楽しげなやりとりが印象深く、悲壮感は全くありませんでした。

 
 この作品はそんな悲観よりもむしろ
 『限られた時間をどう過ごすか』に焦点を当てた作品だったように思います。

 たとえいつ消えてしまうかわからなくとも、2人が旅を続けるのはただ純粋に『楽しいから』。

 喪失症の恐怖もある。でも何より消えてしまうまでの時間を俯いてたのでは勿体ない。
 道中の人々はそんな2人の心意気を感じ、
 喪失症に蝕まれながらも俯いた顔を前に向けてゆくこととなります。
 
 ある者は、飛ぶことを諦めかけた空に向かって。
 ある者は、病弱さを理由に眼を背けていた外の世界に向かって。
 喪失症という婉曲的な設定ではありましたが、
 『死ぬまでの生き方』という使い古されてるものの中々ちゃんとした解答が出しにくい問題に対し、
 荒削りながらも一本芯の通った答えが伝わってくる作品でした。

 ライトノベルでは珍しい、哲学的なテーマに挑戦した良作。
 電撃小説大賞にて惜しくも最終選考で落選してしまった作品ですが、
 文庫化され読めて本当に良かったと思います。



お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?
 ボスですね。テストフライト前夜に仲間を偲んで酒を飲む姿には漢泣きでした。


この作品の欠点、残念なところはどこですか?
 設定上仕方ないとは言え、登場人物に固有名詞がないのはやはり違和感でした。
 が、逆に『ボス』はボスでなければならなかった気もするので何とも。
 個人差があるのではないでしょうか。



■ コヨーテさんの書評                      

 病気(?)が蔓延した世界を書いた割とありがちな作品です。
 ですが、そういった作品の特徴である荒廃感はあまりなく、明るい雰囲気が魅力的ですね。

 いついなくなるかわからない中で、人と触れて、毎日日記をつけて旅をする・・・
 「幸せ 」と「絶望」を同時に感じるテーマです。

 主人公の少年、少女のほんわかしたやり取りがとても面白い。
 リアル学生である自分もこんな関係の人がいてくれたらな〜なんて思ってしまいました。


 読み終わって思うのは、このあと、登場した人たちはどこへ行き、どうなったのか・・・
 ということが非常に気になることです。
 みんな消えてしまったのか、旅はいつまで続くのか、「夏」以外の話も知りたい。
 そうい ったことが頭の中をモヤモヤと。

 北海道が舞台のようですが、季節は夏。結構暑いみたいですね。
 7月ごろに読むとなお楽しめるのではないでしょうか。


お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?
 2章に出てきた「ボス」が好きです。
 乱暴で面倒くさそうな性格ですが、ちょいちょい見せる素顔がとっても魅力的です。
 そういえば、彼の仲間も見てみたかった。

 いい意味で予想通りの終わり方をした2章ですが、
 彼の存在が消えた後の彼はどんな風に空を漂ったのか。
 そういったことが気になりますね。


この作品の欠点、残念なところはどこですか?
 固有名詞が出てこないので、感情移入しにくい・・・これだけでしょうか。



■ 紅色卍朗さんの書評                      

※最初から最後までネタバレです。ご注意を。

 『喪失症』という正体不明の病気が世界中に蔓延し、
 世界は滅びつつある未来の地球――というのがこの物語の舞台です。
 おそらくは日本、それも北海道でしょうが、断言できる記述がないのでわかりません。
 
 そもそもこの作品には、固有名詞がありません。
 国も、町も、村も、学校も、人物の名前すらも。


 固有名詞が失われた世界。
 そんな世界を、一台のスーパーカブに跨った二人の少年少女が旅をします。
 もちろん少年達の名前もありません。ずっと「少年」と「少女」で呼び合います。
 向かうは『世界の果て』。
 辿りつくのかわからない。でも旅をやめようとも思わない。
 記録と記憶を失った世界で、少年と少女は一冊の日記帳と共に旅をする――。

 というのが、この物語のあらすじですが――。

 暖かい人間関係の中にある切なさ、というのが作品から如実に表れていて心が揺さぶられます。

 特に物語中盤から登場するボス。
 彼と主人公達とのシーンは「最後の最後でこうなるのか……」という諦めにも似た心境が、
 読者である私たちをも包み込みます。
 他にも、色はないけど個性的なキャラクター達が多く登場します。

 暖かく、切なくて、どこか愛おしい。
 使い古された言葉ですが、この作品のキャラクター達にこそ、この言葉が相応しいと私は思います。


お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?
 やはり何と言っても主人公でしょう。
 普段はひねくれた部分を持ちながらも、いざというときは頼りがいのあるナイスガイ。
 ヒロインの為なら凶悪犯にでもなってやる!
 と断言した少年の男気あふれる言葉には惚れますね。


この作品の欠点、残念なところはどこですか?
 特に欠点はないですが、あえて言うなら、
 固有名詞が無い分、登場人物に感情移入しにくいことですね。
 人によってはそれを長所ととるかもしれません。



■ 一言感想コメント                       

・主人公の少年が好きです。
 その魅力は、エロゲ的要素を押し出さない、等身大の「普通さ」が描かれていること。


■ あなたはこの作品についてどう思いますか?(読者投票)     

最高です!一押し。
おもしろいです!オススメします。
なかなか良いと思います。
ふつうです。
イマイチです。
おもしろくないです。
買うと損します。


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たった一人取り残された「最後の子供」ルナが問いかける、生の意味

チグリスとユーフラテス


 ○読者投票結果
 最高です!一押し。 14
 おもしろいです! 1
 なかなか良いです。 0
 ふつうです。 0
 イマイチです。 0
 おもしろくないです。 0
 買うと損します。 0

ジャンルSF
著者新井 素子
出版社:集英社文庫
発行年月:2002年05月
本体価格 686円 (税込 720 円)
別府さん一押し!(男性・25歳)

■ 解説                               

 遠い未来。惑星ナインへ移住した人類は、人工子宮を活用し、世界に繁栄をもたらした。
 だが、やがてなんらかの要因で生殖能力を欠く者が増加し、
 ついに“最後の子供”ルナが誕生してしまう。
 滅びゆく惑星にひとり取り残されたルナは、コールド・スリープについていた人々を順に起こし始める。
 時を越え目覚めた者たちによって語られる、惑星ナインの逆さ年代記。
 第二十回日本SF大賞受賞作。


■ この作品について、熱く語ってください!            

 「命の意味」という究極のテーマに真正面から取り組んだ、
 日本SFの最高傑作のひとつがこのチグリスとユーフラテスです!

 誰でも一度は感じる「僕(私)の人生の意味って何?」
 という疑問の答えのひとつに必ずなると思います。



■ お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?  

 レイディ・アカリ(穂高灯)が一番好きです。
 この人の言動に、女の強さをひしひしと感じさせられます。


■ この作品の欠点、残念なところはどこですか?          

 やはり文体が一番の問題点だと思います。

 かなり軽い少女漫画のような文体で書かれているので、
 そこがどうしても合わないという人が沢山います。
 しかし、その点さえクリアーすれば、これ以上の傑作は滅多にないと思います。


■ あなたはこの作品についてどう思いますか?(読者投票)     

最高です!一押し。
おもしろいです!オススメします。
なかなか良いと思います。
ふつうです。
イマイチです。
おもしろくないです。
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