ライトノベル作法研究所
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  4. 電子書籍を無名でも100万部売る方法公開日:2013/03/27

電子書籍を無名でも100万部売る方法

ジャンル:マーケティング
著者:ジョン ロック
出版社: 東洋経済新報社
サイズ: 単行本
ページ数: 177p
発行年月:2012年12月
文長さんのオススメ!

■ 解説

 キンドルストアで「爆発的ミリオンセラー」の著者だから書けた、超実践バイブル!
 特別な才能は必要ない。出版社を通す必要もない。次はあなたが100万部! 著者のジョン・ロックは、インディーズ作家としてアマゾン・キンドルで初めて電子書籍100万部を売った男である。
 もともと小説家ではないうえ、わずか2年でミリオンセラーを達成したことから世界的に注目されている。

 本書は、執筆とマーケティングの両面からアプローチするが、肝となるのは、著者自身が数百万円をかけてトライ&エラーを繰り返し、ようやく辿りついた「マーケティングシステム」にある。このシステムの汎用性が高いということは、著者がキンドルで最もさえない・売れないジャンルだった「ウェスタン小説」のカテゴリーにおいてもベストセラーリスト入りしたことによって、実証済みである。

 本というパッケージで「自分の考えを発信したい」「世の中に影響を与えたい」「生きた証、記録を残したい」と考えるすべての人に読んで欲しい1冊。

 KDF(キンドル・ダイレクト・パブリッシング)完全対応!
 キンドルストア「自己啓発ニューリリース部門」で堂々の第一位!

■ 文長さんの書評2013/03/17

 大手出版社を介することなく、キンドルによる電子書籍の自主出版でミリオンセラーを達成した、「インディーズ作家」実業家ジョン・ロック氏の成功の理由を、本人が「あなたが電子書籍作家として成功するためのノウハウ」としてまとめた書籍です。
 私はこうして成功した、という系統の書籍ですね。

 昨今キンドルのサービスによってアマチュアでも自作に価格設定を行い、高い印税率で電子書籍を販売できるようになりました。
 これは従来のように、オンライン小説として自サイトに無料公開して地道に認知度を高めたり、高額出費を強いられる自費出版に頼ったり、出版社の選考を通過し編集部に気に入られなければ作品を世に出せなかった状況を考えれば、アマチュアもの書きの待ち望んでいた、非常に画期的なことだと思います。

 しかしその反面、プロ作家でさえ売上が厳しい状況なのに、ただのシロウトの文章にカネを払う奇特な人はそうそういないのでは、とも思えます。

 ジョン・ロック氏は様々な仕事に携わってきた事業家ながらも小説や出版とは特に縁のない経歴なのですが、ひとつの信念を持っていました。
 それは「マーケティング」の重要性です。
 自分は誰に向けて何を書くのか?
 読者層をどのように発見し、つながりを構築していくのか?
 また自分の作品を読んでくれた読者にどうアプローチしていくか?

 売れたければただやみくもに書いて、がむしゃらに告知するだけでは不充分だと主張します。

 それでも売上ランキングの常連なのだから、マーケティングはそこそこに、ロック氏自身にも相当の能力や筆力があったのでは?と思われますが、彼の経歴をまとめると、

・小説は(本著の執筆より)2年前から空き時間を利用して書き始めた。
・若い頃は保険の販売代理業などを行っていた(マーケティングの重要性を知り、出世したらしい)。
・作家や編集者に自作を送ったところ「こんなものは売れない」「これまで見た中で最悪かも」との批判をもらったことがある。
・売れた作品のレビューのうち2〜4割は批判的な内容

 このようにモノ書きとしての人脈や地位、さらには筆力や執筆経験も充分でなかった「無名作家」であったにも関わらず、2作品がキンドルのベストセラー総合ランキング1位を獲得、他の7作品でベストセラーリストに掲載される実績を残したのです。

 出版社がやるような従来型の広報手法は、大々的なポスター展開やプレスリリースなどあちこちに広告を打ちますが、莫大なカネがかかる割にちっとも売上に返ってこないとロック氏は言います
(彼は実際に少なくない資金を投入して壮大な予告編を作成したり、書店前に巨大ポスターを展開したり、ラジオに出演したりしたそうですが、効果はさっぱりでこれらのプロモーションは自分にとって誤りだったと述べています)。

 結論をまとめるとマーケティングとして大切なのは、一方通行的な広報や誰彼かまわぬ押し売りではなく、読者と「信頼関係」を築くことであり、作者として「信頼関係」を築き得る読者を発見し、確保すること。
 いい作品を書いてぽんと公開するだけで認められる時代ではないので、きちんとターゲットを絞って売り込んでいくことが必須となっています。
 例えばロック氏は自身の作品を愛好しているのはこういう読者だと本文中で述べています。

 私の読者は、「平凡な主人公」が好きだ。勝者より、勝ち目のない側を応援する同情的な側面を持っている。
 その反面、ワルにも魅力を感じ、ユーモアがある。
 登場人物に自分を重ねる傾向があり、地味で、女性にモテず、物静かな主人公を愛し、主人公が失敗したりトラブルに巻き込まれたりすることを楽しんでいる。
 語りの部分は軽くし、対話が多い作品を好む傾向が強い。
 また、従来の小説で当たり前とされていた手法を嫌う傾向がある。

 年齢層は50代が多く、70%以上が女性である。職業は、医者、看護士、経営者、退役した軍人などが多い。
 なかには映画監督もいるし、俳優、ブロードウェイのプロデューサー、脳外科医もいる。
 皆多忙であり、以前は難解な書籍を読んでいたが、近頃は電子書籍でリラックスした読書を楽しんでいるようである。

 彼らが私の小説に求めているものは、崇高な作品ではない。
 一日の限られた時間を楽しめたり、笑えたりする作品だ。」

 繰り返しますが本著では、「特定の読者に向けて執筆し、彼らを集客すること」が成功の秘訣だったと記されています。
 安易に大衆受けに走らずニッチ読者を獲得せよ(強固なつながりが築きやすい)、ツイッターなどSNSやメーリングリストを活用し、獲得した読者に継続的かつ誠実なアプローチを心がけよ、といった事々を自身の経験に基づいて主張します。

 内容は当たり前と言えば当たり前のことが多く、目からウロコな斬新な手法は特に登場しません。
 きょうび、SNSの活用などは多かれ少なかれ誰もがやっているでしょう。
 しかし無名のもの書きの大多数は面倒くさがってこんなことまでしないだろう、と思われることばかりです。
 ロック氏は「周りが面倒臭がる中、自分はそれを実践したから結果が出せたのだ」、「自身の評価は売上と共に高まっていく」と述べます。

 電子書籍のサービスはまだ普及の途上ながら、今後の発展は書き手、読み手双方に多くの可能性が眠っていると思われます。
 成功するインディーズ作家が増加すれば、大手出版社の新人賞を獲得して華々しくデビュー!だけが人気作家になる方法ではなくなってくるでしょう。

 そうした従来とは違う方向からもの書きとしてのあり方や目標を考える方にとっては実践的な書籍だと思われます。

 発行が2012年12月末と、非常に最近の書籍であることもプラス材料です。

■ この本の欠点、残念なところはどこですか?

 ロック氏が冒頭で述べる重大な注意事項があります。

「あなたは、世界一の作家になりたいのか?
 それとも、世界一のベストセラー作家になりたいのか?
 答えが後者なら、本書があなたの答えとなるだろう。」

 本人も自認するように、ロック氏の作品には小説として高い質があるとは言えないようです。
 この本は、例え際立った品質や実力がなくても
(※作品の質を軽視してもいいとは言ってない点に注意)、
 熱心な読者を獲得し、売上を伸ばすことは可能だ、という主張であって、執筆の技術指南や文章鍛錬本、最近の流行を分析した本ではありません。
 また、やっぱり新人賞を獲得したい!小説がうまくなりたい! という方にとってもさしたる利益はないでしょう。
 そうではない野心的なインディーズ作家に向けた書籍であることに留意する必要があります。

 また、ロック氏の事例はあくまでも数年前の過去のもの+海外での事例であり、今これから日本で同様の方法を猿真似しただけでは恐らくハマらないでしょう。
 主張の本質を踏まえて創意工夫をする必要があることは本文中でも触れられています。

 あとは、良くも悪くも非常にライトで文量が少ないため、読み応えはないです。
 それに既に実践してそこそこの成功をしている方もいるかと思われますので、そうした方を知っている人にとっては多くのメリットはないと思われます。

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