日本人は何を着て、どのような装い方をしてきたのか。縄文から現代に至るまで、それぞれの時代の衣服の生い立ちと変遷をたどり、同時に相互に影響を与え合った美術、生活、社会等の動きにも触れた総合文化史。
原始から現代までの日本の服装を扱った本です。
この本で特筆すべきは、昔の服装を復元し、モデルが着用している写真が多数掲載されていることです。
著者略歴には、「数百年続けられている(引用注・宮内庁の前身、宮内省の)内蔵寮御用装束調進方高田家の家業を受け継ぎ、宮中装束の製作に携わる」とあります。ですから、使用人を含めて、公家系の衣装について、詳しく書かれています。巻末に、女房装束(十二単)、束帯を分解した図があります。
明治に入って洋服が導入されたことについて、「飛鳥、奈良時代に隋唐風の服装を導入した状況と同様といえる」とあります。そのため、「第一章 原始・古代」の前半は、中華風ファンタジーの衣装にも、一定の参考になる1冊でしょう。
この本最大の欠点は、「カラーページがない」ことです。
せっかく服装の復元写真を撮って、掲載しているにもかかわらず、見づらいほどではないにせよ、小さな白黒写真ばかりです。ページ全体を使った大きなカラー写真を用いることはできなかったのでしょうか。せめて、このいずれかが用いられていれば、との思いを禁じ得ません。
これはこの本に限らず、歴史関係の本を読んでいて、いつも感じることです。絵の写真を掲載してくれるのはありがたいのです。ですが、色彩画を白黒写真にすると、黒くなってしまうものが少なくありません。もう少し色を薄くできないのでしょうか。何が写っているのかよく分かりません。
町人の服装は、江戸時代に入ってからは詳しいのですが、戦国時代以前は史料がないこともあって、簡単な記述にとどまっています。ただし、支配層の公家・武家の服装は詳しく書かれています。
近現代については、明治時代は比較的ページが割かれているものの、大正以降のページは少ないです。
年表を付けることはできなかったのでしょうか。年代順に書いてはありますが、話が前後することもあり、時代区分がしにくいこともあります。
「文庫版刊行によせて」の終わりのほうがグチっぽくなっています。また、これと「おわりに」(単行本版あとがき)の冒頭との記述に矛盾を感じます。本の最後のほうなので、後味が悪くなっています。
また、まえがき・あとがきには「ここまで大げさかつ、居丈高に言わなくても良いのでは?」という気もします。
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