1891年5月11日、滋賀県大津で折から来遊中のロシア皇太子が警備の巡査津田三蔵に襲撃されるという事件が突発した。著者は、豊富な資料を駆使して、この事件によって照らし出された明治国家の権力構造を鮮やかに描き出してゆく。司法権の独立をめぐる有名な大津事件を総合的に叙述した唯一の書。
この本の参考になるべき点は以下の通りです。
【国賓が滞在中に事件に遭った場合の自国および相手国の反応】
大津事件は、帝政ロシア最後の皇帝ニコライ2世が皇太子時代に来日、滋賀県大津で警備の警察官・津田三蔵に斬りつけられた事件です。
せっかく招いた国賓が自国内で事件に遭う、しかも犯人は警備の警察官となれば、政府の面目丸つぶれです。「津田」姓、「三蔵」の名を禁じる町まで出てくるほど、大国ロシアを恐れたのは、今から見れば滑稽です。
これだけでも十分小説のネタになりそうです。
そのまま歴史小説にしてもいいですし、舞台を問わず中・近世風のファンタジーにしてもいいでしょう。
【国賓接待に関して】
この本には、大津事件が起こらなった場合の予定を含め、ニコライ2世一行の日程の詳細が記されています。
それに、長崎に上陸してより、鹿児島・神戸・京都を経て、大津に至るまでの各地における見物、日本側の歓迎の模様、および送迎の儀礼(送迎者・場所・服装)が詳しく書かれています。
【王族の旅行に関して】
王族が旅行する場合、だれがお供についたのかよく分からないことはありませんか? ニコライ2世の長崎上陸時や、明治天皇の京都行幸(事件発生の報を受けてニコライ2世を見舞うため)のお伴が具体的によく分かります。
【王族・貴族のキャラクター作り】
ニコライ2世の人となりや、正式上陸に先立ち長崎にお忍び上陸したことに触れています。
【裁判関係】
判決書をはじめとして裁判関係書類が多数引用されています。
また、著者が直接傍聴したわけではないにせよ、公判の模様が手に取るように分かります。
作中に裁判を出す場合、これらが重要な小道具になってくれそうです。
とにかく内容が細かいですから、大津事件の概要はあらかじめ調べておくことをお勧めします。
そうしないと理解しづらいでしょう。
それ以外の留意点は以下の通りです。
1、裁判の模様が詳しく分かると書いたが、当時と現在では司法制度が異なる。また、大津事件の裁判は、明治時代といえども相当特異な例である。現に、判決後内閣より、大審院(現在の最高裁)は、この事件の管轄裁判所ではない、との抗議があった。
2、事件に関して交わされた電報が多数引用されている。しかし、原文は句読点・半濁点・濁点なしのカタカナだけで書かれているはず(「引用文中の片カナは原則とて平がなに改めた」と「凡例」にある)。
『大津事件―ロシア皇太子大津遭難』のご注文はコチラから >>>
創作に役立つ資料やハウツー本などは、個人の力ではなかなか探し出せないモノです(涙)。
そこで、あなたのオススメの創作お役立ち本を紹介してください!
ご協力いただける方は、こちらのメールフォーム
『創作お役立ち本募集係』 よりお願いします。