煩瑣な職務に追われ、多忙な日々を送っていた中国文人たちが、ストレスの解消と精神の安寧を求めて隠遁した書斎。書を読み、音楽を奏で、体力増強の養生術を行ない、午睡を楽しむための空間。幽山での理想的な隠遁生活を都市のレベルで体現する書斎の哲学を、壮大な自然観と美意識とともに探る。
中華風ファンタジー・時代小説を書こうと思って、「昔の中国人はどんな家に住んでいたのか?」との疑問を持ったことはありませんか。
この本は、その疑問に部分的ですが答えてくれます。
中国人にとっての書斎とは、単なる「物書き部屋」ではなく、寝室を兼ね、日々の生活で疲れた心身を休める場所との思想。
そして、そこに備えるべき家具・調度品を一通り知ることができます。
また、中国庭園についての考え方にも記述があり、写真や図版も豊富です。
調べにくい分野だけに、この本の存在は貴重です。
残念な点は以下の通りです。
1、全47ページという、本というより小冊子で、本体価格900円には割高感を禁じ得ない。購入は現物をご覧になって判断されるほうが良い。また、この本は専門書の品ぞろえの良い大型書店の建築書コーナーでないと見掛けない。
2、ページレイアウトが悪い。見開きページの継ぎ目が、貴重な写真・図版の真ん中に来てしまい、それで真っ二つになっていて、非常に見づらいことが多い。
3、視点がピンポイント過ぎる。家は書斎(部屋)、庭は石・窓・門が中心。それぞれの全体像がつかみにくい。紙幅を考えると無理はないのだが。
4、庭園の説明が、日本庭園との対比もなく、やや専門的で分かりづらい。量は少ないものの、その点に質の高い説明がある『「日本庭園」の見方』 田中昭三・『サライ』編集部編、斉藤忠一監修、小学館)の併読もお薦めする。
5、カラー写真が表紙だけである。
6、書斎で行われる趣味が書道や盆栽などで、年配者向け。そのため、ライトノベルの主人公の多くが、十代半ばの少年少女であることを考えると、これを反映させる爺臭くなりそうで、注意を要する。むしろ、父親・祖父・師匠の部屋のほうがふさわしいかもしれない。
7、この本は、高級官僚や文人といった上流階級の邸宅が前提。裏路地の庶民の家を調べるには向かない。
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