ライトノベル作法研究所
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遠野物語

ジャンル:歴史・文化・民族
著者:柳田 国男
出版社: 角川ソフィア文庫
サイズ:文庫
ページ数: 268p
発行年月: 2004年05月
スポポニウムさんのオススメ!

■ 解説

 日本の民俗学の原点を知る必読の物語。
 かつての岩手県遠野は、山にかこまれた隔絶の小天地で、民間伝承の宝庫だった。
 柳田国男は、遠野郷に古くより伝えられる習俗や伝説、怪異譚を丹念にまとめた。
 その幅広い調査は自然誌、生活誌でもあり、失われた昔の生活ぶりを今に伝える貴重な記録である。
 日本民俗学を開眼させることになった「遠野物語」は、独特の文体で記録され、優れた文学作品ともなっている。

■ スポポニウムさんの書評

 聞いた話によると、映画界において妖怪モノ・民俗学モノというのは鉄板ネタなのだそうである。

 これだけ科学が進歩した世の中において妖怪モノが一定の人気を確保するという現実は噴飯物であるとさえ言えるが、それでも若者たちの心の中にはいつもどこかに妖怪や幽霊、魑魅魍魎への憧れがあるらしい。

 岩手県遠野市は、古くは岩手内陸-沿岸地方を結ぶ交通の要衝として栄えた山峡の村であり、その立地条件故か、実に豊かな民俗学的伝承の蓄積があった。今からおよそ百年前、この遠野地方の伝承を広く日本に紹介し、日本に民俗学の黎明を告げたのが、かの民俗学の泰斗・柳田国男翁であった。

 この作品の特徴として挙げられるのが「境界」の概念である。ライトノベル界隈にもいまや妖怪・民俗学を扱ったネタは豊富にあるが、この「境界」の概念を元にして寝られた話は皆無といっていいと思う。

 日本人の精神史はまさに「境界」に縛られた精神史である。
 この『遠野物語』に登場する河童は川という「境界」に出没し、訪れたものを一方的に富ませるマヨヒガは里山という山と人里の境界に現れるのであり、姥捨て山であるデンデラノは死と生の「境界」であった。
 すべての怪異が何らかの「境界」で起こっているという事実は特筆されるべきであろう。

 日本において、「あっちの世界」と「こっちの世界」を分ける境界の概念は非常に重要であり、だからこそ人はお地蔵様や『道塞神(道祖神は誤り。道祖神は道を塞ぐ神のことを指す)』を祭り、外界からの魔の侵入を阻止してきた。この概念がわからなければいつまで経っても狐狸妖怪の話などは理解したことにならないとさえ言えるであろう。

 もしこの作品を読む場合は、この「境界」というキーワードを念頭において読んでほしい。あなたがもし狐狸妖怪モノ、民俗学モノを書きたいと思っているならば、この本はあなたの作品に違う次元での広がりを与えることだろう。

■ この本の欠点、残念なところはどこですか?

 角川ソフィア文庫版でないと『遠野物語拾遺』が載っていないので気をつけるべし。
 遠野物語、遠野物語拾遺とセットで読めないと意味がないと思う。

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