節句、喫茶、履き物、音楽、髪型など、中国人の昔の生活を、衣食住をはじめ、交通・教育・趣味などの全般にわたって紹介。書・画・陶磁・考古遺品など豊富な美術文化を使って、中国文化を解き明かす。
中華風ファンタジーを書こうとして、歴史本で昔の中国人の生活を調べていて、記述が政治・軍事に比べて少なかったり、ページレイアウトが悪く、図版が見えなかったりした経験はありませんか。
この本は、昔の生活を描いた絵が多く掲載されているので、具体的なイメージが持ちやすいです。また、絵の掲載が白黒主体とはいえ、画面が暗かったり、見開きページに載せられため、とじ代にかかって肝心な部分が見えなかったりすることがなく、比較的「見やすい」と評価できます。
主な内容は以下の通りです。
作中のイベントの参考になり得る、正月をはじめとする、主要な年中行事。
「餅(ビン)」(中華パン)、「喫茶」。
「農業」「養蚕と紡績」「漁」「貨幣」。
「屏風」等の家具。
「車」「舟」「旅」の交通関係。
外見描写に役立つ「髪型」「かぶりもの」「履物」「傘蓋」。
魔法の道具としても使えそうな「鏡」。
「学校」「科挙」「孝行」の教育関係。
「毛筆」「紙」「墨と硯」「印章」。
「琴と碁」「鳥の飼育」「演劇」等の趣味関係。
全体図付きがありがたい「庭園」。
この本は、昔の中国人がどんな外見をしていて、何を持っていて、どんな家具に囲まれていて、どんな趣味を楽しんでいたのかを、一通り知ることができる1冊です。
残念な点は、3つあります。まず、本体価格が2300円と少し高く、既に指摘した通り、絵が白黒主体なことです。ところどころカラーページもありますが、この値段なら、色彩画はカラーで載せてほしかったですね。
次に、この本が台湾で、台湾の青少年向け雑誌に連載されたものの翻訳であることを指摘しておきます。
著者の「あとがき」で、「中国人の昔の生活を、衣・食・住をはじめ、交通・教育・趣味などを全般にわたって紹介した」とあります。ですが、「衣」の解説は冠や帽子といった「かぶりもの」に、女性の「髪型」、アクセサリー扱いの「扇」(扇子を含む)や「傘蓋」、「履物」です。人物画が多いので、それで想像はできますが、現在のシャツやジャケットに当たる衣の解説は、直接はありません。
「食」も、台湾人向けに書かれたものの翻訳であるせいか、「餅(ビン)」がもち米を蒸し、臼で搗いたものではなく、小麦を材料にしたパンの一種であることが明確になっていません。訳者のほうで注記が必要でしょう。
また、「正月のごちそう」もどんなごちそうを食べていたのかは、文章で書かれてはいます。しかし、絵は食事風景で、料理そのものはありません。欲を言えば、料理自体の絵か、再現写真を載せてほしかったですね。例えば、日本の文化に詳しくない外国人に、おせち料理を文章だけで説明して、分かってもらえるのでしょうか。
「住」でも、中に置く家具や外の庭には解説がありましたが、住宅自体は解説がなく、人物画に比べると、家の絵は少なく想像し辛いです。
最後に、下層の漁民や農民に触れた箇所はありますが、全体としては中・上流の知識人・文化人層の生活を前提にしているとの印象があることを、付言します。
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