ライトノベル作法研究所
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  4. 20代のオタクの意見公開日:2012/06/08

20代以上のオタクの意見は真に受けない

 ライトノベルのメインターゲット層から外れた20代以上の読書好き、20代以上のオタクの意見というのは真に受けないようにしましょう。

 彼らはたくさんの作品に触れてきて目が肥えており、中学一年生でも読めるように配慮されたライトノベルに満足できなくなっています。また、嗜好が変化し、より鬱で刺激が強い作品を求めているので、彼らの意見に合わせると、中高生の好みから離れた物になってしまいます。

●20代以上の読書好き、オタクが求める物

●10代の文学初心者、オタクが求める物

 以上のように、両者の嗜好というのは、だいたい正反対になっています。
 20代以上の目の肥えた読書好きは、ライトノベルにも一般文芸的な教養や知性、歯ごたえのある文章を求めようとします。

 しかし、教養がなくては楽しめない娯楽というのは、娯楽として失格です。

 中学一年生くらいの国語能力を持っていれば、疲れた空き時間に手に取って、あまり頭を働かせなくてもスッカと楽しめるようなものでなければ、他の娯楽媒体との競争に勝てません。ネットが発達した現代では、もっと手軽にしかも無料で楽しめるコンテンツが溢れています。敷居の高さというのは、致命的な弱点になるのです。

 ライトノベルは芸術ではなく、特定の客層向けにカスタマイズされた娯楽を提供する『商品』です。
 ラノベ作家は、芸術家、作家先生ではなく『サービス提供者』です。
 もし、後世で芸術として評価されるとしたら、それは『商品』として成功して大勢の人に支持された場合のみです。

 これを念頭に置いて、読者から寄せられる意見を取捨選択しましょう。
 意見を発しているのは誰なのか。20代の読書好きなのか? 10代の文学初心者なのか? オタクかオタクではないのか? で、その意見の重さは変ってきます。
 当然、メインの顧客である10代のオタクの意見を重視し、彼らの求める物を作らなければなりません。

 実はライトノベルが、10代のオタク、文学初心者をメインターゲットにしているのには訳があります。新規の顧客が入ってこないと、そのジャンルは潰れるからです。

 かつて隆盛を誇ったSF小説が衰退したのは、「ガンダムや宇宙戦艦ヤマトなんて、SFじゃない! 子供の見る物だ! 邪道だ!」とSFマニアが叫び、作り手が、高度な科学考証や過剰なリアリティを求める彼らの嗜好に合わせようとした結果、初心者が誰もついていけなくなったからです。
 初心者に門戸を閉ざし、自分たちで作った権威や秩序を振りかざす上級者に合わせると、そのジャンルは衰退していきます。

 ライトノベルでやるならSF要素なんて『時をかける少女』 レベルで、良いのですよ。タイム・リープの能力や、タイプスリップで発生する齟齬や危機的状況など、人間関係や恋愛をおもしろくするための道具にすぎません。この作品は、少女の初恋の切なさを盛り上げるためにSF要素を実に効果的に使用しています。
 恋愛が『主』で、SF要素が『従』なのです。
(『時をかける少女』は刊行から40年以上も売れ続けている超ロングセラーにして、ラノベの起源的な作品。これを男性作家が書いたというから、驚きます。)

 男友達が交通事故に遭うことをタイム・リープ能力で知ってしまった中学三年生の少女が、彼を助けようとしたところ、友人から彼のことを好きなのじゃないかと変な誤解を受けてしまう、なんて展開、かわいいじゃないですか。
 人間が本質的なおもしろさを感じるのは、結局、対立や恋愛などの『人間関係』であって、高度なSF要素などというものはマニアしか求めていないのです。

 この点を勘違いしてしまったが故に、SF小説は後続のライトノベルに取って代わられました。
 中高生やSF初心者でも、まったく問題なく内容を理解し、楽しめるような作品作りを心がけなければ、大勢の人から支持されるような傑作は生まれないのです。

 また、20代以上のオタクは『中二病』といって、漢字にルビを振ったカッコイイ能力や兵器、ベタな展開を自意識過剰な物として嘲笑いますが、中学生が普段から妄想している願望とは結局『中二病』的な物なので、これを堂々とやっている作品の方がウケています。
 『幻想殺し(イマジンブレイカー )』、『術式解散(グラム・ディスパージョン)』、『IS (インフィニット・ストラトス)』、『デルフリンガー』など、バトルを売りにするなら、カッコイイ名前の付いた能力や魔法、兵器、武器が出てくる方が中高生にとって 、おもしろいに決まっているじゃないですか?

 普段はダメだけど、バトルでは最強で女の子にモテモテという中学生男子の夢を恥ずかしがらずにやるのです。いや、もとい楽しみながらやるのです。
 それで『中二病』と笑われようと、ターゲット層に支持されたのなら、何か問題があるのでしょうか?

 20代以上の読書好き、20代以上のオタクの意見というのは真に受けないようにしましょう。
 耳を研ぎ澄ますべきは、10代のオタクの欲求や願望です。

中二病を叩く人は、中二病的な作品が好き

  「普段はダメだけど、バトルでは最強で女の子にモテモテ」というラノベ主人公のテンプレートは、おそらく未来永劫変らない究極の型の一つであり続けるでしょう。『禁書』『フルメタ』『ゼロ使』『IS』『魔法科』といった大ヒットライトノベルの主人公は、この型に当てはまります。

 これは大人向けの物語でも同じです。世界で二億部も売れた漫画『ゴルゴ13』は、最強の暗殺者であるゴルゴ13が、強大な組織をたった一人で敵に回し、アッと驚く戦法で裏を掻き、神業的な射撃能力で任務を遂行します。その過程で美女に惚れられ、肉体関係を持つものの最後は彼女を捨てて、タバコをふかしながら去って行きます。 

 「最強で美女にモテモテ」というのは、男性の本能的欲求に沿ったモノなので、大人になっても変らない男の夢としてあり続けるのです。

 しかし、自意識が発達してくると、こういった妄想を恥ずかしく感じるようになり、自らの恥を覆い隠すために、自分と同じような妄想に浸かっている他人を叩くようになります。
 これが『中二病』を叩く心理で、『高二病』と呼ばれます。『高二病』患者は、中二病が嫌いなのではなく、誰よりも好きだから叩いているので、結局、中二病的な作品を見てしまって叩きの材料にするという、倒錯したファンなのです。そうでなければ、各作品の共通項を見出して「イヤボーン」や「邪気眼」などといった蔑称を作れる訳がありません。
 このため中二病全開の作品を作ると、彼らがネットで騒いで口コミしてくれるため、認知度が高まって売り上げが伸びてしまうという現象が起きます。

 読者の意見を聞く場合は、意見の中身そのものではなく、読者の属性や、どういった動機に基づいて発言をしているのかまで考えないと、正しい取捨選択ができません。

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