姉や妹、幼馴染がヒロインキャラとして流行っているかどうかは別として、使いやすいキャラということはあります。なお、とりあえず姉・妹は家族の、としておきます(姉的、妹的キャラというのは置いておく)。
姉・妹・幼馴染に共通するのは物語開始時点において、
・主人公と既に親しい。
・主人公との関係性が既に確立している。
・主人公とのエピソードを既に多数持っている。
ことが挙げられます。対比されるヒロインとして、例えば「転校生」「高校入学で知り合う生徒」を考えてみます。要は「最初は赤の他人」ということで、主人公とヒロインが「遭遇する→接近する→互いにもっと知り合う」といった段取りが必要になります。
それはそれで面白いドラマが描けるわけで、一目惚れから起こるドラマなんかも可能です。しかし、段取りが必要ということは手間取るということでもあります。少なくとも序盤から中盤にかけては、いかに接近しカップルまで行くか、という筋立てになるでしょう。
もし「カップルまたはカップル寸前となった2人がどうするか」の部分で面白いアイデアがあるなら、既に遭遇から接近までは過去のこととして物語を始めたほうがいい。転校生や入学時に知り合った、となると主人公とヒロインの関係性のありようは多彩です。
一方、姉や妹だとおおよそ見当がつきます。主人公が分かればだいたい分かる。同じ家庭で育ったわけですから、おおよそ同じ傾向を持つと自然に想像できます。幼馴染もそれに準じますが、家庭が異なるので違う傾向を持たせることができます。それでも「長く友達である」ということから、あまり関係性の描写をしなくても、主人公さえ分かれば、幼馴染ヒロインはおおよそ察せられる。
さらに、いきなり過去エピソードを持ち出すこともできます。例えば、
「幼馴染が大事にしているぬいぐるみを主人公が「ボロボロだな、新しいの買えば」と言ったら、ヒロインがショックを受ける(実はぬいぐるみは、主人公が幼い頃にヒロインの誕生日に贈ったものだった)」
みたいなエピソードをいきなり作れます。描かれてない過去は存在しているけど、読者には知らせてないだけだから可能になるサプライズ的な手法です。
知り合うところから描くヒロインだと、そういうことは不可能です。遭遇前の関係性はありませんから。唯一可能なのは「以前に主人公とヒロインは会っているけど、主人公はすっかり忘れている」でしょうか。ですが、そうしてしまうと幼馴染に準じる設定になります。
まとめますと、主人公とヒロインが冒頭から2人セット(カップルないしはバディ的)で動かしやすいのが、姉・妹・幼馴染ヒロインということになります。そのうち、恋愛関係に発展させないなら姉か妹。恋愛関係の可能性を排除しないなら幼馴染ということになります。
姉と妹のキャラの違いは、ヒロインが主人公に対して保護者的であるか(姉)、被保護者的であるか(妹)かのキャラ設定に依存します。別に姉が弟に甘える性格でもいいんですけど、それならそれで姉のキャラ立ての手間を要します。あるいは多少の意外性を出す演出狙い。そういうことがなければ、読者が自然に想像しやすい(いわゆる読者の引き出し)ポジションにしておけばいいでしょう。
とりあえず置いておきましたが、姉的、妹的キャラというのもありますね。本人の性分と不可分ではあるんですが、遭遇から始めるヒロインであれば、普通は親しくなる過程を描く必要があるでしょう(傍若無人とかの設定があれば別ですが、それはそれでキャラに強い特徴を与え、初手からドラマ展開に影響する)。
幼馴染に姉的、妹的性格を付与するなら、幼馴染の立ち位置、性格、さらに年齢差を自然に与える手法となります。姉、妹としただけで、おおよそのイメージが湧くわけですから、最初から幼馴染ヒロインの性質を分かりやすくできる。
もう一度まとめますと、
・姉・妹・幼馴染ヒロインは冒頭からカップル的なドラマを起こすのに向く。
・スタート時に赤の他人ヒロインは、馴れ初めからカップル成立のドラマを描くのに向く。
・姉的・妹的ヒロインはキャラ性質や主人公に対する立ち位置を分かりやすくする手法の1つ。
ということになります。流行っているかどうかはともかく、物語の売りや分かりやすさに応じて選ぶべきヒロイン性質でしょう。