前半は暗中模索、後半は明確な目的意識を持たせる。
これでよいのですが、前半が暗中模索過ぎるとストーリーがモヤッとして分かりにくくなるという問題はあります。
なので、前半はかりそめの目標をあたえ、後半に真の目標を見つけさせるというのが、エンタメの場合はわりと形ではあります。劇場版『銀河鉄道999』が典型的にそういう流れでした。あの作品の主人公は、前半は機械の体を手に入れるためにヒロインと999号に乗って旅をしますが、しだいに機械化による永遠の生命に疑問を持つようになり、後半は機械帝国打倒が目的に変わります。
前半に主人公に仮の目標を与えるのは、単にストーリーを分かりやすくするためです。主人公が何をしようとしているのか明確な方が、読者としてはストーリーに入りやすいんですね。
それに対して後半に真の目的を作るのは、読者と主人公の「願い」を一致させるのが狙いです。
例えば主人公に仲間や恋人がいるとしたら、エンタメならそういうキャラには読者が好感を持ってくれないとダメなんですね。
で、好感を持ったキャラが辛い目にあっていたら、なんとか助けたいという感情が読者に芽生えます。そういう気持ちになっているときに主人公が彼らを助けるために行動を起こせば、強い共感が生れるんですよ。
エンタメストーリーは、読者にそういう気持ちの動きを起こせなければ失敗です。
そういう意味で言えば、主人公の目的は最初に仰っていた「仲間に身の危険が迫ったから助ける」でも実はいいんです。助けるのが困難な状況で、勇気をふりしぼる、または知恵をつくすなどして助けるために立ち上がるのは、十分主体性のある行動ですから。
ただし、後半の行動の目的は、読者と主人公の想いが一致している必要があります。そういうふうに持って行くのがエンタメのプロットの重要なテクニックです。