個人的に思ってるだけの持論なのだけど、
「目標」というのは2つに分けられて、一つは「主人公の目標」と一つは「物語の目標」。
このうち、まず「物語の目標」については言ってしまえば当たり前の話なんだけど、物語は始まった以上は終わらなければならない。その「終わり」が物語の目標に当たる。
例えば「人々を助ける話」を書くならば、「人々を助ける」というのが物語の目標。
一方で「主人公の目標」は、文字通り主人公が目標ないし目的とすること、主人公の行動原理のこと。
こちらは、偉そうだけど、物語を作りなれてない人には意外かもしれないけど、実はその目標達成の成否は問わない。普通に失敗しても話は成立する。
例えば、「父親を探す旅のなか、道中で人と関わって困ってる人を助けていく」という概要だとすると、主人公の目的は「父親を探すこと」で、物語の目的は「困ってる人を助ける」ということ。
そのうえで、例えばその物語のオチで「父親は既に死んでいて会うことは出来なかった」と失敗に終わってもかまわない。
何故なら物語の目標は達成してるから。話として成立している。
つまり、この2つは別のもので、主人公の目的 = 物語の目的 ではない。
しかしながら、例えば「勇者が魔王を倒す話」といった場合は、そもそも主人公の目的と物語の目的が合致しているので、結果的に2つが同じものである、というだけ。
そして、少年漫画やライトノベルにおいては「主人公の話」を書くことが多いため、この場合「勇者が魔王を倒す話」のように「主人公の目的」がそのまま「物語の目的」になっていることが多い。
つまり、主人公の話だから、主人公の目標を達成したら物語は終わり = 物語の目標も同じもの。ってだけ。
本来は、この2つは別のもの。
ただ「主人公の話」をメインにしてるから同じになってるだけ。
で。
>小さなトラブルから徐々に大きなトラブルへ移行し、そして締めに入っていく構成を用意してやれば
こちらの例題は、つまり各話で更新される「物語の目的」があって、主人公には特に目的はなく動かされているだけ、という形で、そういうのはぜんぜんあり。
例えば、私が出すタイトルも年々古くなってきちゃってるけど、ジャンプ連載してた「銀魂」とかがそのタイプだね。
このタイプの特徴は、基本的に「物語の目的」が更新されていって主人公には特別強い行動原理が無いから、寄り道がすっごいしやすいってとこがある。
その代表格で言ったら「名探偵コナン」だね。
コナンは「事件の解決」が物語の目的で、その中身(事件の内容)が新しいものになっていって、ときおり「組織」の話題に更新されてメインストーリーが進んでる。
超長期連載コナンはずっとそれをやってるからネタにされがちだけど、この構造としては銀魂も同じだね。
寄り道がしやすいので、こういう長期連載や長期シリーズの場合はよくある形式。
こうして考えると、そもそも大事なのは「物語の目的」のほうで、「主人公の目的」はあんま重要ではないのではないか、ということになって、スレ主さんの疑問に行き着くと思う。
それは、「物語」にとってはその通りだと言えるんだけど、物語は、特にエンタメ向けの物語にとっては「キャラクタ-」あっての物語でもあるので、「物語の目的」のほうが重要だと踏まえたうえで、より大事なのが「主人公の目的」である、と言えます。
対象年齢が上がってくると「主人公の目的」の重要度は若干下がってくる。
というのも、まず「海賊王に、俺はなる!」ってすごいキャッチーですし、そのために行動してるってわかりやすいし、理不尽なことでも主人公が「海賊王に相応しくない」と思うような事はしないと納得しやすいし、最初に書いたけども、「主人公の目的」は主人公の行動原理を説明しやすい。
ワンピースのルフィは「海賊王に、俺はなる」のこのセリフだけで全部説明できるでしょ。
ナルトの「火影になる!」も同じ。
一方で、この2タイトルと同じくらい人気で看板背負ってた「ブリーチ」は、スレ主さんが言うとこの「巻き込まれ型」で、主人公には性格意外に行動原理が無く、各章で毎回違う目的を更新していた。
まあ、結局のとこ「ルキアを助ける」「織姫を助ける」とワンパターンで、新章に入って新しいことを始めたかと思えば「月島さんのおかげ!」で何がしたいのかわからなくて人気が低迷してきて、最終章で「主人公のルーツを探る」で物語は終わった。
ただ、ブリーチの作者はキャラ作りは神がかって凄い。あの人少年誌のキャラの天才だと思う。
なぜブリーチの話を出したのかっていうと、これは昨今のWeb小説にも言えるのだけど、このタイプの構造は、とにかく「新しい話題」を作るのが難しい。
コナンのように「新しい事件」で続ければマンネリ感が否めなくて、新しいことをしようとすると読者の期待に添えなくて一気に人気が低迷するってこともある。
個人的に思うその代表的タイトルで「タカヤ -閃武学園激闘伝-」てのを挙げとく。
タカヤは序盤は学園バトルもので結構面白かったんだけど、新章に入って異世界転移してファンタジーになった。そっから10週も連載しないで打ち切りになった。
「新しい話題」ってのは本当に難しいのよね。
とすると、そもそも読者の期待の方向性がブレないように一つの指針を示しておく必要がある。
それが「主人公の目的・目標」だとも言える。
例えば、Web小説で「いきなり異世界転移・転生したけど主人公には何も目的ないよ?」って事がけっこうあるけど、上手くやってるタイトルはだいたい「生前の社畜人生を反省して主人公は面倒事を避けたい・のんびりしたい」とか、アクティブではないから見つけにくいけど、たしかに目的が設定されてたりする。
「老後のために金貨をいくら稼ぐ」とか「世界を見て回りたい」とか「裏方に徹したい」とか。
こうすると、「金貨を稼ぐ」なら冒険者で一旗あげて次の章でいきなり商人はじめても「金策のためのステップアップ」で済むので、物語の目的をガラッと更新しても主人公の目的がブレてないので問題なく読めたりする。
あと、この手の話題「物語の目的」と「主人公の目的」の違いについては群像劇なんかを分析するとよくわかると思うのだけど、もうすでにずいぶん書いちゃったし、このあたりで止めておく。
一例だけ出しておくと、群像劇で有名なラノベは「バッカーノ」だと思うけど、群像劇を作るコツは「物語の中心になるものを一個しっかり作っておく」ってのがあって、バッカーノの場合はそれが「不死の酒」に当たる。
この不死の酒がどうなるのかってのが「物語の目的」で、キャラクターたちは各々がその不死の酒とは全然関係ない「主人公(キャラクター)の目的」を持って、知らない間に不死の酒に振り回され、最終的に「物語の目的」を達したところで話が終わる。
最後に結論だけ書くと、
まず「物語の目的」は不可欠。なけりゃオチが書けない。
対して「主人公の目的」は、ぶっちゃけ無くてもいいけど、エンタメ寄りにするならかなり重要度は高い。無視できない。
明確な主人公の目的を出したくない、そういう雰囲気にしたい、という場合でも、あえて書かないだけでちゃんと設定するのが良いと思う。
この場合例えば「人助けしたくなるお人好しな性格」とか「銭ゲバで金のためなら何でもする守銭奴」とか「厄介事は絶対嫌でのんびり暮らしたい」とか、キャラクター的にどっか一癖ある作りにしたほうが、行動原理は性格で説明できるので、「主人公の目的」感を出さないで行動原理を書ける。
なので、
>みなさんは主人公に絶対的な目標を抱かせるべきだと思いますか?
「絶対的」という文言がひっかかるけど、あるかないかで言えばあったほうが良いし、無い形にしたいなら「読者に知られないように設定しておく」ほうが良い。
なくて得することってほぼないんじゃないかな。
長期シリーズで寄り道しやすいと書いたけど、それも主人公の行動原理あっての事だし。
ただ、「物語の目的」と同一視して「魔王を倒すんだ!」とか「海賊王になるんだ!」って形で「主人公の目的」を作るんであれば、それは別にどーでもいい。
書きたい物語に影響がなく若い読者層を狙ってるなら、わかりやすくなるからあったほうがいいかな、くらい。