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タイトル:異世界テンプレは創作論と矛盾しているのでは?の返信 投稿者: あまくさ

『SAVE THE CATの法則』はかなり実践的な創作技術を解説している良書だと思いますが、金科玉条ではありません。あの本ではストーリーの基本パターンを「魔法のランプ」を含む10種類に類型化しています。それらは著者なりの経験則から発見した「このパターンでストーリーをまとめるとヒットしやすい」というテンプレートであって、当然ながらあれですべてを網羅しているというようなものではないでしょう。
と言うより、創作にすべてを網羅する一般理論があると考える方がおそらく勘違いです。「これで網羅したんじゃないか」と思っても、「いや、それらのどれにもあてはまらない、こういうパターンもあるよ」というのが実例付きですぐに見つかるものです。
ですからいかに優れた本であっても鵜呑みにしてはダメなんですね。『SAVE THE CATの法則』にしても単にこのテンプレがよいというだけではなくて、それを推奨する理由が書かれていますから、そこを理解して応用することが大切です。

1)ブレイク・スナイダーが【魔法のランプ】もので盲信二段重ねと呼ぶタブーを犯しているのではないのか?(1.異世界へ転移 2.その世界で異質/異常な能力を獲得 さらには「魔法なしでやることを学ぶ」という重大な要素にも反している)

この場合の魔法とは、ストーリーの序盤に提示されるご都合主義的で強烈な状況のこと。それが読者(観客)の願望に合致することによって、ご都合主義を感じさせずに強引に受け入れさせてしまうというような手法になりますが、そういうものを一作品に二つ登場させるのは通用しないという戒めでしょう。
しかしなろう系異世界転移モノの場合、冒頭の転移はお約束なので誰も驚きませんし、異世界転移と異常な能力の獲得までがセットになっているようなものなので、こみこみで一つの魔法と考えた方がいいです。
また「魔法なしでやることを学ぶ」はスナイダーの言う「魔法のランプ」物ではよくある着地点ということにすぎず、チート能力をふるう主人公をどこへ連れていくかという別の収まりのよい流れを考案できるなら問題ありません。

2)主人公のコンフリクト(葛藤、対立)が薄いか全く無く、それによってアーク(人格/精神面)の変化に乏しい(成長要素が能力面に偏っているか、最初から成長の余地がなく、いつまでも変わらない)

これは、1の後半と同じことです。前半に主人公が魔法によって無双する展開を描くなら、後半ではそういうやりかたでは本当の幸福を得られないという結論に導くのがプロットとして収まりがよいということ。結果的に前半と後半で主人公が真逆の方向を向くわけなので、必然的に途中に葛藤が生じるし、全体として成長物語になるわけです。
しかし、何度も言いますがそれはストーリーを「いい話」っぽくまとめやすいテンプレの一つということにすぎず、最後までチートで駈け抜ける爽快感を読者が好むならそれも成立するということ。その場合話が一本調子になってしまう危険はあるので、別の形で起伏をつける工夫は必要になります。

>「行って帰る」の「帰る」に値する部分が欠落しているのではないか?(転移したまま元の世界に戻らない/戻ろうとしない)

「帰る」というのはプロット上の象徴的な概念で、必ずしも元の世界に戻ることを指しません。これは、日常→非日常→日常という構造としてとらえた方が正確です。主人公が戦ったり冒険したり、何らかの課題に取り組んだりする「状態」を、「スペシャルワールド」と呼ぶ創作用語があります。これは日常系のストーリーにも当てはまることで、読者が現実世界では経験できないようなことを疑似体験させるのが本質です。そしてストーリーのラストで戦いなり課題の克服などが終わって平穏にもどる状態が、日常に「帰る」ということです。

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