うまくやる分には効果的な手法だと思います。しかし、注意点がいくつかあります。
序盤の展開をA、流れを変える新展開をBとしますね。
注意点は以下かと。
1)Aがありきたりだと、Bまで読んでもらえない。
2)Aが面白くても、Aの好きな読者はBで失望するかもしれない。
3)逆にBが好きな読者は、一般的にAが面白くても好みに合わず、1と同様にBまで読んでくれない可能性がある。
ただでさえ序盤にウリ(つかみ)を仕込むのは難しいのに、A・B両方に違うウリを盛り込まなければならず、しかもその二つのウリの片方が読者の嗜好に合わずに喧嘩してしまうおそれがあります。それを避ける配慮も必要で、難易度はかなり高いかと。
しかし、スレ主様が例示されているようにいくつかの成功例もあります。それらの作品では上記の1・2・3にどう対処しているかを確認しながら見直してみるのがよいかと。
私的には、あげていらっしゃる何作かのうち『まどマギ』以外は知らないのですが。
まどマギの第3話はけっこう有名になっていて、確かにそこにB点が作られていたなと私も思います。
1については、定跡的ながら「謎の転校生」などの手法を盛り込み、イヌカレー演出のユニークな魔女描写などで興味をつないでいます。
ちなみに、あの第3話については脚本家が「序盤の3話までに視聴者をつかめれば後はついてきてくれる」という見解を明言しています。
しかし、「2話あたりまでで視るのをやめようかと思った」という声もチラホラ聞こえるんですね。
つまり作り手がかなり意図的に、序盤ではギリギリ第3話まで引き付けられればいいと考えていたことが分かります。第3話に爆弾を仕掛けているということが前提です。
2・3についても、脚本家の談話が参考になります。
それによると、今の読者・視聴者は、頭の中にストーリーのデータベースができているような気がする、と言うんですね。無意識に、この展開なら先はこうなるだろうと推測しながら見ていると。
だから、どこかでその予想をはずしてやると「あれっ?」と思い、「この先も見ておかないとマズイかもしれないぞ」と。そう感じさせるのがコツなんじゃないかと思いながらあの第3話を作ったとのことです。
まどマギのAパートには穏やかな日常描写もありますが、「謎の転校生」や魔女描写などで1話から不穏で妖しいムードもちゃんと演出されていたことに注目。けしてAは日常、Bから急にホラーという単純な作りではありません。AもBもホラーであることには変わりはなく、そこで視聴者の嗜好に齟齬が生じることはありません。
ただ、同じホラーでもAはややありきたり、Bでは定跡をはずす展開で視聴者を驚かせるということを仕組んでいます。そしてB点を境にして、Aの「あまり動きのないホラー展開」が、「どんどん加速していくホラー展開」に変化する感じでした。
エンタメの鉄則に、
◎読者の予想は裏切れ。しかし期待は裏切るな。
というものがあります。
途中で流れを変える仕掛けで失敗しがちなのは、読者の予想を裏切ることに気を取られすぎて、期待まで裏切ってしまうからだと思われます。
そこが注意点かと。