第4研究室 創作に関するQ&A 45P | トップへ戻る |
風月堂さんからの質問  
 ストーリーがいつも行き詰ってしまいます

 初めて書き込みます。
 タイトルの通りで、人物とシーンと若干のストーリー案があるのに、
 いざ本編を書こうとすると、いつも行き詰ってしまいます。
 あくまで趣味なので、私の手に負えそうな短編で十分なのですが、
 それさえ一つとして完成しません。

 私のやり方は、多くは、会話や独白から発想するので
 人物とシーン(ストーリーと世界観の断片を含むこともある)は同時にでき、
 これが足掛かりになります。
 それを基に前後を組み立てていきます。
 添削自在なwordで本文案を進め、
 とりあえず、浮かんだ会話を断片的に、前後を考えて書いてみます。
 同時平行してプロットで、見通しと整理を図ることもあります。
 (プロット完成にこだわると楽しくないので)

 ところが、
 1ストーリー・プロットの前後ができない 何でそんなシーンに至ったか、
 2前後のストーリー・プロットができても、矛盾噴出で行き詰まります。
 何とか前後関係のあるシーンがつながっても、問題点の指摘ばかりになります。
 その指摘が解決できません。
 一例を挙げますと、
 『冷淡な主人公にしては正義漢的な言動、変心が急』
 『それだけの振る舞いをするだけの好意の形成不十分では?』(動機不十分)、
 『その人物がどうやって情報集めたか』(登場人物でき過ぎ・立場的に不自然)、
 『こんな所へ行く理由が分からない』(行動軽率・立場的に不自然)
 といった感じです。
 前後関係のあるシーンがあっても、動機が結びつきません。
 人物に似合いそう・言わせたい台詞や会話はあるのですが、『動機』に困ります。
 共通するのは、整合性のある展開の仕方で、
 1は場面展開、2は内面的な場面展開と言えそうです。
 また、内心を設定しても場面が浮かばない、ということもしばしばあります。

 プロになりたいという高い理想もないし、アイデア帳、書きたいときにだけ作業、
 プロットと本文の同時平行、とりあえず放置時々手入れを以前からやっているのですが、
 それでもできません。
 これまでに、このサイトの各所を見ていても、
 "読書量増やせ"以外に、今ひとつ私の悩み解決のヒントが見つかりません。
 未完成品の山(丘?)ができるばかりで、
 人物とシーンと大雑把なストーリーのアイデアはあるだけに悔しい思いをしております。

 予防線を張っておきますと
 根気を出せ(それでも作れないから困っていますし、アイデア帳もつけてます)とか、
 "最初に"テーマを決めてから作れ(書くより先に意欲なくします)とかは、できれば遠慮願います。
 長くなってしまいましたが、よろしくお願いします。


●答え●

 小説を作るには人生経験が必要だとも言われますよね。
 最近、この意味がわかってきました。ちょっと例をあげてみましょう。
 
 魔族との混血児の少女が、その出自故に周りの人間から差別・迫害される。
 ↓
 少女は人間不信になるが、自分を差別しない少年と出会って交流を重ね、心が癒される。
 ↓
 ラブラブになってハッピーエンド。
 
 といったストーリーの小説は良くあると思います。
 ここで問題になるのは、登場人物達の心情をいかにリアリティを持って描けるかです。
 例えば、Aという作者は、実際に差別やいじめを体験してきて、
 このような悲劇をなんとか無くしたい、という思いを込めて話を作ったとします。
 一方、Bという作者は、差別やいじめなどとはあまり接する機会がなく、
 おもしろそうな題材だからということで、あまり深く考えもせずに話を作ったとします。
 小説を書く技量が同じだったとしたら、果たしてどちらの作品が優れたものになるでしょうか?
 これは間違いなくAです。
 実際に差別やいじめを体験していなければ、それがどのようなものかはわかりませんし、
 少女の心情をリアルに想像して描くことなど到底できません。

 しかし、世の中の作者は圧倒的にBのタイプが多いです。
 だから、登場人物たちの行動が薄っぺらく、ぜんぜん心が動かされないのです。

 
 なんとなくこんな感じだろう、で作ったのでは人の心には届きません。
 仏作って魂入れずになってしまいます。

>人物に似合いそう・言わせたい台詞や会話はあるのですが、『動機』に困ります。

 言わせたいセリフがあるのに、それを言わせる動機に困る……
 ということは、それは登場人物の心の中から自然に出てきたセリフではなく、
 作者が無理矢理言わせるセリフということになりますよね。
 そうすると、どうしてもそれは、説得力に欠けた嘘くさいセリフになりやすいです。

 また、なぜ、そのセリフを言わせたいのでしょうか?
 なにか訴えたいことがあるのでしょうか? それともカッコイイから言わせたいのでしょうか?
 カッコイイから言わせたいというのでしたら、なおさら登場人物たちの心情を無視してはいけません。
 カッコイイセリフというのは、彼らの生き様から出てくるセリフだからです。

 『冷淡な主人公にしては正義漢的な言動、変心が急』
 『それだけの振る舞いをするだけの好意の形成不十分では?』(動機不十分)、
 『その人物がどうやって情報集めたか』(登場人物でき過ぎ・立場的に不自然)、
 『こんな所へ行く理由が分からない』(行動軽率・立場的に不自然)

 これらの問題は、すべて登場人物たちの行動が不自然であるところから来ています。
 ストーリーとは、登場人物たちの人間ドラマなので、まず基本となる人間がしっかりできていないと、
 どうしても矛盾が出てきてしまいます。
 

天和斎さんからの意見
 二次創作の分野で30〜50枚の短編を主に書いている天和斎と申します。
 二次創作ですと、萌えの赴くままに人物とシーンと
 若干のストーリー案で書き始めることが多いので、
 こうした悩みにぶつかることはままあります。私も最初はそうでした。

 「プロット完成にこだわると楽しくないので」と書いておられますが、
 やはり自分でもプロットが未完成だと分かっているうちに書き始めれば行き詰まりますよ。
 なぜプロットを書くのかというと、全体の流れをつかんでおいて、途中で行き詰まらないためですし。
 だから極端な話、起承転結各1行という超粗めでも、全体が見通せるようなプロットは必要です。
 その網の目を細かくしていくうちに、どこが問題で何を足せばいいのかが見えてきます。

 風月堂さんが具体的に問題としてあげておられる点は、
 人物造形の不十分さが原因なのではないかと推察します。


 「変心が急」、「好意の形成不十分」だというなら、そのきっかけになるエピソードが必要ですし、
 「登場人物ができすぎ」だというなら、
 それだけのことがその人物にできる理由を考えればいいと思います。
 エピソードや理由といってもそのためにワンシーン割くほどでもなく、
 地の文で説明する程度で十分です。

 問題点をはっきり認識していらっしゃるようなので、この辺の話は釈迦に説法かもしれませんね。

 恐らくは「このシーンが早く書きたいのに!」とうずうずしていることと思いますので、
 現在の執筆スタイルを変えずにすむような抜け道をいくつか。

 二次創作という限られたジャンルでのみどうにか使える手ですが、
 ワンシーンのみで完成としてしまう。
 人物や舞台の設定を、読者が具体的に共有しているので、多少動機に不自然な点があっても、
 「そんなこともある」と読者が想像で補ってくれるかもしれません。

 それか、そのシーンを無理矢理にでも書ききって、それらを「素材」として割り切ってしまうか。
 たとえストーリーとして完成していなくても、
 書きたいシーンを書ききってしまうことで満足することもありますから。
 私の作品にもプロット未完成のまま書き始めて行き詰まった「月組戦記」という作品があり、
 その作品の外伝のようなかたちでWord2〜3ページぐらいの、
 ワンシーンだけの話をいくつも書いています。
 視点が違っていたり日常シーンを細かく書いているだけだったりするので、
 そのままでは作品に使えませんが、
 それらは原作に存在しない主人公のキャラクターをつかむための素材としてとってあります。

 長々と書いてしまいましたが、何か一つでも参考になれば幸いです。


蒼い人さんからの意見
 現在進行中の物を書き直ししようかと思っている蒼い人です。
 おそらく御悩みの原因は「詰め込みすぎ」にあるのではないでしょうか。

 短編の定義は曖昧なものですが、400字詰め50枚というのが基準といたしますと、
 たった20000字の中で表現できる事柄は自然と絞られるものです。
 加えて改行を考えると、実際に書ける字数は最大値以下になるのが必然。

 今回のケースは、書きたい場面が多すぎて、整合性の処理に苦心している、とも見れます。
 制限のある内で「あれもこれも」は無理です。「あれかこれか」しか出来ません。
 ここで、つい最近行き詰った私の対処法をお教えしましょう。

 私はいわゆる「能力者モノ」を書いていたのですが、
 主人公が能力を得る顛末を延々と書き綴っていたら70000字相当使ってしまいました。
 しかし、実際書きたいのはそこではない。

 そんな訳で第一の手法は「焦点を定め直す」事です。
 何を書きたいのか、テーマを再考して、贅肉部分を削ぎ落とす。


 第二の手法は、「シーンから得られる情報を整理する」です。
 プロットが完成しているのであれば、そこから得られる情報を抽出して、並べ立てる。
 次にそれらへ優先順位を振り分けて、下位の情報を切り捨てるか判断します。
 この情報というのは、シーン全体で示される事もあれば、
 ダイアログ一つ、モノローグ一つでも済む場合があります。
 可能であれば、些細な情報をキャラクターに示させる(会話や動作で)。
 そうして、シーン一つ一つを意味あるものに洗練させるのです。

>『冷淡な主人公にしては正義漢的な言動、変心が急』
 『それだけの振る舞いをするだけの好意の形成不十分では?』


 これに関しては主人公の性格をいじった方が妥当でしょう。
 心理的変化に割くページが無いのなら、彼の過去を設定しておく。
 例えば「大切な姉・妹・恋人を失って冷淡になったが、女性がひどい目に遭うのには堪えられない」
 という風に。

>『その人物がどうやって情報集めたか』(登場人物でき過ぎ・立場的に不自然)

 その情報にもよりますが、そのキャラクターには情報を手に入れようとした「動機」がある筈です。
 無ければ、「耳に挟んだ程度」になるでしょう。
 彼のストーリーへの関わりを考えれば、対処は可能でしょう。
 そうすれば、彼は御都合主義的な「便利屋」にならないと思います。

>『こんな所へ行く理由が分からない』

 ならば、更に妥当な場所へ行かせるようにすれば良いです。
 シーンに確かな意味を持たせましょう。
 基本的には、主人公に動機を持たせるのが一番です。

 何を書きたいのか、それを不明瞭にするべきではないでしょう。
 プロット、コンセプト、キャラクター、舞台設定、ユーモアなどなど、
 それらはテーマを遂行する為のツールです。

 テーマの無い文章は、平凡な日記と同列だと私は考えます。
 その程度の物を読もうとは普通思わないし、出来事の羅列であれば面白くないのも当然でしょう。


 風月堂さんはテーマを最初に考える事を控えていらっしゃるようですが、
 シーン全体を総括して意味を持たせるのがテーマですから。欠けていても良くはありません。
 後付けでも、考えてはみるべきです。


水槽脳さんからの意見
 こんにちは、水槽脳といいます。
 
 結論を先に言うと、風月堂さんの書き方はとてもレベルが高い書き方というか、
 凡の才能では使えない書き方だと思います。
 小説を読んでいると、おおっ! という印象的な名場面や名言にぶつかります。
 しかし、それらはまず間違いなく最初から作者が考えていた物ではありません。

 作者が書いていく内に、その場面場面でこれしかない、
 というような行動や発言を登場人物に取らせます。


 なぜそういうことが言えるのかというと、
 小説は一行目から最終行にかけての文章の流れだからです。
 小説の基本と言われているのは起承転結です。
 起承転結は読者の興味を引き付ける文章の流れのことです。

 印象的な場面や言葉のために、
 全体を書こうとすると流れが狂って不自然になり、面白くなくなります。


 名場面や名言をつくりだそうとする以上、全体の流れに余計な手を加えざるを得なくなるからです。
 登場人物の設定をしていないともっと狂います。

 だから、事前に書こうと思っていることは捨てざるを得ません。
 実を言うと、これと同じことを作家の保坂和志が言っています。

 ……だけど江戸川乱歩という、
 不可解な事件のために無理矢理なトリックを造った偉大な例外も……

 保坂和志と同じことを言うと、小説の書き方(書き手のスタイル)や、
 一つ一つの小説の書き方は一人一人違っていて、
 その人自身が小説や表現について考えなければいけないとのことです。
 他人の意見は、一度自分の意見に取り込んで自分なりに解釈してからでないと使えません。
 村上龍の言葉を借りると、科学的な努力を続けること。それこそが上達なり成長の真実です。


峰しずくさんからの意見
 こんにちは。峰しずくです。

 実は他の方の他の主旨の質問にお答えしたのと、同じ内容のことが風月堂さんにも有効かも、
 と思ったので、また同じコトを書きます。

 行き詰ってしまった、ということは、その作品を通して書きたいことは全て書いた、
 ということなのかもしれません。
 でしたら、いっそのこと、作品をエイヤと力技で終わらせてしまいましょう。そして「完」です。
 納得いかなければ、あとで書き直せばいいわけで、
 「放置していた作品をまた書き始める」のと「完結した作品に手を入れる」だけの違いです。

 何が違うのかというと、完結させる力を養うことが出来る、ということです。

 エイヤと力技で完結させるといっても、「完」と書けばいいわけではもちろんありません。
 風月堂さんが思い描いているラストシーンがあるはずですから、
 最短距離でそこまでつないで、ラストシーンをきちんと書く、ということです。

 最短距離でつないだはいいけれど、「説明不足」「回収しきれない伏線」などがあるかもしれません。
 それは、「エピローグ」のあとで「後日談」を短編小説くらいの長さで付け加えるとか、
 「外伝」「番外編」の類を書くとかで補いましょう。
 もしかしたら、後日書き直そうと感じたとき、その「後日談」や「外伝」を本文のどこかに挿入して、
 重層的な物語になるかもしれませんよ。

 それともうひとつ。
 プロを目指すわけではない、ということですから、
 とりあえずは自分が満足するためだけに書いてみましょうよ。
 「人物とシーンと大雑把なストーリーのアイデアはあるだけに悔しい思いをしております」
 ということなら話は簡単。
 こんなシーンを描きたい、こんな人物を描きたい、というところだけを書いていって、
 その書きたいところがつながっているかどうかなんてどうでもいいと割り切ってしまうのです。
 ま、それではあんまりなので、つなぎは「5日後」とか「それから一ヶ月」とか
 「時、ほぼ同じくして別の場所で」とかで無理やりつないじゃいます。
 今は原稿用紙ではなく、ワープロなので、あとで書き足して、
 徐々に小説のスタイルに整えていけばいいじゃないですか。


よしろ〜さんからの意見
 思いますに、キャラクターの作りこみの不足があるのではないでしょうか?
 風月堂さんはストーリーの構成に対して、
 キャラクターの構成を軽視されてるような気がします。

 もちろん、キャラクターが目にさらされるのは文章の中だけですが、
 彼らは小説が始まったら生まれて、終わったら消える物ではありません。


 文章の中のキャラクターは、キャラクターの一生の一部なのです。
 例外も多分にありますが。

 短編の場合は特に、舞台も狭く、登場人物も少ないので
 主要人物の人格いわゆる『キャラクター』がストーリーの80%以上を支配する、
 と僕は思っています。
 そんなときに、主人公が数個の場面から浮かんだような『もやもや』したキャラクターでは、
 あくまで僕はですが話を作れた例がありません。
 その『もやもや』が晴れて初めて、「この場面でこいつはこうする」
 というキャラクターの行動がつかめます。
 キャラクターが動くことで、場面も次に動いていけます。

 この研究所にも、キャラクターに関してはいろいろと書かれているので、
 改めて目を通されてはいかがでしょうか。

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