ジジさん(ラノベ新人賞下読み)のコラム 2014年01月13日
SFが難しいのは「科学考証」ゆえです。
どうしても難しい説明が一定量以上必要になり、その分だけ物語の中心にあるべきドラマ性を損ないがちなので、女性読者はSFというだけでまず食いつきませんし、それよりは食いついてくれるだろう男性・男子読者もほとんどの場合、科学考証ができる知識がありません。ですから、どれだけ書く側が設定を生かした物語づくりをしたとしても、ほとんどの場合気づいてくれないことになります。
若向けで時代物が少ないのも同様の理由。「時代考証」が難しく、読者がその設定を理解できないからです。
たとえば庶民の日給が各職業でいくらで、そば屋でちろり一杯分の酒がいくらなのか? そんな基本的な知識だって、よほど好きな人でないとわかりません。
女性向き時代物の応募作で多く見られる平安物などはなおさらです。物価がわからなければ、なにをどのくらいのぞんざいさ、ていねいさで扱えばいいのか判断できませんので。
これはSFも時代物だけの話でなく、専門的知識が前提になる(医療や特定スポーツ競技等。応募者の方の創作による職種も含まれます)作品全般に言えることですが、「書く側の知識・考証が足りているか」、「その上で読者の知識量を推察し、且つドラマを仕立てられているか」、「最後に知識披露の自己満足に陥っていないか」が審査のチェックポイントになります。
ちなみにラノベにおいてこの定義に当てはまる成功例としては、白鳥士郎氏の『のうりん!』(2011年8月) になるでしょうか。
農業高校に密着取材を続け、そこで得た知識をベースに敷きながらキャッチーなキャラと恋愛ドラマを展開しているあの作品は、ひとつの理想像かと思われます。