ライトノベル作法研究所
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  4. リヴァイ兵長はなぜ人類最強なのか公開日:2014/09/18

『進撃の巨人』のリヴァイ兵長はなぜ人類最強なのか

 ダン・シーネンさんのコラム 2014年09月14日

 リヴァイがなぜ人類最強の戦士であるかの謎について、考察を試みたい。彼は戦力として4千人から成る1個旅団と同等であるとされている。15m級巨人2体を瞬殺し、硬化能力により剣を弾き返す女性型巨人をスピードで圧倒して容易く切り刻む。

 そういう恐るべき超人性を誇る彼の身長は160cm、体重は65kgである。BMIにして、25.4とわずかに過体重判定となる。しかし、見た目はむしろ標準よりスリムな感じすらある。体重は某スペシャルメイドのような装備込みの数値ではあるまい。

 エレンは何らかのドーピングにより巨大化するが、リヴァイは、あくまでも人類最強なのであって、たとえば異種の完全有機体などではないのである。巨人化するわけでもなく、金色のオーラも発せず、普通の人間として等身大で戦い抜いている。

 彼、ひいては人類に敬意を持つなら、人間として最高度の身体能力があると考えるべきであろう。そう考えて気になるのは、やはり体重と見かけの落差である。見かけ以上に重いのは明らかである。ここで一つ思い出したことがある。

 それは人間なら誰でも持つ、体脂肪と筋肉の密度である。筋肉は体脂肪より1.3倍ほど重い。体脂肪で重い普通の肥満者は楽々と水に浮く。一方、体脂肪率一桁というコンテスト前のボディビルダーは水に沈んでしまい、泳げないのである。

 そうした差ではないかと考えられる。単純化して、骨格筋率100%の65kgは、骨格筋率100%では50kgとなる。160cm・50kgであれば、BMIは19.5、かなりスリムに見える数値となる(女性がなりたい一番人気のBMI)。これなら外見と一致する。

 大雑把ではあるが、リヴァイが一般より遺伝的に恵まれた身体資質があり、彼自身がそれを磨きながら生きてきたとすれば、あり得ないことではない。彼には体重65kgのアスリート相当、あるいはそれ以上のパワーがあるのだ。やはり超人である。

 筋トレならば、ベンチプレスは100kg、スクワット・デッドリフトなら130kgは上げられるはずである。これは上級者の入り口レベルのバーベル重量であるので、それをもっと上回ると思われる。加えて彼には人並み優れた知恵と技術もある。

 しかも、これは普通に出せる力である。人間は緊急時以外は筋力は最大まで出せない。筆者の調べでは鍛錬した人でも最大の1/3までである。もし自由に全力を出せるとすると、ベンチプレス300kg、スクワット・デッドリフト390kgとなる。

 また、一瞬の判断が生命を左右するようなとき、不思議な経験をする場合があることが知られている。視界がモノクロになり、全てがゆっくり動くというものである。これは、サバイバルに不要な情報処理をカットして、脳の処理速度を上げるため起こる。

 リヴァイはそうした緊急時の能力を自由に使えている可能性がある。もし生来の資質なら、本人も当たり前に感じており、意識していないのかもしれない。それなら身体が人並み外れて強靭に育ったことも説明できるであろう。それも危機の時代ゆえか?

 常人の1秒はリヴァイの5秒、リヴァイの10kgは常人には50kg。リヴァイは生まれてからずっと、無意識に己を常に極限まで鍛えてきた努力の天才であり、レベルは多少違えども、誰でも彼のようになれるという人類の理想の一つなのである。嗚呼最強。

 しかし謎は残る。それだけでは兵士4千人相当になれるとは思えない。彼が仲間の血は気にしないのに、巨人の血は異様に嫌うなどの不審な面がある。さらなる調査研究が必要とされるであろう。人類の未来のために。(終)

○上記記事は、ダン・シーネンさんが、
http://togetter.com/li/518311
 にまとめられた記事を一部修正した上で、当サイトの交流用掲示場に投稿した物を転載したものです。
 意見や補足などが有る方は、下のメールフォームよりお送りください。

サッパーさんの意見2014/09/17

『人類最強の兵士
 リヴァイ兵士長だ!!』
『一人で一個旅団並みの
 戦力があるってよ!!』

 これが原作でリヴァイについて「一個旅団並み」と言及されたセリフですよね。

 「旅団(Brigade)」というものが表す組織の内容が時代や兵科で全然違うので、これを「兵士何人分の戦力」とするのはあまり意味の無い事です。
 よく1個師団は1~2万人くらい、1個旅団は3~5千人くらいのような大雑把な解説される事がありますが、「1個旅団は4000人」という妙に具体的な数はどこから出てきたものなのでしょうか。

 原作漫画(原作者の監修が入った設定資料集)で「彼は兵士4000人分に匹敵する」と明言されているのか、それとも「彼は1個旅団に匹敵する」という表現しかされていのに、それを読者が勝手に旅団=兵士4000人に匹敵すると補完したのかでだいぶ意味が変わります。

 現実世界の中世には旅団という軍事単位は無く、近世になってから登場した初期の旅団(Brigadeの日本語訳の元ネタとなった古代中国の編制単位「旅」と、欧米的編制単位の「旅団」は全く関係無い)の構成人数は相当ばらつきがありましたが概ね数百人から千数百人で、多くても4000人には届きません。

 約4000人という数字は現代の自衛隊のもの(中でも第5旅団や第11旅団のような重装備の旅団。第15旅団は2000人)ですし、司令部要員や後方要員も含んでの数字です。
 最前線の中隊や小隊といった単位であれば殆ど全員が戦闘員ですが、師団や旅団といった作戦級の単位となると実際に武器を持って砲火を交える人員はそのうちの半分くらいで、残りは司令官とその幕僚団、後方支援部隊として兵器整備、衛生関連、補給や輸送といった任務に専門に従事する人員や音楽隊などとなります。

 なので現代の自衛隊を基準にするにしても需品科や衛生科などは除外するのが妥当でしょう。
 騎兵や野戦砲兵も不在な世界(調査兵団の騎馬部隊がギリギリ軽騎兵と言えるかどうか。扱いとしては乗馬歩兵、現代の自動車化歩兵が近い気がします)ですから機甲科や特科部隊も除外して純粋に普通科のみで数えると、だいたい700~1000人分くらいでしょうか。一気に減りましたね。

 参考に、フランス陸軍の第1機械化歩兵旅団(1re BM)の人員は約5500人になります。4000人より多いですから、これを下敷きにすればリヴァイは4000人どころではなく5000人以上に匹敵という事になります。

 公式設定でリヴァイは兵士4000人分と明言されているならそれで終わりなんですが、この場合の「旅団」とは字面どおり「旅(=遠征。壁外調査)に出かけられる程度の能力を持つ軍事集団」という意味ではないでしょうか。
 必要に応じて駐屯兵団から増員される場合もあるのでしょうが、調査兵団の人員は300人です。これが、あの世界の「旅団」として機能する人数だと考えれば、リヴァイの能力は「兵士300人分」となります(それでも十分凄いですし、ミカサの100人分より上です)。

 それに、兵士100人分といっても、例えば「平均的な兵士は30kgの背嚢を背負って歩けるから、兵士100人分なら3トン背負って歩けるのだ」とか、「1人で兵士100人を相手にして互角に戦える」とは、普通考えないですよね(ミカサやリヴァイならあるいは、とか考えちゃだめだ)。
 常識的な文脈であれば、一般的な兵士100人がかりでないとこなせないような任務(成果)を、1人でできるという意味の筈ですから、そこで使われる比喩としての「旅団」は、当然『進撃の巨人』という世界の中の「旅団」の筈ですよね。
 本当に4000人分なら調査兵団10個分以上、駐屯兵団の一割以上です。駐屯兵団から大増員を受けて4000人規模に大拡張した大遠征用の調査兵団を「旅団」と呼ぶのかもしれませんが。

 筋力なども当然一般兵より強い(これは公式設定)でしょうけれど、いつどのように攻撃をかけたり退いたりするかといった瞬間的な判断力とか、最低限の力で負担なく弱点を抉る武器の扱い方とか、燃費の良い立体機動とか、そういう複合的な要素であると考えるのが自然でしょう。
 現実世界での有名人に、シモ・ヘイヘとかルーデルとか居ますよね。人間じゃなくて妖精だとか魔王だとか言われるような方です。

 『高機動幻想ガンパレード・マーチ』というゲームでの戦いについて、プレイヤーにチュートリアルしてくれる教官の言葉。

「自分は好きなことをして、相手に好きなことをさせなければ、すなわち戦いには勝ちます。
 これが主導権を握る、イニシアチブを取るといい、戦術の基本になります。
 そして古来、主導権とは機動によってのみ、確保されます。
 人類発生以来、戦闘種族としての人類が磨き上げてきた戦術は、結局機動、マニューバのことを指すのです」

 この教官は筋力や反応速度などの能力が不要と言っている訳ではありませんが、能力だけあっても戦術が伴わなければ勝てないと説明します。
 そして同ゲームで登場人物の一人が、世界で一番敵を倒した人間に関して以下のような発言をします。

「思うに、化け物とそうでないのと違いはほんの少しだろうさ。
 ほんの少しだけ、普通より武器を使い分けて、
 ほんの少しだけ、普通より移動して、
 ほんの少しだけ、普通より作戦会議してる…。
 そんなところじゃないかって思うのさ。」

 リヴァイ兵士長の凄さというのは、結局こういう事ではないでしょうか。

ダン・シーネンさんの意見2014/09/17

 リヴァイが1個旅団、4千人相当というのは原作、公式設定で、そのことはウィキペディアやピクシブ百科事典などにも記載されています。

 彼の強さですが、実はやはり体重がかなりあるミカサと共通の設定を作者がブログで明かしているとのことです。それは、筋力のリミッターを自由に外しても身体に損傷を受けないようになるため、骨などの強度が大変に上がっており、その重さが体重に現われている、という一種の裏設定とのことです。

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