ライトノベル作法研究所
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  4. 銃の分類と使い分けの基礎知識公開日:2015/01/05

創作のための銃の分類と使い分けの基礎知識

 麻月さんのコラム 2015年01月04日

 銃の分類について。
 アニメなどで個々の有名な銃は聞いたことがあっても、銃の種類や分類用語が多くてよく分からない――そういう場合のための記事です。

 銃に関する記事は個々の有名な銃の説明に熱心になるあまり体系的な理解が困難なケースが多いため、銃の分類に特化した記事を書きました。

 本記事は有名な銃の説明ではなく、銃の分類と使い分けについて説明します。このため、個々の製品・型式や拳銃のタイプについては説明しません。
 また、銃は中間的なタイプや過渡期の銃など、きれいに分類できないケースが多いですが、"原則"を説明するため個々の例外を挙げることはしません。
 むしろ個々の銃の説明の説明では見落とされがちな"体系"としての理解を主旨とします。

以下本題。

◆前段
・本記事の分類方法
 大まかな分け方として、
1、単射の銃
2、連射の専門家
3、連射"も"できる単射銃
 に分けると違いが分かりやすい。
 以下、これに沿って分類する。

・連発と連射の違い
 火縄銃のように一発ずつ弾を込めるのが単発式、後装ライフル(※)のようにあらかじめ銃に弾を何発も込めるのが連発式。
 引き金を引いて一発だけ弾が出るのが単射、引き金を引きっぱなしで何発も弾が出続けるのが連射。
 以下、連発と連射が紛らわしいので、引き金一回で弾が出続ける事を「連射」と表記する。

※古い時代のライフル小銃は銃口から弾を押し込める前装式であった。その後に登場した後装式は弾を、銃身の後ろから込める方式である。
 弾を満たした銃倉(マガジン)を銃に装着することで、発砲するごとに次弾を銃身後端(の薬室)に装填することができる(これが連発)。この薬莢排出・次弾装填をする方式としては、自動小銃と、手動ではレバーアクションやボルトアクションなどがある。
 また、二つの銃身を縦または横に並べる方法の連発式ライフルもある。

・弾の種類
 薬莢のサイズは極めておおざっぱに言えば
 機関銃弾≧小銃弾>アサルト弾>>拳銃弾
 となる(※1)。

 薬莢の先端に弾丸が付き、発砲すると薬莢はその場に飛び散り、弾丸だけが飛んでいく。
 射程距離は(薬莢に入れられる)発射薬の量に依存するので、基本的には薬莢のサイズと弾丸の飛距離は比例する(※2)。従って弾の飛距離もこの順となる。
 拳銃弾はコンパクトなのが取り柄であり、後述のように拳銃弾を使った拳銃以外の銃もある。

※1 機関銃は小銃弾を使うものや、もっと大きな銃弾を使うものもある。
また、拳銃弾は小銃弾やアサルト弾よりも直径が大きいが、薬莢の長さが非常に短いので上記のように弾丸の飛距離が短くなる。

※2 ただし、同じサイズの薬莢でも発射薬の量を減らした弾もあり、弱装弾と呼ばれる。威力と射程距離が減少するが、反動が抑えられることによる命中精度の向上が期待できる。例えば小銃で威力が大きすぎる場合に、同じ小銃で弱装弾を使えばわざわざ別の小銃を用意しなくて済む……などのメリットがある。

≪銃の分類≫
●単射の銃
○拳銃
 近接戦闘用の極めてコンパクトな銃。軍用としては、護身用や小銃などの弾切れなどの非常用の銃といえる。リボルバーと自動拳銃に大別される。
本記事は銃器全体の分類に力点を置くので、これ以上の説明はしない。

○小銃
 小銃弾を使い、長距離で狙いを定めて撃つための銃。
 拳銃弾やアサルト弾より大きな弾を使うため、射程距離が比較的長い。
 薬莢排出と次弾装填を手動で行う小銃(ボルトアクションなど)と、ガスやバネなどにより自動で行う自動小銃がある。
◇自動小銃と半自動小銃
・半自動(セミオート)射撃
 引き金一回で発射→排莢→次弾装填まで行う。次の発射は改めて引き金を引く。全自動式の軍用銃を民間向けに半自動専用にするケースも少なくない。
・全自動(フルオート)射撃
 引き金を引き続けると、発射→排莢→次弾装填→発射→……と連射できる。アサルトライフルで後述。自動小銃は半自動と切換えできるのが通常である(というより連射の専門家が機関銃となる)。

●連射"も"できる単射銃
○アサルトライフル
 一言でいえば、『連射"も"できる小銃、ただし連射の専門家ではない』自動小銃である。

 連射(フルオート)・単射(セミオート)の切り替えができ、小銃弾よりやや小さなアサルト弾を使う(※)。
 基本的にセミオートで狙い撃ちする小銃として使い、場合によっては連射"も"する、という使い方をする。代用機関銃であり、連射の専門家ではない。

◇アサルトライフルの特徴は次の2つ+1。
1、連射"も"できる(基本は単射する)小銃で、単射と連射が切り替えができる。
2、代用機関銃なので連射の専門家にはかなわない。
 この二つさえ抑えればアサルトライフルの使い方が分かる。
 その使い方、特徴としては
・一丁で長距離狙撃にも近接弾幕戦にも使える優れもの。
・ただし代用機関銃なので、グループを組んで機関銃などと組み合わせる場合もある。
 などが挙げられる。

 +1、小銃弾よりやや小さなアサルト弾を使う。
 ただし小銃弾に近い弾を使うタイプもある(後述する、いわゆるバトルライフルなど)。

 繰り返すが、アサルトライフルは基本的に小銃として狙い撃ちして使い、場合により代用機関銃として"も"使える小銃である。

※バースト制限機能
 全自動で連射する場合、無駄に弾を多く撃つことにもなりかねない。
 このため、引き金を引き続けた際に一回に出る弾数を制限するバースト・リミッターが付けられてる全自動小銃も少なくない。引き金を引き続けて2発だけ弾を撃ちだすものを2点バースト、3発だけのものを3点バーストと呼ぶ。

※アサルト弾の利点
 アサルト弾は小銃弾より小さめの弾であるため射程距離が短めであるが、その分反動が小さく連射時の銃身の保持…命中精度の向上が容易となる。
 生粋の小銃の射程距離は長いものでは1000メートル程度であるが、第一次大戦で小銃が大抵300~400メートルの範囲で使われる事が判明した。
 このためためアサルトライフルは、実戦に支障のない範囲で射程距離をやや犠牲にすることで(射程距離500メートル程度)、連射しやすさ(反動の少なさ)と両立させた。
 アサルトライフルは高度な、上手な妥協の産物である。

○機関拳銃(マシンピストル)
 連射"も"できる拳銃。拳銃弾を使った短機関銃が連射に特化した構造であるのに対し、拳銃がベースである。
 もともと塹壕用のコンパクトな連射銃として開発されたが、銃身の小ささによる反動制御の不利などから短機関銃にとって代わられた。
 現在では要人警護などの特殊な用途で使われる。

※ややこしい「機関拳銃」という用語
 「機関拳銃」という用語は、紛らわしいことに次の三つの用法がある。
1、連射の専門家の短機関銃(後述)とは区別される、分類上の機関拳銃。本記事ではこの意味でのみ用語を使う。
2、短機関銃のドイツ語およびその影響を受けた旧日本軍の翻訳としての『機関拳銃』…実際は短機関銃、現在ではこの意味では使わない。
3、現在の日本政府の法解釈上の『機関けん銃』…実態は短機関銃、短機関銃は保有禁止との"建前"のため。

●連射の専門家
○機関銃(マシンガン)
 連射に特化した銃。ベルトや大きめの弾倉またはドラム型の銃倉による連続給弾や、加熱する銃身を交換できるなどの特徴がある。

◇重機関銃、軽機関銃、汎用機関銃
・重機関銃
 車両や艦船や航空機や陣地に固定して使う。後述の汎用機関銃が主流となった現在では、重機関銃は大口径や多銃身など携行不可能な要素を持つものが大半である。

・軽機関銃
 銃本体を1人で携行でき、射撃担当と弾薬補給担当の2~3人で運用する。現在では、従来型の2~3人で運用する軽機関銃は汎用機関銃に統合されている。

・汎用機関銃
 重機関銃と軽機関銃双方の役目をこなせる機関銃で、現在(2015年1月)の主流となっている。2~3人で携行したり車両や陣地に固定して使う。現在では小銃弾を使う事が多い。

◇分隊支援火器
 銃の機構ではなく使用目的による分類である。
 アサルトライフルは連射の専門家ではないので、これを援護する機関銃と組み合わせて分隊単位(10人程度)のグループを組んで行動する場合が少なくない。
 このための"一人で運用できる機関銃"が分隊支援火器として使われる。小さな拳銃弾を使う短機関銃と異なり、射程距離と威力に優れた小銃弾の機関銃である。

 従って、軽機関銃を1人で抱えて分隊支援火器として使うこともできないことはないが、最初から分隊支援火器用として開発された(軽)機関銃もある。
 中には、アサルトライフルと組み合わせて使う事を前提にして、アサルト弾を使った分隊支援火器用の機関銃もある。携行性を優先して、銃身が交換できないものもある。

○短機関銃(サブマシンガン)
 拳銃弾を使った連射の専門家。
 拳銃弾を使いコンパクトにまとめられたのが最大の特徴で、一人で運用できる。
 拳銃弾のため小銃や機関銃に比べて射程距離も威力も劣るため、一般歩兵用としてはアサルトライフルに取って代われた。だが、過剰威力にならず取り回しが便利なことから現在では市街戦や警察などで使われる。

≪特記事項≫
●カービン銃
 小銃等をベースに、銃身や銃床を短縮し携行しやすくした銃。銃身を短くしたぶん命中率が犠牲になるが、その代わりにコンパクトにしたものである。
 小銃を持たない軍人の護身用、特殊部隊や空挺部隊、市街戦や密林など至近距離の戦闘用などに使われる。

 歴史的には小銃を馬上の騎兵用にコンパクトにしたものといえるが、現代では連射も単射もできるのが主流である。
現代の(連射も単射もできる)カービン銃にはいくつかの由来がある。
1、小銃弾を使った小銃がベース
2、アサルト弾を使ったアサルトライフルがベース
3、拳銃弾を使ったもの…短機関銃ベースのものと、拳銃ベースのものがある
 由来に関わらず、上記はすべてカービン銃である。2をアサルトカービン、3をピストルカービンと呼ぶこともある。
カービン銃について調べるときは、上記の由来や弾の種類に注意すると良いと思う。

≪その他事項≫
○スナイパーライフルとマークスマンライフル
 スナイパーライフルもマークスマンライフルも、銃の機構ではなく使用方法による分類である。

・スナイパーライフル
 小銃(やアサルトライフル)はもともと長距離を狙い撃ちして使う銃であるため、実はどんな小銃でもスコープを付ければ狙撃銃として使うことができる(というよりそれができない小銃は小銃失格である)。一方で、最初から狙撃のために作られた小銃もある。

・マークスマンライフル
 マークスマンとは、敵中潜んで狙撃する一般的な狙撃兵と異なり、主に味方を援護するための狙撃兵である。分隊のグループの一員として運用されるため、マークスマン(が使う)ライフルは分隊支援用の火器ともいえる。
 敵の近くで使うため射程距離が小銃より短くても必ずしも問題はなく、また敵に囲まれた際の護身として連射機能があると便利なため、アサルトライフルをマークスマンライフルとして使う事が多い。

※分隊支援火器とマークスマンライフル
 分隊支援火器は基本的に一人で運用できる機関銃のことを差すが、上記のように分隊支援用の狙撃手(マークスマン)用の小銃も分隊支援火器と呼ぶ場合もある。ただし、たいていの場合が"分隊支援に使い基本的に一人で携行できる機関銃"と思ってよい。

○アンチマテリアルライフル
 もともとは第一次大戦中に開発された対戦車ライフルだったが、戦車の装甲の強化に追い付けず廃れた。
 今日では超長距離大威力の狙撃銃として使われる。ライフル小銃が普通は対人用なのに対して、対物(アンチマテリアル)ライフルと呼ばれる。が、軍用としては、軽装甲(ソフトスキン)の車両等だけでなく、事実上は対人用としても使われる(※)。

 第二次大戦後、軍用としては重機関銃にスコープを付けて長距離射撃をしたフォークランドの事例、警察用としては超長距離射程と強化ガラス等の貫通が強く望まれたミュンヘンオリンピック事件がきっかけとなり、軍や警察で超長距離大威力の狙撃銃として再評価された。

 余談ながら、アンチマテリアルライフルは口径が大きく、銃身が長いものでは2mに及ぶものもあり、重たく携行性はない。
 いくら火力が大きくても屋内近接戦闘には使えないのは言うまでもない。長距離狙撃できて火力が大きいからアンチマテリアルライフルこそ最強!……というわけにはいかない。

※アンチマテリアルライフルは弾の口径(銃身内の直径)が大きく威力が大きいため、大口径のスナイパーライフルは対人用としては条約で禁止されている、と言われることがあるがこれは正確ではない。ハーグ陸戦協定第23条5項では「不必要な苦痛を与える兵器、投射物、その他の物質を使用すること」を禁じているのみで、この銃の禁止が明示されているわけではない。また、この条約は警察は対象外である。

○バトルライフル
 アサルト弾よりやや大きい弾を使うものをいう…とされているが、連射"も"できる自動小銃という点でアサルトライフルと根本的に異なった使い方をするものではない。
 小銃弾のため射程距離が優れるが反面反動が大きく連射にはやや不向きで、普及しているとは必ずしもいえない。
小銃弾を使ったアサルトライフル(の一種)と思ってよい。

 個人的見解だが、バトルライフルは基本的にはアサルトライフルと同じ使い方を目的としており、バトルライフルをアサルトライフルとはまったく別物であるかのように説明するのは少々疑問である。

○PDW
 PDWはPersonal Defense Weapon(パーソナル ディフェンス ウエポン)個人防衛火器の意味。

 近年の戦争や紛争では防弾チョッキが普及し、拳銃弾を使った短機関銃では力不足な場面が目立つようになった。このため拳銃弾より少し大きな弾を使い、防弾チョッキを撃ち抜ける小型携行機関銃としてPDWというジャンルが提唱された。
 取り回しの便利な連射銃として、補給等後方の護身用、軍や警察の特殊部隊、PMC(民間軍事会社)などに向いているとされる。一方で、その名に反して攻撃にも使え、在ペルー日本大使公邸占拠事件で特殊部隊がPDWを使い有名になった。

 しかし、PDWは短機関銃とほぼ同様の使い方をするので、短機関銃の豪華版と言えなくはなく、"新ジャンル"とみなすのは疑問とする見方もある。実際、メーカーによっては当初PDWと呼んでいた製品を現在ではサブマシンガンと呼んでいる…というケースもある。

 「PDWは短機関銃の豪華版」と理解しても大きな間違いはないと思う。

 以下余談。

 銃の分類はかなり分かりにくいもので、銃に関する説明では誤解や必ずしも適切とは言い難い説明が目立つ。
 特に、アサルトライフルについて、その連射機能に目を奪われて、(連射の専門家の)機関銃の区別がつかない説明をしてしまうケースが目についた。

 またバトルライフルやPDWのような"新ジャンル"とするには少々疑問があるケースでも、あたかも従来の銃とはまったく別物であるかのように説明してしまうケースも目につく。意地の悪い言い方をすれば、業界が流行らせようとしたがいまいち流行らなかった……といえないこともない。
 あるいは、銃の種類には中間的な物や過渡期のものなど例外が多いが、掲示板の話題などでは例外を挙げられることも多く、初心者がみても理解が難しいと思われるケースも多くみられる。

 そこで、銃の分類に特化した記事を書くことを思い立った。

 本記事で最低一つだけ覚えてほしいのは
『アサルトライフルは連射"も"できる小銃で、連射の専門家ではない』
 ということ。最低限これだけ分かってもらえれば本記事の役目は果たしたといえる。

 創作としては、文中の記述をおおまかな銃のジャンルだけで済ませる場合でも的外れになる事態は避けられると思うし、また個々の銃を詳しく調べるためのヒントとしても役立ててもらえれば幸いです。

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