ライトノベル作法研究所
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  4. 読者には未知の情報をどう伝える?公開日:2015/01/16

主人公には既知、読者には未知の情報をどう伝える?3

兵藤晴佳さんの意見2015/01/16

 基本的な技術のひとつですね。(自分のことは棚に上げております。)
 平田オリザなどが指摘する、劇作の方法を知らない高校生たちが書く下手な台本の例はこうです。

 美術館にいる人が、「ああ、美術館はいいなあ!」と言う。
 普通は、こんなことは言いません。美術館でなければ言えないことを口にします。

 モノローグなら、こんな感じ。

 ああ、そこの人、ちょっとどいてくんないかな。見えないんだけど。ああ、写真撮っちゃいけないのに。売店で絵葉書買えばいいんだよ。学芸員何してんだ。
 子ども、走るな! 連れてくるなよ、親も! アンパンマンでも見せとけ。だいたい後期印象派が分かるのか、お前ら。

 「遠いことから描写する」のがコツです。こんな感じに。

 海賊船のヘリから体を離し、わたしは船尾楼の方へ歩いた。
 甲板では船員たちが忙しく働いている。
 マストでは真っ赤な帆が風になびいている。
 せわしなく歩き、すれ違う船員はあらかた、こんな色の髪と目を持っている。
 隆々たる筋肉と頑丈そうな体つき。その割に、歩みはたおやか。
 それでも、一旦ことが起これば並みの人間よりも高く飛び、船と船との間を軽々と飛び回る。
 下手に斬りあいになったらもう、めんどくさい。
 こちらの刃はことごとくかわされ、たまに当たっても傷一つつけられないんだから。
 砲弾に吹き飛ばされても平然と立ち上がり、両腕が折れてもまだ戦おうとする。ああ、嫌んなっちゃう!
 ま、それは敵に回った場合のことだけど。
 味方につけばこれほど心強いことはない。
 ルテミス。かつて人間だった者たち。

Smanさんの意見2015/01/11

 いまさらですが、

>やはり、最初は弱い主人公の方がいいのでしょうか。

 このあたりに答えていませんでしたね。

 前の返信にて共感について少し触れましたが(まあ、ぶっちゃけ共感なんてものは設定だけで表現できるものじゃないので、私のは解釈の一つと思ってください。正解を書いたわけではないです)、
 海さん自身も

>実際その最強主人公も、最初はしがない平凡なやつ、という設定が多い気がします。

 と仰ってる通り、この手の「最初は弱いが実は特別」という主人公像は比較的多いです(といより有名な作品に多いね)。
 が、それは共感の話で言った通り、それが流行だから、です。

 考えても見てください。戦闘の物語で主人公が弱かったら話になりません。主人公は強くて当然なんです。勝って当たり前(だから負ける展開にも意味がある)。
 でも、それをそのまま形にしたら古い憧憬型の主人公になってしまうので、現代風にアレンジすると、「最初は平凡、覚醒して最強」という(これも古い設定だけど)、そういう流れになるわけです。

 この話でポイントは、「主人公は強くて当然」という部分ですね。
 主人公が強ければ(腕力にしろ知力にしろ能力にしろ)、物語にはなるので、あとは「書きたいように書くか」「流行に合わせるか」みたいな選択でしかありません。
 ぶっちゃけると、どっちでもいいし、なんだっていいんですよね。主人公が強いこと以外は。
 主人公は弱いと設定してても戦闘にゃ勝つわけだし。
 腕力や能力がショボくても、他の何かが敵を圧倒しているから勝てるわけで。

 ……もちろん、これは戦闘で主人公が活躍する物語に限定した話なので、ラブコメとかミステリとかだったら、主人公に求める要素は変わってきます。
 つーか、読者が主人公に対して「主人公に求める要素」の先入観を持ってるんですよね。

 なので、なんか関係ない話をした気がしますが、

>やはり、最初は弱い主人公の方がいいのでしょうか。

 そんなことはありません。
 ただし、

>読書が物語をちゃんと楽しめるか

 御作の主人公像が流行ではないことをきちんと理解し、そのうえで「主人公のココを楽しんでください」という要素を物語の中で明確にしておくべきかなと思います。
 例に出した『魔法科高校の劣等生』は執拗なくらいに完璧超人っぷりをアピールしています。強さだけでなく女性に対する接し方や年長者に対する態度、可能な限り完璧な「お兄様」ですよね(笑)
 流行な平凡タイプの主人公だと、まあ例にできそうな作品が多すぎるので(作品によって見どころは違うので正確ではないが)大きく括ってしまえば、やはり弱者が強者をどのように倒すのか、という部分ですよね。
 ようするに、「あなたの作品内で主人公の魅力とはどこですか?」という、言ってしまえば単純なことです。
 これに対する回答を持っていれば、どんな主人公像だろうとちゃんと物語を楽しむことができます。

あまくささんの意見2015/01/12

 作品を拝見してきました。さっと読ませて頂いただけなので、以下、読み間違いがありましたらご容赦を。

 メアリは海の精霊のような存在と交感して、波を操ることができるんですね? ルテミスの血を引いているけれどルテミスそのものではない、混血か何かという感じでしょうか?
 これが大外れでないとしたら何となく雰囲気程度はわかったので、序盤の描写としてまあまあセーフなんじゃないかと思います。

 まず良かった点ですが。
 なかなか意欲的な構想の盛り込まれた作品のようだなと思いました。波を操るというのは彼女の能力のすべてなのかどうか判りませんが。仮に波だけだとしても、この先も海を舞台にしたシーンが多いでしょうから、いろいろ使い方が工夫できそうなギミックですね。
 そういうことも含め、この先もっと面白くなりそうだという期待感はありました。そういう期待を読者に抱かせることができれば、序盤としてはまずまずでしょう。

 次に、ご心配の判りにくさ、主人公への共感しにくさですが。
 うん。まったくないとは言いきれないかもですね。
 私が感じた要検討ポイントは、

1)主人公の正体について謎がある。
2)主人公の行動目的にも謎がある。
3)描写がやや不足?
4)人称・視点の移動。

 になります。一つ一つについては致命的というほどではなかったと思うのですが、4つ複合していたため、結果的に若干ストーリーを追いにくい感じはありました。

1)については、わりあいヒントが散りばめられていました。赤毛によってメアリがルテミスと関係ありそうだと見当がつきますし、ラムズとの会話からルテミスが人間にとって忌むべき存在であることが察せられました。それと、とりあえず波を操る能力があるということですね。これだけでも読者にはある程度イメージの輪郭はできてくるので、序盤としては基本的にはOKなんじゃないかと感じました。
 ある程度わかって、少し謎が残るというのは、匙加減が適当ならむしろ期待感につながります。『神様のチェスゲーム』は、その匙加減が最善かどうかは私もわかりませんが、ここまで読者がついてきてくれれば期待が膨らむ感じに書かれていましたから、これはむしろ大事にしてほしいところです。

2)については、メアリの真の行動目的が隠されていること自体まだ読者は知りませんから、この時点での混乱要因にはなりません。
 行動目的には人生をかけるような大きなものと、その場その場の小さなものがあります。御作では現時点でメアリが何をやっているかはわかるので、さしあたり大丈夫かと。

 要は小説の冒頭で、読者が主人公のイメージをある程度思い浮かべられるようにするのと、そこに興味を惹かれる要素を加味できているかどうかが重要。それができれば、後は読者はついてきてくれるものなんじゃないでしょうか?
 伏せられた大きな謎をどこで炸裂させるかとか、それを読者に受け入れられるものにできるかどうかとかは、中~終盤の技術ということでこれから考えればいいんじゃないかと思います。

 以上のように、1)と2)については、何とかなる書き方になっていたように思います。ただ、3)の描写不足が少し気になりました。
 例えば、メアリが波を操る力。第1章にそれなりに描かれていますが、冒頭のこの時点ではまだ伏線も前フリもなく(冒頭だから当然です)、読者のイメージが固まっていない状態なので、あの程度の書き方では意外と印象に残らないんです。

 1章の描写が印象に残らないと、後の章で敵船の乗組員が急に波が起こったと言って不思議がっていることにも繋がりませんし、メアリが波を操って船を引き離したというのも文章がそっけなさすぎて読みすごされてしまう恐れがありそうでした。
 ここは1)のメアリの正体の謎とも関わる重要な部分だし、印象的に描ければ冒頭のつかみとしても面白いですから、もっと気合を入れるべきポイントなんじゃないかと思いました。
他にも。
 メアリがラムズの提案を一度は拒絶しながら彼の船に乗り込んでくるシーン。

>「来たのか」

 アニメなんかによくある演出でベタと言えばベタですが、何度見せられてもこういうのが好きな人(例えば私)ならグッとくるシーンです。
 でも、御作ではちょっと唐突感がありましたから、何か前フリがほしかったです。

4)人称・視点の移動について。

2章に入ったところで、視点がメアリの一人称から三人称に変わり、ジウが(緩やかな)視点人物になっていましたよね? しかし読者の私はまだ頭が白紙の状態で読んでいたので、2章の冒頭では誰が何をやっているのか判らず情景がなかなかイメージできませんでした。
 視点移動の怖さです。視点の変更は章ごとにするなどの配慮があれば比較的混乱は少ないのですが、それでも切り替わった直後は多少判りにくくなるのは避けられないんですね。それを押して移動するメリットが何かあるならいいのですが。

 本作の場合、基本メアリの一人称で進行。でも、2章では、他のキャラの目を通して彼女を描いてみたかったんですよね?
 これはどういうことかと言うと、ここがSmanさんが仰っていた憧憬型主人公ということなんだと思います。「カッコイイ」っていう要素があるんですね。

 マンガやアニメの場合は、小説のように「主人公=視点人物」という図式は存在しません。と言うより視点人物そのものが存在せず、主人公と言えども外面描写しかできませんよね。だから「カッコイイ」という要素が小説より重要になってくるのだと思いますが、小説の場合は共感をとるか憧憬をとるかという悩みがつきまとってしまうわけです。

 この話は踏み込むとものすごく長くなってしまうので、これくらいにします。

 ただ御作について一つだけ。いっそジウかルドあたりを主人公(視点人物)にしてしまえば、上記の問題は残らずすっきりすると思います。それはたぶん海さんの意図とは距離が離れすぎると思いますからお勧めするというわけではありませんが。

 いろいろ書きましたが、すでにスタートしている作品ですから、序盤の段階であれこれ考えすぎて止まってしまうのも良くないと思います。最初に書いたように、魅力も感じさせる序盤になっていましたから、このまま先に進めてみるのがいいんじゃないかなと思いますよ。

たこやきさんの意見2015/01/13

 説明はいらないです、主人公と読者の知識の差は作者が積極的に介入して埋めるようにするといいと思います。
 書く内容の3倍は物語について考えてください、無駄なことは一つもありませんどうぞ楽しんでください。

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