ライトノベル作法研究所
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ライトノベル歴史年表2010年~

2010年

ラノベ界の動向

・第16回電撃小説大賞最終選考作として電撃文庫から刊行された『俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長』が、ファミ通文庫の『バカとテストと召喚獣』2巻の文章を何ページにもわたって盗用していたとして、絶版・回収になる。
 この背景には、ネットの普及による著作権意識の変化、ラノベブームによる出版点数の増加で、審査する側が盗作か否かをチェックしきれなくなっているという要因があると考えられる。

代表作品

・12月、橙乃ままれの『まおゆう魔王勇者』がエンターブレインより刊行される。本来は、2009年9月に巨大掲示板2ちゃんねるに立てられたスレッド「魔王『この我のものとなれ、勇者よ』勇者『断る!』」から生まれた即興小説だった。魔王が主人公で、巨乳で温厚な女の子であるのが特徴だった。ライトノベル化だけでなく、アニメ、漫画、ドラマCDとメディアミックス展開された。
 魔王勇者物の火付け役と言える。
 この作品以後、『はたらく魔王さま!』(2011年2月刊行)、 『勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。』(2012年1月刊行) 、 『魔王と姫と叡智の書』(2013年12月刊行)など、魔王勇者物が爆発的に増えていく。2012年に刊行された書籍『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』によると、魔王勇者物はあまり売れていない、とのことだったが、2013年になっても、魔王勇者物は増え続けた。
 魔王勇者物とは、異世界ファンタジーの定番である世界征服を企む魔王と、これを討伐する勇者が登場する物語を笑いが取れるように変質させたギャグパロディ作品。1990年にドラゴンクエストシリーズのギャグパロディ漫画である『4コママンガ劇場』が刊行されたのが、魔王勇者物の先駆けであると考えられる。

レーベルの創刊

・宝島社が『このライトノベルがすごい!文庫』を創刊。

・PHP研究所が『スマッシュ文庫』を創刊。
 キャッチコピーは「愛と友情のミラクル小説(ショット)」
 松下政経塾と姉妹関係であり、ビジネス書や自己啓発本を出版するPHP研究所がラノベ界に参入してきたのには、非常に驚かされた。

・株式会社ビジュアルアーツが『キネティックノベル大賞』を開始。
 受賞作品は、キネティックノベル化(ノベルゲーム)され、GA文庫または一迅社文庫から小説版も出版される。

新人賞

・10月、講談社が翌年に創刊する新レーベルのための『講談社ラノベ文庫新人賞』の募集を開始する。

新人賞

・富士見書房が毎年開催しているラノベ新人賞『ファンタジア大賞』の第24回後期から、ラノベ文芸部門が作られ、ラノベ文芸賞が追加となった。10代から20代の読者を幅広く獲得できる、 ライトノベルと一般文芸の中間のような作品を募集する。
 2009年に新設された電撃小説大賞の『メディアワークス文庫賞』と同様に、ライトノベルのターゲットを中高生から、20代の若者にまで広げる試み。公式サイトから引用すると、とにかくキャラクターが立っていて、夢中になれて、 読めばその世界のことをちょっとだけ体験したような気持ちになれる小説を募集。
 ラノベ文芸部門の設立には、少子化の他、近年のライトノベルの萌え重視、アホな長文タイトルが20代以上の一部の層から敬遠されていることも関係していると思われる。

東京都の『非実在青少年』規制

・東京都が十八歳未満に見える二次元キャラクターの性的描写を規制した条例を制定する。
 東京都には出版社が集中しているため、新しい法律が出来たのと同じ効力を発揮するとして、オタクコンテンツ業界で大きな騒ぎとなった。
 ただし、実写と小説は除くとされて、ライトノベルは規制対象から取りあえず外されている。
 理由として、一般文芸小説が、例えば2005年の芥川賞受賞作品『グランド・フィナーレ』は小児性愛者を主人公にするなど、不道徳な内容の作品を芸術的としてきた歴史があること。ライトノベル作家から一般文芸作家、とりわけ直木賞受賞作家が現れるなどしたことから、ラノベに対する非オタク層からの偏見は漫画やアニメに比べて、低かったためと考えられる。

2011年 オンライン小説発のヒット作誕生

ラノベ界の動向

・MF文庫Jを刊行するメディアファクトリーが、角川グループによって買収される。
 これによっては、電撃、スニーカー、富士見ファンタジア、MF文庫J、 ファミ通、といった主要レーベルをことごと傘下に入れ、角川はライトノベルのシェア8割以上を占めるようになる。

・口語体の長文タイトルの作品が増える。
 おそらく『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(2008/8)、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(2009/12』のヒットが要因で、マーケティング的に長文タイトルがヒットするとされたためだと考えられる。
 『誰もが恐れるあの委員長が、ぼくの専属メイドになるようです。』 (2011/11)、『嫁にしろと迫る幼馴染みのために××してみた』((2011/8)、『彼女がフラグをおられたら 俺、この転校が終わったら、あの娘と結婚するんだ』 (2011/12)など。
 書籍『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』((2012年4月刊行)によると、長文タイトルの作品は「楽しそう」+「ネタになる」を追究した結果、生まれたとされる。つまり、一目見て「楽しそう」であることが伝わり、ネット上やリアルの友人関係で「こんなラノベがあったぞ!」と口コミしてもらえるというメリットがある。

レーベルの創刊

・12月2日、講談社が『ラノベ文庫』を創刊。十代中盤から、二十代前半の男性をターゲット層とした長編小説を新人賞で募集する。ラノベのターゲット層を二十代の層にまで広げる試み。
 長らくオタク文化の担い手だった10代の少年少女の経済力が衰退していることを受けてのことだと考えられる。

・11月10日、林檎プロモーションがフェザー文庫を創刊。
 大手小説投稿サイト「小説家になろう」の掲載作品を、書籍化して文庫として出版する。しかし、刊行された『攻撃魔術の使えない魔術師』が諸般の事情により2巻以降の刊行中止になるなど、スタート当初、トラブルに見舞われた。

代表作品

・佐島勤の『魔法科高校の劣等生』が電撃文庫より刊行される。発行部数453万部を超えるヒット作。
 元々はWebサイト「小説家になろう」で2008年から連載されていたオンライン小説であり、同サイトで人気一位を誇っていた作品である。オンライン小説の書籍化によるライトノベル作家デビューは例が少なく、注目された。
 異端児の兄と、彼に肉親以上の想いを寄せる優等生の妹というキャラ設定が秀逸だった。 

・2月、和ヶ原聡司の『はたらく魔王さま!』が電撃文庫より刊行される。第17回電撃小説大賞銀賞、受賞作品。
 世界征服の直前まで行った魔王サタンが、勇者に敗れて異界である現代日本に逃げ込んで来たが、魔力の供給源を失ってしまったため人間の姿となってしまい、配下である悪魔大元帥アルシエルと一緒に六畳一間のボロアパートに住んで、ファーストフード店で働く、といった内容でヒットした。発行部数135万部を超えるヒット作。
 魔王を追ってきた勇者の少女エミリアといがみ合いながらも協力して世知辛い日本で生きていく、人の人情が染みるギャグコメディ。魔王が世界征服を企んでいたとは思えないほど良い人で、微笑ましい。

・11月、川口士の『魔弾の王と戦姫』がMF文庫Jより刊行される。累計発行部数100万部を超えるヒット作。
 竜や魔物が存在するファンタジー世界を舞台にした群像劇的戦記物に、ラノベ特有の萌えやお色気シーンをミックスさせた作風。竜具と呼ばれる特殊な力を秘めた武器の所有者であり領主でもある7人の戦姫のほぼすべてに主人公はモテる。戦争で大敗した軍に所属していた主人公が戦姫エレオノーラの捕虜となり、お前は私のものだと言われるのには、非常に驚いた。捕虜という立場を美少女の所有物になるという意味に解釈したアイディアは秀逸。
 それだけでなく、圧倒的に不利な立場に立たされた主人公がエレオノーラの協力を取り付け、王女を救い、国家の内乱を収めて英雄となるという、極めて王道な英雄譚である。しかも、内乱に介入してきた外国の軍隊2万を知略を尽くして2千で破るなど、戦術面での構成もしっかりしている。
 一端は凋落していた異世界ファンタジーの復活を担った作品の一つである。

・白鳥士郎の『のうりん』がGA文庫より刊行される。
 農業高校を舞台にした学園ラブコメディ。著者は農業については素人だったが、農業高校を取材し、雑誌『現代農業』のバンクナンバーを3年分読むなどして、知識を得て、執筆に取り組んだ。農業の素人である自分がおもしろいと思えるネタは、読者もおもしろいだろう、と考えてのことだった。
 リアルな農作業の描写も売りだが、ラノベ読者を意識して、ぶっ飛んだギャグや数多くのパロディネタを仕込んでいる。また、文章とイラストをストーリー内で融合させ、「落ち」にイラストを効果的に使うなど、新しい表現手法を取り入れている。

・11月、深山くのえの『乙女なでしこ恋手帖』がルルル文庫より刊行される。
 少女向け小説で、初めてアニメDVD付特装版が発売された作品。2012年1月26日発売の第2巻にショートアニメが同梱された。
 大正時代を舞台に周りのしきたりに翻弄されるラブストーリー。

メディアワークス文庫初のミリオンセラー

・三上 延の『ビブリア古書堂の事件手帖』がメディアワークス文庫より刊行される。
 古書に関して桁外れの知識を持ち、若くて美人だが、初対面の人間とは口もきけない人見知りである「ビブリア古書堂」の店主・栞子(しおりこ)が、客が持ち込む古書にまつわる謎を解いていくライトミステリ小説。主人公は、ターゲット層となる20代以上の読者に合わせて、23歳の男性となっている。2010年8月の神奈川県北鎌倉を舞台としており、実在の地名が登場する。
 2012年本屋大賞にノミネートされ、3巻が発売となった2012年6月の段階で累計発行部数300万部を突破した。
 メディアワークス文庫はライトノベルを卒業した人向けのレーベル。20代以上のライトオタク層を取り込もうとするアスキー・メディアワークス(角川グループ)の戦略がヒットした最初の事例。

アニメ業界の動向

・深夜アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』が放送される。
 異例の大ヒットとなり、「エヴァンゲリオン」に次ぐ名作と評価される。
 魔法少女の既成概念を利用して、予測のつかないシビアなストーリー展開を見せた大人向けのアニメ。女子児童が見るような内容ではない。
 二次創作の広がりやネットで話題になることを狙って作られており、物語中の時間がループするなどの構造が取り入れられている。ループ構造は2007年からスタートした『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズでも使われている。
 小説版が同年ニトロプラスブックスより刊行される。

影響を与えた時代背景

・3月11日に未曾有の大災害、東日本大震災が発生。
 製紙工場が被災し、出版業界は紙不足に悩まされた。
 また、福島第一原発が事故を起こし、放射能による農作物の汚染、電力不足といった問題を引き起こした。

2012年

代表作品

・4月、榎宮祐の『ノーゲーム・ノーライフ』が電撃文庫より刊行される。発行部数135万部を超えるヒット作。
 社会不適合者のゲーム廃人兄妹が、神様に異世界の救世主として召喚される。ゲームが全てを決定する異世界で、人類は魔法でイカサマができる他種族に負けづづけ、滅亡寸前にまで追い込まれていたが、主人公の空と白は、その天才的ゲーム手腕で、人類国家を救い、王様になって世界制覇に乗り出す。2014年4月にアニメ化された。
 作者は漫画家、イラストレーターでもあり、小説本文のみならずイラストも担当したことでも有名。

レーベルの創刊

・1月5日、一二三書房が『桜ノ杜ぶんこ』を創刊。

・1月16日、創芸社が『創芸社クリア文庫』を創刊。毎月15日に2冊ずつの発売となる。
 同時に「創芸社クリア文庫新人賞」「創芸社クリア文庫 イラスト大賞」を開始。

・9月28日、主婦の友社がヒーロー文庫を創刊。10代~20代のライトノベルファンを対象としたレーベル。
 同時に、ライトノベル新人賞・「ラノベ作家になろう大賞」の応募を開始。
 「もっとも楽にラノベ作家になれる新人賞?」をキャッチコピーにし、ネット最大の小説投稿サイト「小説家になろう」とのタイアップを行なう。10代~20代前半の読者を対象にした作品を募集する。
 公式サイトの応募フォームから電子メールで応募できる。評価シートが付いてくるのが特徴。

出版業界の動向

・街の本屋の閉店が相次ぐ。
 東京・新宿の大型書店「ジュンク堂新宿店」が3月に閉店したのが象徴的。
 5月1日の全国の書店数は、1万4696店。昨年同月の1万5061店から365店が消えた。1日あたり1店が閉店した計算となる。
 この背景には、漫画喫茶、ブックオフなどの新型古書店、Amazonなどのネット書店、電子書籍の台頭という強力なライバルの存在があると考えられる。

・10月25日にAmazonが販売する電子ブックリーダーのKindleで自費出版できる、 Kindleダイレクト・パブリッシング日本版がスタートした。世界のKindleストアに電子書籍を販売でき、印税として売り上げの35~70%(条件による)が受け取れるというサービス。自費出版の敷居が低くなったと注目される。

新人賞

・集英社コバルト文庫のロマン大賞・ノベル大賞が紙の原稿だけでなく、オンライン投稿も受け付けるようになる。公式Webサイトから、必要事項とテキストデータを送信することで投稿完了となるシステム。
 2008年2月から始まったGA文庫大賞はプリントアウトした原稿を不要とし、テキストデータの入った記録媒体での応募受付を行っていたが、オンラインで応募原稿を受付を行ったのはこれが初めて。これによってラノベ新人賞に応募するための敷居がグッと下がった。
 同年、富士見書房のファンタジア大賞も紙の原稿の応募受付をやめて、オンライン投稿に切り替えた。公式Webサイトにメンバー登録し、テキストデータを送信することで投稿完了となるシステム。

・富士見書房のラノベ文芸部門がファンタジア大賞から独立して、ラノベ文芸賞が開始される。ラノベ文芸部門に多くのエントリーがあったのがその理由とされる。
 募集作品のポイントは、1冊読んだあと「登場キャラクターが好きになれる」ということ。

TRPGのリプレイ小説の復活

・2012年1月より星海社のサイトでTRPG「レッドドラゴン」のリプレイが公開される。プレイヤーは5人、ラノベ作家の奈須きのこ、虚淵玄、紅玉いづき、しまどりる、成田良吾である。
 舞台は二つの大国が冷戦状態にある世界。その両国の間に存在する島国、ニル・カムイが本作の舞台となっている。拮抗状態にあるその世界には七匹の竜が存在し、その内の一匹である「赤の竜」がニル・カムイに存在した。その「赤の竜」が原因不明ながら突如発狂し、複数の村を壊滅させる脅威と化した。プレイヤーたちは「赤の竜」を討伐する非公式部隊として集結することになる。
2013/02/05 by月冴ゆ

ラノベ作家集団によるアニメ脚本企画

・2012年10月~12月にかけて、謎の覆面作家集団goraが脚本を手掛けたオリジナルアニメ「K」が放送された。
 201X年の日本を舞台に、7人の「王権者」と呼ばれる異能者たちを中心に繰り広げられるミステリーとアクション満載のストーリー。
 アニメの前日譚となる漫画や小説が連載・出版され、最終回の直後には続編の告知もされた。
 また覆面作家の正体も放送直前に明らかにされた。
※()内は代表作のタイトル
1.古橋秀之(ブラックロッド)
2.鈴木鈴(吸血鬼のおしごと)
3.来楽零(哀しみのキメラ)
4.あざの耕平(BLACKBLOODBROTHERS)
5.高橋弥七郎(灼眼のシャナ)
6.壁井ユカコ(キーリ)
7.宮沢龍生(汝、怪異を語るなかれ)
2013/02/05 by月冴ゆ

2013年

レーベルの創刊

・2月26日、林檎プロモーションが『フリーダムノベル』を創刊。
 韓国産のライトノベルである『モンス☆パニック』を5月24日、日本で初めて刊行する。
 韓国では、ライトノベル人気が非常に高まっており、それがラノベの逆輸入という状況にまで発展した。

・4月25日、株式会社オーバーラップが『オーバーラップ文庫』を創刊。キャッチコピーとして“セカイはまだまだ面白い。君の日常を再構築(リビルド)するエンターテインメントノベル”を掲げる。MF文庫Jで刊行されていた弓弦イズルの人気作『IS<インフィニット・ストラトス>』の最新刊(8巻)が移籍してリリースされた。
 3月31日締め切りのラノベ新人賞、オーバーラップ文庫キックオフ賞の募集も前年より行なわれた。

・8月23日、メディアファクトリー(MF文庫J)がフロンティアワークスと共同して、30代~40代男性向けのエンターテインメント小説レーベル『MFブックス』を創刊。
 ゲーム、アニメ、漫画、ライトノベルに親しんで育ちながらも、社会に出て、そういったコンテンツから離れてしまった成人男性をターゲットとするキャラクターノベル。小説投稿サイト「小説家になろう」で累積PV数5170万を記録した『盾の勇者の成り上がり』を含めた3冊が同日、刊行された。

新人賞

・第1回オーバーラップ文庫大賞が開催される。大賞賞金300万円という高額賞金が目を引いた。
 応募方法は、Webサイト『オーバーラップ文庫大賞ONLINE』にメンバー登録後、マイページよりテキストデータを入稿するというシステム。紙での受付は不可とされた。

電子書籍新人賞

・11月、電子書籍出版社impress Quickbooksがライブドアブログと共同して、「ライトなラノベコンテスト」を開催。11月6日~2014年1月31日。
 ブログをラノベ新人賞のエントリーに使った初の試み。電子書籍のラノベ新人賞としても初の試みである。
 ライブドアブログを使って、小説発表用の新しいブログを開設。その後、ブログのカテゴリを「ライトなラノベコンテスト」に設定し、2014年1月31日までに3万字以内の小説を完成させればOKという仕組み。

2014年

新人賞

・集英社のスーパーダッシュ文庫が、第1回集英社ライトノベル新人賞を開催する。10代中盤~20代男性を想定読者とした長編小説を募集。4月25日が締め切り。
 大賞賞金300万円という高額賞金、Webからの原稿応募もOK、年2回開催、最終選考候補作は、すべて電子書籍出版が確約されるという大盤振る舞いだった。電子書籍の台頭、Web応募の一般化などがその背景にある他、電撃小説大賞(前年、第20回の応募総数6554作品)の一人勝ち状態を打破するため、大量の応募作品を集める狙いがあるのだと思われる。

・電子書籍プラットフォームを運営する株式会社パピレスが『第1回upppiライトノベルコンテスト~オフィスラブから異世界トリップまで! おしごとラブコメ大募集~』を開催する。募集期間は、2014年5月28日午前10時~2014年7月16日午前10時。電子書籍投稿&編集プラットフォーム『upppi』(ウッピー)に投稿された作品は誰でも閲覧可能であり、コンテスト期間中は読者の意見等を参考に作品の改稿も可能。作品表紙・挿絵を作者が付けることもOK。小説を複数人で共同制作することもOKという異例の新人賞となった。大賞賞金は10万円。入選作品は電子書籍配信される。

・1月8日よりファミ通文庫を擁するエンターブレインとWebサービス『pixiv』が提携して『次世代ボカロ小説コンテスト』を開催する。pixivにおいて小説投稿機能を使用し、規定のタグを付して小説を投稿することで、自動的に本企画への応募完了となる。優秀作品は、「ビーズログ文庫」「ファミ通文庫」「KCG文庫」よりボカロノベルアンソロジー短篇集として刊行される。

東京都の『青少年育成条例』初の規制

・5月、ライトノベルの大手レーベルを傘下に持つKADOKAWAから発売された漫画本「妹ぱらだいす!2」が、2011年に施行された東京都の青少年育成条例の新基準に基づき不健全図書に指定された。本作は18禁ゲームを漫画化したモノであり、近親相姦を賛美する内容だったのが、条例に抵触した。KADOKAWAは本作を自主回収し、Amazonでも販売が停止された。
 改正された都条例による不健全図書指定は、今回が初めてとなる。

ライトノベルの映画化

・6月6日ダグ・リーマン監督によるSF映画『オール・ユー・ニード・イズ・キル』が発表される。原作は、桜坂洋のライトノベル『All You Need Is Kill』(2004年12月18日刊行)である。主人公は異星人と戦う兵士であり、殺されると、出撃前日の朝にタイムスリップして生き返ってしまうという時間ループ物。
 ツンデレ美少女がマッチョな女兵士に変更されるなど、アメリカ人の嗜好に合わせて、キャラやストーリーが変更されている。日本人はロリコンで、アメリカ人はグラマー、マッチョが好きという嗜好がある。

角川とドワンゴの経営統合

・5月14日。ライトノベル界を牛耳る角川グループが、ニコニコ動画などで知られるIT関連企業ドワンゴとの経営統合を発表する。10月1日付で共同持株会社「株式会社KADOKAWA・DWANGO」を設立する。

レーベルの創刊

・7月、双葉社が『モンスター文庫』を創刊。

・8月、新潮社が『新潮文庫nex』を創刊。公式発表によるとライトノベルレーベルではないとのことだが、ラノベ作家を起用していること、キャラクターを主軸に置いた小説であることから、一般武芸とライトノベルのボーダーレーベルである考えられる。

・11月21日、集英社が『ダッシュエックス文庫』を創刊。『紅』『六花の勇者』といったスーパーダッシュ文庫の人気タイトルが移籍された。また、漫画雑誌ヤングジャンプで好評だった『テラフォーマーズ』のサイドストーリーがラノベ化されて刊行された。

漫画業界の動向

・9月22日、集英社がウェブコミック配信サイト、スマフォ・タブレット端末向けマンガ雑誌アプリ「少年ジャンプ+」を創刊。
 週刊少年ジャンプを始めとした集英社の漫画が電子書籍として1日平均5作品程度、無料で配信される。創刊の目的はデジタルの才能を探すためで、新人の発掘・育成を重視。紙媒体に興味が薄いネットユーザーを新しい読者として取り込みたいとしている。
 漫画界の最大手が、いち早く電子書籍で無料漫画を配信しはじめたとして、話題になった。

2015年

レーベルの創刊

・1月20日、集英社がオレンジ文庫を創刊。ライトミステリーを中心に、ホラー、SF、ラブロマンスなど様々ジャンルを取り扱う女性向けレーベル。一般文芸とライトノベルの中間のような作風で、これを「ライト文芸」ジャンルと称している。ライト文芸の定義とは「登場人物が魅力的であること」「キャラが立つこと」であるとオレンジ文庫編集長、手賀美砂子さんは語っている。

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