ライトノベル作法研究所
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  4. キャラクター同士の対立を描く公開日:2012/01/09

キャラクター同士の対立を描く

 小説の中には、必ず対立の構造を入れてください。
 人と人とが自分の目的を達成するために、ぶつかり合うのです。そこにドラマが生まれます。

 ラブコメだったら恋愛を成就させるために、敵に立ち向かったり、ライバルと競ったりしなければ、まずおもしろくありません。
 冴えない男の元に、数人の美少女がやってきて、ウハウハになるという物語は、軽蔑されながらもなぜか人気がありますでしょう?
 あれは、一見軽薄そうに見えますが、実は女性同士の対立や、それに振り回される男、という緊張感のある人間関係を構築しているので、おもしろく読めるのです。

 人間同士の対立がないところには、ドラマは生まれません。
 「燃える展開」というのは、主人公と同等以上の“敵”をもって確立される……
 これは小説に限らず、映画、漫画、アニメ、ゲーム、あらゆる物語作りで常識とされる手法です。

 対立する相手は、悪役だけとは限りません。
 思想的対極や、ライバル関係にあるキャラクターを敵味方双方に配置し、これを対比、争わせることで、それぞれのキャラクターの個性や主張が強調されます。
 そうすることで、ストーリーを盛り上げられるだけでなく、キャラクターの魅力も最大限に引き出すことができるのです。

 例えば、少年ジャンプ黄金時代を築いたスラムダンクという漫画があります。
 この作品は主人公の桜木花道が、好きな女の子の気を引くために、バスケット部に入部してしまうところから始まります。最初は、不純な動機だったけれど、バスケットボールのおもしろさに目覚めて、全国大会を目指すという話です。
 桜木花道は、同じチームの流川楓という同じ一年生のスーパールーキーに常にライバル心を燃やします。
 花道の好きな女の子が流川のことが好きだったからという理由もありますが、花道は自分を天才だと信じている自信家であるため、流川よりどうしても活躍したかったのですね。

 敵のチームにもすごい選手が出てきて、当然、彼らとも対立するわけですが、同じチーム内でのライバル関係というのも常に描かれています。
 桜木VS流川だけでなく、桜木VS赤城、赤城VS三井、という対立と葛藤もあります。

 「コイツには負けたくない!」という感情が、ドラマを盛り上げてくれるわけです。

 他にも例えば、燃えヒットメーカーと呼ばれる人気シナリオライター虚淵玄氏は、ライバル的存在を、主人公・ヒロインどころかサブキャラクターに至るまで配置し、これらを物語上で常に戦わせてきました。
 他のキャラとライバル関係という強力な相関関係を持っているが故に、各キャラは孤立することなくストーリーに参加することができ、脇役でありながら場面場面によっては、主人公やヒロイン以上の存在感を示せています。

 彼が脚本を手がけた代表作の一つであるアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』では、「他者のためだけに魔法を使う」ことを信条とする美樹さやかと「自分のためだけに魔法を使う」ことを信条とする佐倉杏子というキャラクターが、ライバル関係となって激しくぶつかり合います。
 この関係故に、彼女たち二人はヒロイン級の存在である暁美ほむら、主人公、鹿目まどかにも劣らぬ存在感を発揮しています。

 戦隊ヒーローものなどでも、お約束として敵の幹部同士がいがみ合っていますよね。
 あれは、やっぱり燃えを生み出す上で、すごい効果があるわけですよ。

 しかし、残念ながらアマチュアの小説書きさんの中には、対立構造の重要性を理解されてない方が、かなり多くいます。
 例えば恋愛物だったら、ライバルや二人を引き裂こうとするようなキャラなどおらず、ただ恋人同士が仲良くイチャイチャして終わりというのでは、まったくおもしろくありません。
 スポーツや格闘物でも、ただ大会に優勝して終わりじゃなくて、本気でぶつかり合えるライバルが必要なのです。
 おそらく、対立や争いなどない理想の世界を描きたい、平和な世界を描きたい、という欲求が内にあるのだと思いますが、読者に楽しんでもらいたいと思ったら、そういった自己満足から抜け出さなくてはいけません。

 いくら世界観を作り込もうが、設定を練ろうが、格好いい主人公だけでは燃えられないのです。
 彼(彼女)の魅力を最大限に引き出すのは、対立関係にあるライバルです。

 物語を盛り上げたければ、登場人物同士の対立を描くようにしましょう。

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