ライトノベル作法研究所
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  4. 小説の得意分野、苦手分野公開日:2012/04/11

小説の得意分野、苦手分野

 ストーリーを考える上で、小説という娯楽媒体の持つ特徴を知っておくと有利です。
 小説には得意分野と苦手分野が存在します。

小説というジャンルに向いている要素

・登場人物の心理描写。心理的葛藤。
・推理。謎解き。

 小説は登場人物の心を描くのに最も適したジャンルです。
 漫画、アニメに対する最大のアドバンテージと言えます。
 登場人物の内面の動きを、つぶさに表すことができるので、心理的な葛藤や苦しみなどを描くと共感しやすくなります。

 また、推理小説というジャンルが確立されているように、謎解きを行なうのにも適してします。
 これは登場人物の思考を地の文で、そのまま表現できるからです。
 アニメの場合だと、途中で視聴者が立ち止まって、じっくり内容を噛みしめて考えることができないので、謎解き要素はごく簡単なものにせざるを得ず、謎解きの醍醐味も十分に味わえません。
 漫画の場合は、コマの中に文字をたくさん入れると、読みにくくなるという構造的な欠陥を抱えています。
 アニメや漫画に比べて、小説は謎解き要素を入れるのに非常に適しているのです。

 ライトノベル界においては、かつてミステリー専門の富士見ミステリー文庫(2000年11月から2009年3月まで)というレーベルが存在し、このレーベルから刊行された桜庭一樹さんの『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』が高い評価を受けて、一般文芸書籍としてハードカバー化される(2007年2月)など話題を呼びました。

 ただ、同レーベルが約8年半で頓挫したのは、「読みやすさ」が売りのライトノベルと、読者に「考えさせる」ミステリーは相性が悪かったのが、一因だと考えられます。

 「Dクラッカーズ」「東京タブロイド」「GOSICK―ゴシック」といった人気作品が、富士見ミステリー文庫より刊行されていますが、萌えやファンタジー、冒険活劇を絡めた、ライトなミステリーです。
 特に「GOSICK―ゴシック」については、主人公とヒロインの会話の掛け合いのおもしろさが売りであり、ミステリーよりも、ラブコメ、萌え要素の方が強いです。本格ミステリーというのは、ライトノベルではウケないものだと、認識しておきましょう。

小説というジャンルに向いていない要素

・格闘、アクションシーン。

 カッコイイ戦闘シーンなどは、視覚に訴える要素のない小説においては表現するのが難しいです。
 この点では、漫画、アニメに比べて格段に不利となります。
 その証拠に、漫画には格闘漫画というジャンルが確立されていますが、小説には格闘小説というのはあるものの、その数は非常に少なく、一ジャンル化されるほどの勢力にはなっていません。
 このため、バトルの連続となるようなアクション主体の作品にする場合、登場人物の心の葛藤などの要素を取り入れて盛り上げる必要があります。

 バトルその物ではなく、その戦いが登場人物にとって、どのような意味を持っているかを描き出すのです。

 例えば、川原礫のヒット作『ソードアート・オンライン』(2002年)では、主人公がヒロインの女の子を巡って、決闘をします。女性を獲得するための男性同士の決闘というのは、昔からのオーソドックスな展開ですが、彼女を手に入れる、あるいは守るための男の意地をかけた戦いであるので、緊迫感が増しています。

 格闘技小説の代表作は、夢枕獏の『餓狼伝』です。
 この作品は作者の豊富な格闘技知識と、それを表現する文章力に支えられています。
 もし戦闘シーンそのもので魅せる小説を書くのであれば、武器、格闘技などへの深い造詣と、高い文章力、単純な展開の繰り返しにならない構成などが必要になります。

ライトノベルが、漫画、アニメに比べて、もっとも不利な点

・文章だけでストーリーを伝えなければならないので、理解しにくく取っつきづらい。

 小説は文章だけで構成された娯楽媒体であるため、内容を理解するための労力が、漫画、アニメに比べて格段に大きいのが欠点です。
 このため一人称と三人称を混ぜて使ったり、コロコロと視点が変ったり、過去に時間を巻き戻す時点移動を作中で何度も使うと、読解の労力が大きくなり、途中で投げられてしまう可能性が高くなります。
 また、わからない漢字や聞いたこともないような言い回しなどが出て来たら、それだけで内容の理解が阻害されます。例えば、「虚心坦懐」「韜晦」といったような、日常ではまず使わないような言葉を使うと、読者によっては、そこで躓いてしまう可能性があるわけです。

 このため、誰もが理解できるような、なるべくわかりやすい構成、文章が求められます。特にライトノベルは、中高生をメインターゲットとしたものなので、中学一年生でも理解できるように書かなければなりません。
 優れた作品とは、構成、文章が、わかりやすいように工夫された作品であることも頭に入れておきましょう。

 人気のあるライトノベル作家は、『スレイヤーズ』の神坂一、『ゼロの使い魔』のヤマグチノボル、『バカとテストと召喚獣』の井上堅二のように、非常にわかりやすい口当たりの良い文章を書ける人ばかりです。
 玄人をうならせる高尚な文章などというのは、一般文芸小説の作家が書けばよいのです。

ライトノベルと相性の悪いジャンル

・本格ミステリー、ハイ・ファンタジー、ハードSF。

 ライトノベルはメインターゲットが中高生なので、小難しい内容の物は受け入れてもらえません。
 最近(2012年4月)では、ライトノベルの読者層が縦に伸びてきて、二十代後半から三十代前半の人も読むようになっていますが、社会人は忙しくて疲れいる上、刺激の強い娯楽に囲まれまくっているので、手軽に読めて楽しめる物、頭をあまり使わなくても良い内容でないと基本的にダメです。

 ライトノベル(男性向け)が学園物ばかりであるのは、世界観などの説明が最小限で済み、簡単に物語の中に入っていけるというのも、大きな要因です。

 逆に、やたらと凝った魔法の理論や地理、歴史を理解しないとストーリーが楽しめないハイ・ファンタジーや、難解な専門用語を連発するハードSFなどは、読んでいて疲れるので、敬遠されます。
 あくまでライトノベルとは、「軽さ」「読みやす」さが売りの小説なのです。

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