ライトノベル作法研究所
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  4. 出会い公開日:2012/01/09

恋に落ちる男女の効果的な出会わせ方

 おもしろいストーリー作りのために欠かせない恋愛要素。
 これを作る上で、おそらく一番頭を悩ませると思うのが、恋に落ちる男女の出会いシーンです。
 どんな分野においても第一印象というのはとても重要なものです。

 この出会いシーンがロマンチックかつインパクトがあるものであるかが、その後のラブロマンスのおもしろさを左右します。

 いわゆる、運命的な出会いというヤツをどのように演出するかですね。
 さて、その男女の出会いシーン、具体的にどうすれば一番効果的なのでしょうか?
 ずばり、お答えしましょう。

 男女の出会いは、男性が女性のピンチを救うという形にするのがベストです。

 ライトノベルだと、『とある魔術の禁書目録』(2004/04)に代表されるようなボーイ・ミーツ・ガール物によく見られます。
 この物語は、魔術師に負われて主人公の家のベランダに落ちてきた少女を主人公が助けたことで、話が始ります。

 この出会いの形は、男女双方の持つ本能的な願望を満たしてくれます。
 そのため、読者が男性であっても女性であっても、深い共感を呼ぶことができるのです。 

 まず、男は誰しもヒーロー願望を持っています。
 大活躍して人から賞賛されたい。名誉を得たい。女の子から熱い声援を受けたいという願望です。
 そのため、かわいいお姫様のピンチを颯爽と救って「ありがとう、○○様。チュ」とかされると、宇宙の果てまで飛んでいってしまいそうなほど喜びます。

 また、女の子は誰しもお姫様願望を持っています。
 男性から大事にされたい。愛されたい。特別な存在として扱って欲しいという願望です。
 そのため、二枚目の白馬の王子様にピンチを救われて、やさしい言葉をかけられるとトキメキ回路は大スパークです。
 つまり、この出会い方は、男女双方をハッピーな気持ちにさせることができるのです。なにより、

 こういう発端部にすれば、 そのまま2人の間を恋愛関係に発展させるが非常に楽です。

 かわいい女の子を絶妙なタイミングで救った男は、十中八九、その娘に興味を持ちます。
 その後も、危険な目にあう可能性のある女の子を、放ったままにできる男なんていますか?
 彼は持ち前の正義感を発揮し、その娘にまつわる事件に何かと首を突っ込みたがるでしょう。
 そして、その過程で、その正義感を恋愛感情に変換させるのは簡単です。
 『とある魔術の禁書目録』も、この心理を活用して、主人公に事件に首を突っ込ませています。
 恋愛関係にはなかなか発展しませんけどね。

 また、男に危機を救ってもらった女の子は、強い感動を受けます。
 「身をていして私を守ってくれるなんて、なんてやさしくて頼もしい人なんだろう!」という感じです。
 そして、その情動は、これまたたやすく恋愛感情に昇華できます。

 男性が女性のピンチを救うという形での出会いこそ、ラブロマンスの王道です。
 あなたもこの栄光の街道を驀進してみてください。

●逆パターン

 悲恋として有名なアンデルセン童話の『人魚姫』は、この逆で、主人公の人魚姫が嵐の晩に難破した船から溺死寸前の王子を救いだし、恋愛感情を抱きます。
 女性が主人公の作品では、このように女性はただ男性に守られるだけの存在ではなく、自らの判断で積極的に動いて、男性の窮地を救ったりする方が、ウケが良いです。
 ライトノベルだと、『灼眼のシャナ』(2002年11月)が該当します。ヒロインが主人公を助けて、彼を護衛するという話です。

最悪な第一印象から恋愛に発展させる 

 前項とは反対に、出会いそのものは最悪な形であっても、その後、徐々に惹かれ合って恋愛関係に発展させるパターンがあります。
 少女漫画では王道とされる手法です。

 ライトノベル界でも人気作家ヤマグチノボルの『烈風の騎士姫』では、ヒロインのカリーヌが、後に初恋の相手となるサンドリオンに決闘を仕掛けて事実上敗北し、お互いが険悪な状態のまま、一つ屋根の下で暮らすことになります。
 最低、最悪の出会いを恋愛関係に転換する手法はいくつかありますが、

 セオリーとしては、「嫌な奴がたまに良いことすると過剰に好感度がアップする」という、現実にもよくある現象を利用します。

 「普段は悪人なのに、災害が起きたときに助けてくれた」とか、「いつもは厳しい先輩に優しくされた」とか、普段とのギャップに大きく印象を左右されてしまうことは現実にもよくあり、キャラクターの心理がこのように動いたとしても、読者は自然に受け入れることができるのです。
 敵対的な関係にある男女も、同じ心理を利用して恋愛関係に持ち込むことができます。

例1
「見ず知らずの男女が道ばたで偶然ぶつかり、唇同士が触れ合ったことから険悪な関係がスタート」
 一昔前のラブコメの王道パターンですね。
「嫌な奴だと思っていた相手が、雨の中で捨て犬にミルクを与えている場面に遭遇する」
 ちゃんと話してみれば、もしかして意外といい奴なのかも。と印象が好転し、恋愛感情に結びついていきます。

例2
「敵対する組織に所属する男女が立場の違いから戦い、片方あるいは双方が相手を憎む関係からスタート」
 ほぼ関係の改善は不可能そうに見えますが、協力し合わなければならない状況に追い込むことで、これが可能になります。
「共通のピンチに陥り、敵対する異性とやむをえず手を組んだが、協力する過程で相手の良い部分が見えてしまう。嫌っていた相手なのに、惹かれていく自分に気付く」

 このように、マイナスの関係を逆転させる手法も、大いに使われ定着しています。
 最初の関係が最悪であった方が、お互いの仲が深まっていく過程がドラマチックになるので、平凡な出会いより、はるかに効果的です。
 ここではあえてお約束のシチュエーションを記号的に使用していますが、アレンジを加えることで、いくらでも応用がききます。

 どのような出会いを演出するにしても、「大筋ではこういう流れにしよう」という方針を決めておき、後から肉付けを行ってみましょう。

 途中で方針がブレてしまうと、読む側に与える印象がぼんやりしたものになりますし、書く側の労力も脹れあがってしまいます。

●補足例

 出会いが最悪な形の恋愛として、人気ノベルゲームの『月姫』があります。
 この物語では、主人公がヒロインである吸血鬼をバラバラにして殺す、という出会い方をします。
 その後、復活したヒロインが、彼を探し出して「私を殺した責任とってもらうからね」と迫ります。
 一度殺されたダメージで大幅なパワーダウンをしてしまったので、敵を倒すのを手伝え、という訳です。
 実は、ヒロインの方が圧倒的に力が上であり、主人公は特殊な力で不意打ち的に彼女を殺したにすぎないので、これに従います。
 その後の共闘の中で、お互いに惹かれあっていくという経緯を取ります。

 嫌な相手だけど、能力的には頼りになるので、共通の敵を倒すために協力する、というパターンですね。これは恋愛だけではなく、最初は敵だったキャラが味方に加わる場合にも使用される黄金パターンです。

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