主人公を徹底的に活躍させよう
主人公を物語の中心に添えて、徹底的に主人公が活躍するストーリーを作りましょう。ここぞ、というところで活躍するのは必ず主人公であり、主人公が物語を引っ張っていくのです。
例えば、大ヒット漫画『ONE PIECE』（ワンピース）では、各長編パートのラスボスを倒すのは必ず主人公のルフィです。アラバスタ編のラスボスである王下七武海クロコダイルをルフィではなく、サンジやチョッパーが倒してしまったら、変ですよね？
主人公の仲間や味方は、主人公が目的を達成するのを手助けしますが、目的達成を妨害する敵（問題）を打ち破るのは、必ず主人公でなければならないのです。
サッカーに例えなるなら、主人公はゴールを決めるエースストライカーです。脇役たちは、主人公にパスを出しますが、試合を勝利に導くゴールを決めて注目されるのは必ず主人公でなければなりません。
川原礫の大ヒットライトノベル『ソードアート・オンライン』（2009年4月刊行）の第１巻のクライマックスでは、主人公のキリトは6000人もの仲間の命を背負ってラスボスと一騎打ちをします。彼は痛恨のミスからあわや破れそうになりますが、ヒロインのアスナが身代わりになって、彼を守ります。
続く攻撃でキリトも致命的な重傷を負いますが、アスナが残した細剣を使ってラスボスに最後の反撃をして、打ち倒します。これによって、6000人の仲間とアスナの命を救うことができました。
まさしくお手本と言うべき、展開ですね。
ヒロインが主人公を助けて、主人公がラスボスを倒します。ヒロインには助けられますが、最終的には彼女を救出して英雄になる。というものです。
創作初心者が犯してしまいがちな間違えとして、ラスボスを主人公ではなく、主人公の仲間や師匠が倒してしまうようなストーリーを作ってしまうことが挙げられます。
その方がリアリティはあるかも知れませんが、それじゃ主人公は何のために存在しているのかわかりません。
読者は主人公になりきって物語を楽しむので、主人公が要所要所で活躍する話にしないとおもしろくないのです。
大人気ゲームシナリオライターであり、ライトノベル作家でもある奈須きのこは、『月姫読本 Plus Period』（2004/10）で次のように語っています。
「主人公はやっぱりプレイヤーの分身。自分がそのゲームの世界で主人公として活劇したいならば、あくまで物語の中心は自分であるべきだ、と。
だから各ヒロインのストーリーに付き合いながらも、それを左右する者、その世界の中心になるのは自分でありたい」
引用『月姫読本 Plus Period』：奈須きのこ
奈須きのこの作風はこの哲学に現れている通り、主人公を徹底的に活躍させ、主人公を中心に物語が進んでいくものです。作品の顔となるべきヒロインはいますが、彼女の運命を左右するのは主人公であり、ラスボスを打ち倒すのも主人公です。
彼がシナリオを担当した伝奇活劇ビジュアルノベル『Fate/stay night』（2004年1月発売）は、ヒロインの方が主人公より強いにも関わらず、最後に待ち受ける強大な敵に立ち向かうのは、まだ自分の能力を完全に使いこなせない未熟な主人公です。
そうすることによって、主人公に自分を投影している読者は自分が世界の中心となって活躍している快感を得られるという訳です。
主人公が活躍する話を作るには、簡単なコツがあります。
一つは、ラスボスを倒すなど、目的達成のための最終的な問題を解決するのは必ず主人公であること。
もう一つは、なるべく視点を主人公に固定することです。
ライトノベル新人賞の下読み経験者であるジジさんは、ライトノベル作家志望の質問に以下のように答えています。
■質問
文章や人称について、何か注意すべき点などがあればお願い致します。
●シジさんの回答
一人称はもちろん、三人称でも主人公に視点をきっちり固定しましょう。脇キャラの心情を掘り下げたくなる気持ちを抑えて、主人公とヒロインの心情エピソードに集中しましょう。これを守るだけでクオリティがぐっと上がります。
視点を主人公に固定することによって、自然と物語の中心に主人公がいるようになり、主人公が活躍するストーリーが作れるという訳です。
他のキャラに視点を移してストーリーを展開すると、物語の軸が主人公から離れてしまうので、主人公の存在感が希薄になってしまうのです。
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