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  4. 「キャラの魅力を魅せる」のがシナリオ公開日:2014/06/25

「キャラの魅力を魅せる」のがシナリオ

 キラークィーンさんのコラム 2014年06月24日

 僕の経験では、ストーリー展開が広げられない場合、以下の点に気を付ければおおよそ解決します。

1.展開の可能性を狭める設定がないかチェックする。

 初心者にありがちなミスとして、最初に設定から決めて考えるせいで、後の世界観やストーリー展開の広がりの可能性をかえって狭めてしまっているケースというのがあります。
 例えば長続きしている人気漫画を見ればわかりますが、全体的に初期の方の設定は良くも悪くもかなり小出しなことが多いです。これの一つの理由は、当然、後の展開の可能性を広げられるようにするためです。
 逆に、「束縛的な設定」を初期の方でがっちり固めてしまうのは、一見わかり易い様で、実はあまり得策ではありません。(もっともあまりにもあやふやすぎると「世界観のイメージが見えてこない」という現象が起きるので、さじ加減も重要ですが……。)

 僕が初めて計画的に書いた小説は、設定や展開を書く前にあまりにも固めすぎたせいで、いざ書き終えてみるとかえってつまらない物になってしまっていました(他の人に訊いても、このようなケースはかなり多いようです)。
 その次に小説を書いたときは、この反省を踏まえ、敢えて初期の方では先の展開を深く考えずにキャラを動かしてみるという実験を行ってみたのですが、今度はかなり完成度の高い小説が完成し、満足しました。以降、僕は実はこの方法で小説を書いています。
 しかし、この方式で作られた小説がうまく進んでいくには、重要な条件があると思います。それが次の注意点です。

2.キャラの動機がしっかりしているかチェックする

 全ての(或いは、「全ての」とまで言わずとも、多くの)キャラがきっちりとした動機、独自の目的意識を持って行動していれば、おのずと話の方向性は定まってきます。
 あとはどのキャラにおいても、この目的を達成させるための条件を整理しておき、それに必要となるイベントやアイテム(この場合での「アイテム」というのは、RPG的な「魔法の杖」、「聖なる剣」などといった物に限らず、話を動かす道具全般のことを指します)などを盛り込んでいけば、勝手にキャラが動いてくれるわけです。

 こうすれば、確実に、キャラの魅力が光るシナリオを作ることができます。また、いわゆる「オチ」や「どんでん返し」といった物も、「キャラの動機」から発想していけば、おのずと相応しい物が出来上がるでしょう。

 よく、「キャラに好き勝手やらせた結果話が破綻した」というケースを聞くことがありますが、こういったものの大半は恐らく、「キャラの動機がしっかり固まっていなかった」、「キャラの動機が世界観と合わなかった」、「イベントやアイテムがキャラの動機と関係ないせいでグダグダになってしまった」のいずれかと考えてよいでしょう。きちんと計算してキャラを動かす限り、そういったことは起こりえませんが、その場のノリや発想で話を進めると意外とどれも陥りやすいミスです。気を付けましょう。

 一つの例を作りましょう。例えば、「強大な敵に追われているヒロインを、命を懸けてでも守る」という目的の主人公を描きたいのなら、

・主人公とヒロインのそれぞれの境遇
・主人公とヒロインとが出会う過程、及びそれに必要な話の展開やアイテム
・主人公がヒロインを守りたいと決意する過程、及びそれに必要な話の展開やアイテム
・ヒロインが敵或いは敵組織に追われている理由/敵或いは敵組織の動機
・主人公が敵を倒す過程、及びそれに必要な話の展開やアイテム
・主人公とヒロインの関係がどう変わってゆくか
・最終的な結果として、初期の状態から何が変わるか(話の終着点)

 ここまではおおよそ誰でも必須と分かるでしょうが、その上で、キャラをどうやって「魅せる」かを考えます――

・ヒロインに、「命を賭して守るに値する魅力」を与える、具体的な策中の展開・エピソード(なお、もう一つ初心者にありがちなミスとして、ヒロインの魅力を「設定資料」にとどめてしまい、作中で十分印象的に描写できないという物があります。
 例えば「心優しい性格」と設定を決めるだけでは不十分で、実際に心優しいことをしているシーンを入れなければなりません。印象的にするとなお可。)

・ヒロインは守られているわけだから、読者に「一方的に主人公に助けてもらってる」、「主人公を利用してる媚女」と思われて嫌われないように、ヒロインが自らが主人公にかけている迷惑を自覚し、主人公のために何か頑張ってしてあげるシーンも入れる。

・主人公が本当に命がけで精一杯戦っていることを表し、カッコよさを演出するシーン(例えば、強大な敵相手に、傷だらけ、血だらけになってでも戦う……ぐらいのことでなければ、「必死さ」が伝わりません)

 例えばですが、「主人公が、ボロボロになってでもなんとか強敵に勝利して、血だらけで、『もう大丈夫だぞ』みたいにヒロインに力なく笑いかける」→「ヒロインが抱き着いて大泣きする」……とかみたいなシーンを上手く描き切ることができれば、読者の大半は「主人公カッコいい!!」と思ってくれる筈です。

 こういったレベルまで考えてゆくと、シナリオが一気に、勝手に完成してゆくのが分かるでしょう――要は、「キャラの魅力を魅せる」のがシナリオなわけですから。更にその作品の世界観と絡めて、ブレインストーミン式で発想を広げていけば、いくらでも応用は効きます。

 この発想法を使い始める時は、まずは練習のつもりで、主人公などの主要キャラクターの動機や目的を中心に話を展開させましょう。

 慣れてきたら、他のキャラの動機もこれと絡め合わせる形で、対立させたり共闘させたり、別ベクトルで行動させたり、色々と話を膨らませていきましょう。キャラの魅力が見事に発揮された、素晴らしいシナリオが完成するはずです。

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