ライトノベル作法研究所
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  4. 数字で強さを明示する公開日:2014/09/12

数字で強さを明示する

 ライトノベルでは、「わかりやすさ」が最重要要素の一つです。数字を使って強さを明示すると、それぞれのキャラクターの強さのランクが一目でわかるようになります。
 またエンターテイメントにおける快感とは、弱い者が強い者に打ち勝つことによって生まれます。これはラブコメでも同じでして、本来ならモテないオタクキャラや非リア充が美少女にモテるから、おもしろいのです。

 敵が強ければ強いほど、主人公が不利であればあるほど、この戦力差を覆して勝った時の快感が増します。

 数字で強さを明示すると、主人公と敵との戦力差がどれほど開いているのか一目瞭然になるというメリットがあります。
 鎌池和馬の大ヒット作『とある魔術の禁書目録』(2004年4月刊行)では、登場する超能力者の強さをレベル0からレベル5までの6段階の強度に分けています。主人公の上条当麻(かみじょうとうま)は、学園都市から無能力者(レベル0)の判定を受けています。

 彼は第3巻において、180万人の超能力者の内7人しかいないレベル5の中でも最強の一方通行と戦います。一方通行は幻とされるレベル6に進化する実験の途中であったので、これは絶望的とも言える戦力差であることがわかります。
 これをどう覆すのか? 上条の唯一の特技である幻想殺し、あらゆる魔術・超能力を打ち消す右手をどう活かして勝つのか? という部分に手に汗握る緊張感や、次の展開が知りたいという好奇心が生まれるのです。

 井上堅二の大ヒット作『バカとテストと召喚獣』(2007年1月29日刊行)では、学園の生徒達は成績順にF~Aクラスに分けられています。主人公の吉井明久(よしい あきひさ)は、学園最高のバカで、落ちこぼれが集まるFクラスに所属しています。
 クラス名となっているアルファベットで強さのランクが一目瞭然に示されていますね。

 吉井明久は、好きな女の子のため、学園最強のエリート集団Aクラスに「試験召喚戦争」で戦いを挑みます。これは召喚獣でクラス対抗バトルするというものですが、召喚獣の強さはテストの結果で決まるため、Fクラスは圧倒的に不利です。

『Bクラス 真田由香 VS Fクラス 吉井明久
 数学   166点   VS 51点       』
引用・『バカとテストと召喚獣』1巻 著者:井上堅二

 バトルシーンでは、このように対戦者の氏名と所属クラス、テストの点数が表示されます。「テストの点数=召喚獣の強さ」なので、主人公がどれほど不利な戦いをしなければならないのか、一目で理解できます。
 これを悪知恵でどう覆していくのか? 吉井明久の召喚獣の扱いに慣れているという利点をどう活かして勝つのか? というのが『バカとテストと召喚獣』の醍醐味です。

 『とある魔術の禁書目録』と同じく、圧倒的に弱い者が、力を合わせ、特技を活かし、知恵を絞って最強の存在に一泡吹かせるから、おもしろいのです。

 この数字で強さを明示するというのを始めたのは、世界で累計3億部を売り上げた漫画『ドラゴンボール』(1984年~1995年連載)です。ドラゴンボールで、もっとも人気の高いサイヤ人編・フリーザ編では各キャラクターの強さを戦闘力という数字で明示しました。スカウターという機械で相手をサーチすると、戦闘力が数値化されるのです。
 主人公らの宿敵として登場したフリーザ様は、以下の様な明言を残しています。

「私の戦闘力は53万です…ですが、もちろんフルパワーであなたと戦う気はありませんからご心配なく…」

 サイヤ人編がスタートした時の主人公の戦闘力は416、サイヤ人編のボスだったベジータは1万8千だったので、どれくらい開きがあるのか、どれくらい圧倒的なのか一目でわかります。
 このように数値で圧倒的に上回る敵に挑んで勝つから、おもしろいのですね。
 数字で強さを明示するという方法、ぜひ活用してみてください。

○オマケ例
 弓弦イズルの大ヒット作『IS〈インフィニット・ストラトス〉』(2009年5月刊行)では、登場する超兵器ISの強さを、第一世代、第二世代、第三世代、第四世代と、数字で示しています。世代を経てバージョンアップするごとに性能が飛躍的に増しており、主人公の機体には、まだ机上の空論の存在である第四世代の技術が使われている、という設定になっています。これによって、主人公が特別な存在であるという快感を生み出しています。

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