ライトノベル作法研究所
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  4. 謎は危機と結びつける公開日:2014/09/18

謎は危機と結びつける

 物語の中に登場する謎は、主人公、および主人公の愛する者の危機に繋がっていると、おもしろくなります。
 読者は主人公になりきって物語を楽しみます。『主人公=読者』です。読者を物語に引き込むためには、この謎を解かなければ、主人公(自分自身)が危ない、という危機感を抱かせるのが効果的なのです。このスリルは読者自身が謎を推理し、解き明かすことで安心感・解放感を得るという参加型ゲームとしてのおもしろさを生み出します。

 例えば、大ヒット漫画『進撃の巨人』(『別冊少年マガジン』2009年10月号より連載)がおもしろいのは、謎と主人公の危機を結びつけることを徹底的に行なっているからです。

 『進撃の巨人』の世界では、人間を食べる意思疎通不能の怪物『巨人』が世界を席巻し、人類は三重に築かれた城壁「ウォール・マリア」、「ウォール・ローゼ」、「ウォール・シーナ」の中に狭い国を築いて暮らしています。
 約100年、城壁のおかげで平和な暮らしができていましたが、城壁を越える大きさの超大型巨人が出現し、「ウォール・マリア」に穴が開けられ、人類は「ウォール・ローゼ」にまで撤退を余儀なくされます。

 超大型巨人は何も無いところから突如出現し、また煙のように消える、謎の存在です。いつ出現するのかもわかりません。他の巨人とは明らかに異なるこの巨人の謎を解かなければ、人類は絶滅させられてしまいます。
 謎と、主人公、及び主人公の愛する人々の危機が結びついているのです。

 物語が進むと、人類を守ってきた城壁は、実は超大型巨人が硬質化して、変化したものであることが判明します。どうして壁の中に生きた巨人が埋まっているのか? 巨人と人間の関係とは何なのか? 壁の中の巨人はいつ活動を再開するかわからない、といった恐怖が提示されます。
 この謎を解かなければ、人類はいつ滅亡するかわかりません。
 謎と、主人公、及び主人公の愛する人々の危機が結びついています。

 さらに物語が進むと、「ウォール・マリア」に穴を開けた超大型巨人は、実は主人公の仲間として一緒に戦ってきた調査兵団のベルトルトが変身した姿であることが判明し、主人公は彼らに拉致されます。ベルトルトは壁の外の世界からやってきた人間で、壁の中の人類を全滅させることを目的にしていることがわかります。
 壁の外にも人間が暮らしている国があるのか? なぜベルトルトの所属する集団は、主人公らの国をそこまで憎んでいるのか? 主人公を拉致して、どうする気なのか?
 謎と、主人公、及び主人公の愛する人々の危機が結びついています。

 他にも大ヒットライトノベル『鋼殻のレギオス』(2006年3月刊行)の第5巻、第6巻のストーリー展開でもこのテクニックが使われています。世界の謎に迫る第二部の導入部分です。

 地上が汚染され、汚染獣という人を食べる怪物が跋扈する世界で、人々は電子精霊という謎の存在に制御される「自律型移動都市(レギオス)」の上で生活しています。レギオスは、汚染獣を避けるために大地を移動し続けています。
 汚染獣によって滅ぼされた都市に宿っていた電子精霊は、性質を変化させた『廃貴族』と呼ばれる存在になります。

 主人公レイフォンの都市ツェルニは、廃貴族が機関部に入り込んだことで、汚染獣の群れの中に自ら飛び込んで行くという暴走状態になります。これを止めるべく機関部に入り込んだヒロインのニーナは、廃貴族に取り憑かれ、行方不明になってしまいます。
 主人公と主人公の愛する者(仲間)の危機です。
 ここで廃貴族をレイフォンの故郷である槍殻都市グレンダンの女王が欲しがっていること、廃貴族に憑依されると汚染獣に対抗するための強い力が手に入ることが示されます。 電子精霊、廃貴族とは何か? という謎が提示されるのです。
 この謎は、都市の暴走と、愛する者の失踪という危機に結びついています。

 さらに暴走状態に陥った都市に、人語をしゃべる強力な汚染獣が襲来し、「足を止め群れの長は我が前に来るがよい」と告げます。レイフォンはこの汚染獣に対して、勝てないと直感します。
 主人公及び、主人公の所属する都市のさらなる危機です。
 汚染獣とは意思疎通ができないというのが常識だったので、ここで汚染獣とは一体何か? という謎が提示されます。
 汚染獣との交渉に失敗すれば、都市は滅亡するので、彼らの価値観や存在意義を理解せねばなりません。

 このように『鋼殻のレギオス』においても、謎は主人公、あるいは主人公の愛する者の危機に繋がっています。
 謎というのは、ただ散りばめれば良いのではなく、この謎を解かないと、主人公やその愛する者が危ない! という危機感とセットになっていることで、謎を解き明かせねばという動機を読者に与え、物語に引き込むことができるのです。

○オマケ例
 ミステリーの王道として、外部との連絡が絶たれた雪山の山荘に主人公とその仲間、一緒に居合わせた旅行者が閉じ込められ、連続殺人事件が起こる、というのがあります。
 殺人鬼が同じ山荘にいるということで、閉じ込められた人々は疑心暗鬼になり、主人公と主人公の愛する者にもいつ災いが降り掛かってくるかわからない、という緊迫した状況になります。
 事件の謎と危機を結びつけることで、早くこの謎を解かねばという切実さ、ドキドキ感が生まれるのです。

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