吸血鬼、エルフといったファンタジーでお馴染の種族は人気がありますが、それ故に先例がたくさんあるため、既存作品と被ってしまう危険性が大きいです。
吸血鬼やエルフが出てきただけで、もうウンザリといった反応をされることもあります。
私はラノベ作家のUNOさんが主宰するオフ会で幻狼ファンタジアの編集者さんに、自作したプロットを読んでもらったところ、
「エルフが出てくる時点でアウトです。
エルフの設定もトールキンの指輪物語やロードス島戦記の内容から、一歩も出ていない。
もし、こういった異種族を出したいなら、まったく新しい種族を一から自分で構築して、名前も違ったものにしないとダメです」
と指導されました。
吸血鬼に関しても『月姫』『ヘルシング』『ヴァンパイアハンターD』『トリニティ・ブラッド』といった人気作品で題材として取り上げられており、これらを上回る斬新さを求められるため、非常に難易度が高いです。
実際に『トリニティ・ブラッド』(2001年4月刊行)は、元祖吸血鬼物ライトノベルである『ヴァンパイアハンターD』の影響を受け、世界観がそっくりでした(実際に読み比べてみると、相違点は宗教的要素や組織的要素くらい)。
また宗教的要素が、ちょうど同時期に連載中だった人気吸血鬼漫画『ヘルシング』にも似ていたため、連載当初は、パクリだと一部から叩かれました。
『トリニティ・ブラッド』はアニメ化、漫画化までされた人気ライトノベル作品ですが、既存作品の大同小異から抜け出せなかった訳で、吸血鬼物の難しさを痛感させられます。
上記にあげた4作品はすべて吸血鬼と戦うバトル物です。これら強豪がひしめくバトル物に比べれば、コメディや恋愛物は、まだ開拓の余地があると言えます。
しかし、すでにこのジャンルでも新人賞受賞作で吸血鬼ネタは使用されており、 これらと被らないように配慮する必要があります。
吸血鬼の美少女が平凡な少年の元に転がり込んでくる抱腹絶倒のラブコメ、第4回電撃ゲーム小説大賞<銀賞>受賞作『僕の血を吸わないで』。夜間バイトで生活費を稼ぐ吸血鬼の青年が主人公のご近所コメディ、第8回電撃ゲーム小説大賞選考委員<奨励賞>受賞作『吸血鬼のおしごと』といった物です。
『僕の血を吸わないで』は、1999年の発表当時、おバカな吸血鬼美少女とのラブコメという、それまでの吸血鬼物の常識とは、まったく異なった新機軸を打ち出し、大人気になりました。
それ以降、『吸血鬼のおしごと』といったコメディ的な吸血鬼作品も発表されるようになりました。
これらと内容が被ると、当然ながら新人賞の受賞は難しくなります。
同様に、天使や悪魔も、作中に登場させない方が無難です。
天使や悪魔の歴史は、吸血鬼やエルフより遥かに古く、古今東西あらゆるジャンルの作品に登場しています。
このため、どう捻って書いたところで、ステレオタイプな話に陥る危険性が高いのです。
自分のアイディアと構成力によほど自信があるのなら別ですが、素人が安易にこういった種族を登場させると、もうそれだけで作品が陳腐なものになります。
●補足
これらは新人賞の受賞を狙ったり、商業作品として流通する小説に限った話で、ネットで発表するような趣味の小説でこれらの種族を出すのでしたら、特に問題はありません。
むしろ、吸血鬼やエルフには固定ファンも多いので、一定層の人たちから受ける可能性が高いです。
お初にお目にかかります。
最近(2014年3月下旬)ですが、『ストライク・ザ・ブラッド』 (電撃文庫 2011年5月10日刊行)という、ラノベ原作の深夜アニメが人気の様です。
このアニメは、
「主人公が吸血鬼で、登場人物が大量な上に名前が覚えにくく、さらに魔法や召喚獣などの名前や設定や理屈が無駄にややこしく、内容の把握が極めて難しい。」
という、管理人様の主張とは真逆を行っています。
結局、「萌え」と「エロ」の2大柱があれば、何でも良いのでしょうか。
初投稿させていただきます。ワナビの色液鳥と申します。
「吸血鬼、エルフ、天使、悪魔は陳腐になりやすい」との題ですが、これは半分正解で、もう半分は間違いだと思います。
バーバラ・アスカ女史(?)と若桜木虔先生が著した「超ライトノベル実戦作法」にて記述されていますが、「読者の知的好奇心が満たされない」作品は面白くないとされます。
これは裏を返せば、喩え題が陳腐でも読者が知らない世界を描くことで面白い作品になる可能性はあるということなのだと、自分は感じました。
悪魔を例にとれば、遅筆な自分が創っている作品ではある神話に登場し間接的に世界を脅かしている悪魔が半分主人公ですが、「根暗・綺麗好き・毒づき屋」でバツイチという元のキャラクターとはまるっきり別物です。
この作品が日の目をみるかどうかは分かりませんが、ギリシャ神話以外の古い神話は様々な脅威により文献が失われたために詰めが甘いところがありますので、喩え陳腐だとしても想像力を働かせカバーすればいくらでも作品は面白くなると愚考します。
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