テーマとは、主人公の貫徹行動が、暗黙に訴える倫理的、社会的な意味です。
「ストーリーの作り方のヒント」でも紹介しましたが、主人公は自分の目的達成のために、それを妨害する「敵」の勢力と戦います。
この「敵」は主人公から見れば「悪」ということになります。
この「悪」の行動原理に対する「善」の概念、
テーマとは主人公が何を愛して、何のために戦うのか、その愛の形を意味します。
主人公の愛の対象は、作品によって千差万別です。
なにも世界平和や男女愛だけがテーマとして選ばれる訳ではありません。
例えば、榊一郎さんの代表作、累計発行部数100万部以上を記録した『スクラップド・プリンセス』 (1999/03刊行)は「兄妹愛」をテーマとしています。
主人公のシャノンは、「世界を滅ぼす」と予言された義妹のパシフィカを守るために戦います。
彼の行動は、一般大衆の目から見れば、完全な悪であり、非難の対象です。
シャノン自身も、本当にパシフィカを守ることが正しいのか、幾度となく悩みます。
しかし、やがて葛藤の末に、「世界を敵に回してでもパシフィカを守る」という覚悟を固め、戦うことになります。
この決意の純粋さや強固さが、読者の感動を呼ぶのです。
世界を滅ぼす猛毒を抹殺するという敵側の行動原理
↓↑対立 葛藤
世界を敵に回しても妹を守るという愛(敵の行動原理に対するアンチテーゼ)
世の中には『復讐』や、『手段を選ばない闘争』などを描いた作品も多くあります。
しかし、これらも「悪を許容しよう」、「復讐も悪行も結構じゃないか」という視点では描かれていません。
●例1
「主人公は盗賊だけど、味方に対しては優しい面を見せるし、弱者も助けるから、根っからの悪じゃない」
●例2
「恋人の仇をとるために非情に徹して敵を陥れる主人公。
だけれど、裏を返せば、それだけ恋人を愛していたということだ」
●例3
「金のために殺し屋稼業を続ける主人公。
金に汚い性格に見えるが、実はそれは不治の難病に侵された妹の治療費を稼ぐためだった」
このように、主人公の負の要素が前面に出された作品であっても、根底には正の要素(愛情)を持たせることで、読者に感動や共感、それにある種の安心感を抱かせることができます。
確実に言えることは、「根っからの悪を称揚しても、読者の支持は得られない」ということです。
これは人間には、良心があるためです。悪いことをすると、どうしても罪悪感を感じてしまうため、「これなら主人公が非情な行動を取っても仕方ないよな」と、納得できるような正の要素(愛情)が主人公の動機にないと、安心して楽しめません。
また、よくテーマを勘違いしてしまう人の中に「私は、この作品を通じて平和の大切さを訴えたいんだ」と言う人がいます。
そういう人は、登場人物に「平和が大切だ」などと、訴えたいテーマを口に出させてしまいがちです。
しかし、これは極力避けねばなりません。
小説の目的は、思想や信条のプロパガンダでも、道徳のお説教でもないからです。
「私が正しいことを教えてやる」的な道徳の押し付けは、嫌がられるし、反感も買うので危険です。
ライトノベルは、あくまでエンターテイメント。
読者を楽しませるのが目的であり、教育的メッセージは二の次、三の次です。
これを逆転させてしまっては、本末転倒と言うより他ありません。
テーマは作品の中に内在しつつも、決して面に表れないものなのです。
主人公の行動を、ストーリーによって示すことによって、お説教や演説では伝えられない強いメッセージを与える。これがテーマの本質です。
偶然、時代劇の再放送を観て気づいたのが、
テーマとは「闇の中の光、光の中の闇」ではないかと思います。
例をあげると、
「捜査のために犯人の恋人を騙して情報を得る」
光といえども闇があります。
「人質にとった子供が実は息子だったことが分かり、子供を逃がしたら悪い仲間に斬られる」
闇の中にも光があります。
やはり迷ったら古典です。
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