ライトノベル作法研究所
  1. トップ
  2. ライトノベルの書き方
  3. テーマ
  4. 勧善懲悪のメリット、デメリット公開日:2013/09/17

勧善懲悪のメリット、デメリット

 単純な善悪二元論を用いた、悪が善に屈する勧善懲悪のストーリーも人気があります。

 例えば、時代劇やハリウッド映画の分野では勧善懲悪モノがメインになっています。
 水戸黄門が良い例ですね。
 私利私欲のために庶民を苦しめる悪代官を、正義の味方である黄門様が懲らしめて一件落着という、まったく同じパターンのテレビ番組が1969年8月から、2011年12月にいたるまで延々と繰りかえされました。

 勧善懲悪モノの優れているところは、必ず善が勝つというパターンが決まっているので、安心感があるところ。
 どこら見ても悪人である悪役がコテンパンにやられて大団円となるところです。

 悪が善に屈するというのは、誰もが心の中で望んでいることなので、強い快感を与えることができます。
 いままで、さんざん悪いことをしやがって、ざまーみろ! という心理です。

 ここでは『悪代官には実は病気の娘がおり、彼女の治療費を稼ぐために悪事に手を染めている』などという、悪役側に共感できるようなバックボーンが描かれることはありません。
 また、黄門様が、なんからの政治的意図で、水戸藩の評判を高めるために庶民を助けている、などという善玉の負のバックボーンが描かれることもありません。
 悪役は完全な悪であり、善玉は完全な善としてしか表現されないのです。

 勧善懲悪の場合は、何が正しいのか? などという答えの出ない問いかけはせず、善が勝ち、悪が断罪されるという単純な構造を取っているので、何も考えずにまったり楽しみたい分野に向いています。
 テレビや映画は、食事しながらだったり、横になってボーっと映像を見ていても、十分内容を理解して楽しめる受動的なメディアであるため勧善懲悪モノがマッチしているのです。

 逆に小説は、読者が自分の頭を働かせて文字を拾い、作品世界のイメージを脳内に構築する能動的ジャンルです。
 答えの出ない問いかけなど、受け手に考えさせることに適しています。
 このため、完全な勧善懲悪というのはあまりないです。

 勧善懲悪のデメリットとして、作品がいかにも作り物めいた薄っぺらいモノになってしまうことがあげられます。
 また戦隊ヒーローなど子供向け番組にも多いため、子供っぽいという印象を持たれやすい傾向があります。

 時代劇など、勧善懲悪がお約束化している分野であれば、視聴者もこれを理解した上で、善が勝つカタルシス(快感)を求めて視聴するので問題ありません。
 しかし、小説の醍醐味の一つは、答えの出ない問いかけ、テーマ性を味わうことなので、このような単純な構造は、薄っぺらいモノと認識されることが多いです。

 ライトノベルは、時代劇やハリウッド映画のような、爽快感重視の勧善懲悪を下地にしながら、文学的なテーマ性も取り入れる傾向があります。

 ただし、『わかりやすさ』が重視されるラノベにおいては、テーマ性は泣ける展開を作るためのギミックに利用される程度で、ラストは勧善懲悪的な大団円に落ち着くのが基本です。

 いろいろ難しい問題もあったけれど、悪い奴をやっつけて、主人公や登場人物がみなハッピーになってお終い。という奴ですね。
 漫画『デビルマン』のように主人公が徹底的に不幸になった上に死ぬ、とか有り得ません。

 答えの出ない善悪の葛藤などの重い話は、ライトノベルの売りである『気軽さ』『楽しさ』を壊してしまいかねず、重いテーマの話を描いてヒットしている作品はあまりないのが現状です。
 ラノベにおいては、勧善懲悪が基本であり、テーマ性は楽しさを生むための要素の一つとして認識しておきましょう。

携帯版サイト・QRコード

QRコード

 当サイトはおもしろいライトノベルの書き方をみんなで考え、研究する場です。
 相談、質問をされたい方は、創作相談用掲示板よりお願いします。

意見を送る

『勧善懲悪のメリット、デメリット』に対して、意見を投稿されたい方はこちらのメールフォームよりどうぞ。

カスタム検索