ライトノベル作法研究所
  1. トップ
  2. 創作に役立つ知識
  3. 作家デビューの方法
  4. オンライン小説がスカウトされる公開日:2013/10/23

オンライン小説がスカウトされる

 1980年代後半から1990年代前半にかけて、ジュニア小説の同人誌から多くの新人作家が新興ライトノベルレーベルにスカウトされたそうです。
 ライトノベルといえば「ソノラマ」と「コバルト」くらいしかなかった時代に、あちこちの出版社がライトノベルレーベルを創刊しました。
 しかし、どうやらこれは大失敗だったようです。
 というのも、新レーベルには、まず「作品点数を揃える」という命題が課せられます。
 そのために、同人業界からロクなトレーニングもせずに多くの新人作家がデビューし、クオリティーが低いものだからあっというまに飽きられて、多くの文庫が消えていきました。
 おそらく同人からは二度と同じ轍を踏むようなことは無いでしょうが、これとよく似た現象が2010年代に入ったあたりから、Web上で見られるようになっています。

 2011年、大手小説投稿サイトである「小説家になろう」で人気一位を誇っていた佐島勤の『魔法科高校の劣等生』が電撃文庫よりスカウトされて刊行されたのです。

 『魔法科高校の劣等生』は、元々、無料で読める作品だったのにも関わらず、290万部以上も売れるという異例のヒットを飛ばし注目されました。
 2010年ころから「小説家になろう」に投稿された作品は、ネットで人気のある著者の作品を書籍化する出版社アルファポリスから書籍化されてきましたが、電撃文庫、エンターブレインが2011年に投稿作品をスカウトしたのを皮切りに、2012年に集英社のスーパーダッシュ文庫もスカウトに乗り出しました。

 大手小説投稿サイトで人気となったオンライン小説が、メジャーレーベルから刊行されるという流れができたのです。

 また、2011年に、林檎プロモーションのフェザー文庫、2012年に主婦の友社のヒーロー文庫といった新興レーベルの立ち上げに際し、「小説家になろう」で人気を博していた作品、著者がスカウトされるなど、新興レーベルは、積極的に「小説家になろう」との提携に乗り出しています。
 ライトノベル黎明期における同人作家のスカウトと違い、人が多く集まる大手小説投稿サイトで人気であるという客観的な実績があるため、実力のない著者を引いてしまうリスクが少なく、この流れは今後とも続いていくでしょう。

 実際に編集者は、有望な著者がいないかWeb上をうろうろと見て回っているようです。
 オンライン小説をスカウトする編集者にとって最大のメリットは、「簡単に切れる」ことではないかと僕は思っています。
 何しろ、顔を見ていませんから、情も湧きません。
 しかし、メールのやりとりをすれば「人となり」はわかりますし、著者が何を考えているのか、方向性はどこにあるのかなどは見出せます。
 編集者は同じ内容のメールを大量に送付することができますから、新人発掘にはこんな便利なものはありません。
 そして、「合わない」「ダメだ」と思えば、その後、音信不通にすればそれですみます。

 作家側からすれば、「切られない」ために、大手小説投稿サイトで人気を維持すれば良いわけですから、「切られるかも」「音信不通になったらどうしよう」などと過度に怯える必要はありません。仮にそうなったとしても「新人賞落選」と思えば済むし、人気を維持していれば、別の出版社から声をかけられることもあるでしょう。

 ただ、大手小説投稿サイトでトップレベルの人気を博すのは、新人賞で勝ち抜くのと同等レベルの困難さがあります。
 新人賞とは違って人気を維持しなくては、スカウトの目にも留まりませんから、クオリティの高い更新を続けていかなければならない、といった苦労もあります。
 本当に小説を書くのが好きな人、書き続けられる人、つまり才能(小説を書く適正)がある人ではないと、Webからデビューというのも難しいです。

 また、アルファポリスの創業者、梶本雄介さんによると「ネット上の人気」=「本の売り上げ」とは言えないそうです。(参考・インターネットからの出版・アルファポリス 梶本雄介 2009-5-20
 ある程度の関連性はありますが、ネットで無料の小説を読む人と、本屋で小説を買う人は違うため、編集者の腕によっても作品の質が変わってくるため、思うような結果が出ないこともあるそうです。同社の書籍購入者のうち、ネット読者の割合は5~20%と意外と少ないのです。8割以上が本屋で初めて作品に出会って買っているのが実態です(2013年3月)。ネットで人気になったからといって、商業出版での成功が確約されるわけではないのです。

次のページへ >> 専門学校に入る

携帯版サイト・QRコード

QRコード

 当サイトはおもしろいライトノベルの書き方をみんなで考え、研究する場です。
 相談、質問をされたい方は、創作相談用掲示板よりお願いします。

意見を送る

『オンライン小説がスカウトされる』に対して、意見を投稿されたい方はこちらのメールフォームよりどうぞ。

カスタム検索