sakayaさん著作
「魔王を継ぐなんて、ウチは嫌やっ!」
「お願いだ。父さんの命もそう長くはない……血筋を絶ってほしくないんだ」
魔王は思春期の娘に魔王の座を継承して欲しいと頼むが、娘は首を横に振るばかりで耳を貸そうとしない。
「大体……魔族って何なん!? ただの悪者やろ? そんな奴等の長になろうだなんて『ウチが一番の悪者ですよ』言うてるようなもんやん!」
齢六十を過ぎた魔王は娘の論に返すことができず、自身の手に握られている、かつては『大魔の杖』と恐れられていた杖で体を支えることしかできなかった。
「人間の旅の邪魔をするは、人間を拐って魔族に引き込むは……ウチら、ほんまに最低やで!?」
思春期だからだろうか、魔王である父に鬼のような形相で愚痴を吐く。
「魔族に引き込むのは仕方ないんだ。魔族は人型や獣型といった、様々な種類に分かれていて繁殖しづらいのだから」
ようやく反論できたかと思うと、
「じゃあ……ウチはどうなん? 本当は元々人間やったんやないの? なあ、そうやろ!?」
魔族――しかも魔王の子に生まれてきたことをコンプレックスに思っている娘は、実の父に言ってはいけないことを口にした。
次の瞬間魔王は老いた手で娘の頬を叩いた。
「お前は母さんと父さんの子だ! その証拠に狼女であった母さんの容姿、魔王サタンである私の魔力がお前にはあるだろう?」
今は亡き妻と娘を重ね合わせ、魔王は瞳を潤わせる。
「オカンの容姿……? この尖った耳や、感情が高ぶったときに変身する――この醜い狼の姿のこと!?」
叩かれた頬を押さえながら、徐々に突き出てくる狼の鼻や爪を父に見せつける。
母に対する娘のあまりに酷い発言を聞き、魔王はただただ悲しくなり、下唇を噛んで娘の顔を見つめる。
「人間の勇者様のような、優しくて正義感に溢れた人のもとに生まれたかった!」
娘はそう言って、魔王の部屋から飛び出していった。
「優しい、勇者様か……」
実際は人間の王から与えられる名誉のために、意味もなく魔族狩りしている勇者たちの事情を魔王は知っていた。
しばらく考え、魔王は決心した。
「勇者たちに、私が言った通りの内容の文を出したか?」
ケルベロスが牽く車上で、魔王は隣に座っている側近に問う。この側近は魔王と一番親しく、歳も魔王と差異はないほどの老人だ。
「ええ、ご心配なく。お嬢様――次期魔王様にも、きちんと転送され映像を御覧になるよう申しておきました」
「わざわざすまないな。お前には最期まで世話になる」
「我が身は魔王様のためにございます」
言って、胸に握った右手を当てて、深い忠誠を示す。
しばらく経ち、車は遂に人間たちの領地へと入る。二人は車から降り、獰猛なケルベロスに帰るように命じ、老体に鞭を打って歩く。
「ようやく魔王様のご到着だ」
手紙で勇者たちに伝えた場所まで辿り着くと、武器を手にした勇者たちが不敵な笑みを浮かべて待っていた。
(音声と映像は撮れているか?)
(ええ、大丈夫です。きちんと城に張った『映像受信の魔方陣』に映し出されているはずです)
側近に小声で確認してから、魔王は交渉をはじめる。
「文で伝えた通りだが、貴様らから人間の王に和平の件を伝えて欲しく、わざわざやってきた。わたしの文は王宮まで届けてもらえぬからな」
勇者たちは「和平ねぇ」とせせら笑いする。その反応は魔王の期待通りであった。
「私の娘も人間を好いているみたいでな、この通りだ、頼む」
言って、土下座した魔王――の首を一本の剣が切断する。側近は涙しながら、自身の目に仕掛けた『映像転送の魔法』を用い、その様子を一部始終撮り続けた。
「悪者がいないと、俺らが困るんだよ」
勇者たちは大口を開け、まるで魔王のように卑しく笑う。
「嘘や……こんなん嘘やああぁぁっ!」
側近から、見るように言われた魔方陣の前で娘は泣き崩れ、
「――殺す。人間なんて、皆殺しにしてやるっ!」
膨大な魔力を噴き出しながら、狼に変貌した。
このようにして次期魔王は誕生したが……いやはや、本当の魔王にふさわしいのは、魔族と人間――どちらなのだろうか。
電撃チャンピオンロードというものが、一体何なのかは知らないのですが、皆さん挑戦していらっしゃるので、真似てみましたwww
成績が酷くてパソコンを取り上げられてしまったので、アイフォンで投稿を試みるのですが、字下げが出来てないかもしれません。
読んでいただけると嬉しいです。
※12/21 22:32 修正させていただきました。
2011年12月21日(水)03時42分
こんにちは。汁茶と申します。
拝読いたしましたので感想を。
>今は亡き妻と娘を重ね合わせ、そ魔王は瞳を潤わせる。
「そ」 推敲中に残ってしまったのではないかと。「その瞳を」とか。
娘に後を継いでほしい父の捨て身の行動。心打たれました。
短い中できちっと話としてまとまっていてうまいと思います。
ただ、人のことはあまり言えないのですが、ストレートすぎるかなと思います。
これまた人のことは言えないのですが、ファンタジー世界で「モニター」「カメラ」といった現代的な名称がでてくるのはどうかと。(先程、自分の作品に書きこまれた感想を読まなかったらスルーしてましたが
的確な言葉を思いつかないのですが、「映像転送魔法」とかモニターじゃなくて水晶玉とか世界観に合致した名称のほうがよいのではないかと思います。
あと、個人的な好みの問題かもしれませんが、「悪者がいないと困る」のに殺しちゃうのはどうかな、と。勇者の側は魔王の思惑も次期魔王の存在も知らなかったと思うので、生かしておいたほうが得策と考えるんじゃないか、と。けど、目の前に賞金首が転がってるのに、そんなこと考える勇者じゃないと言われればそんな気もしますが。
拙い感想で申し訳ありませんが、この辺で失礼いたします。
はじめまして、まりなと申します。
作品を読ませていただきました。
電撃チャンピョンロードというのがどんなものなのか、
私もわかりませんが、楽しく読ませていただきました。
悪者が居ないと、正義の味方は成り立ちませんよね。
確かに、真理だと思います。
何の争いごともなく平和になったら、ヒーローも商売上がったりです。
父親の優しさや、娘の未熟さなど、とても簡潔に、
わかりやすく書かれていて、参考になりました。
また、作品を読ませてください。
しーくと言います。電撃チャンピオンロード、みなさん挑戦されてますね。
読ませていただいたので感想を書いていきます。
魔王というお題自体は、ストレートに使っていてわかりやすかったです。
短い話ですが、オチはとても気に入りました。『魔王継承』というタイトルですが、人間が好きな自分の娘に人間の本当の姿を娘に伝える父の姿、とても切実なものを感じました。どうしても娘に跡を継いでほしいという想いと、娘が勇者や人間に対して誤った認識をしているというのを伝えるために、捨て身で勇者の前に出向く魔王。和平を申し込んだのに対し、それを勇者が嘲笑うかのようにまさかの一方的な虐殺。真実をモニター越しに知る娘。そして魔王を継承する、という流れと、人間の愚かしい一面が描かれている所が個人的には面白かったです。
短いながらもわかりやすく、まとまっていてテーマのある作品だと思いました。面白かったです。
では失礼します。
こんにちは。kikiです。
短いのによくまとまっているという印象でした。
大阪弁の魔王の娘にちょっとモエました。
これじゃあまるで勇者が悪者ですね。
最後の問いかけには”人間だ”と私なら答えるでしょう。
残念なのは、他の方も指摘している通り、なぜ勇者が魔王を斬ったのか? です。
勇者が「悪者がいないと、俺らが困るんだよ」と思っているのなら
行動がおかしいかなと。
しかし、そんなこと関係なしに面白かったです。
同じく「魔王」に便乗したのはいいものの、規定に引っかかってしまったパングです、初めまして。
拝読しましたので、感想をと。
纏まっていてよかった、という印象です。ありきたりですが、それはまあショートショートなんで別に悪くないかと。
>「人間の勇者様のような、優しくて正義感に溢れた人のもとに生まれたかった!」
二読目のこの言葉が響きますねえ。泣いちゃいそうです。
ではこの辺りで。今後も創作活動をがんばってください。
かもめと言います。
よろしくお願いします。作品を読ませてもらいました。
うまくまとまってると思います。尊敬です…
最後の問いかけ、考えさせられますね。
魔王の最後の戦い見事です。
勇者にも生活がかかっているので責めることがなかなかできない。
難しいですね。
次回作も期待しています。
ザザザです。
拝読させていただきましたので、感想をば。
率直に、面白かったです。ええ、とても。テーマも分かりやすくて、かつキャラたちの内面等も非常に分かりやすくて。
この短い中でよくまとめられています、と素直に褒めたいところです。
ですが、確かにこの終わり方もいいものとは思いますが、自分としては、少し気に入ったとは言い難いです。
どなたか言われていますが、かなりストレートですね、展開が。伝えたいことは伝わり、感動もするのですけれど、それだけ感情移入している分、やるせない気持ちがこみ上げてきます。
まあ、あくまで一個人で単なる感想ですので、お気になさらないでください。ただ、こういう風にも感じました、というのを伝えたいだけです。
では、以上で終わります。短くてすみません。
応募の際は、ご武運お祈りしています。
乱文にて失礼すること、ご容赦くだされば幸いです。
どうも! 空羽です。
魔王の題材が多いなぁと思ったら、電撃チャンピオンロードのお題だったんですね。
納得しました。私も応募してみようかな……。
いやぁ、勇者さんが黒い! 程よく黒い!
王道では出せない黒さだと思いました。
魔王の父親らしさがいいなと思いました。
ちゃんとタイトル通り、娘に魔王の称号が継承される流れも良くできていると思いました!
批評に関しては他の方がおっしゃっていること同じですかね。
「モニター」は「映像転送装置」の方がしっくりします。
創作活動頑張ってください!
こんにちは、sakaya様
感想返しに参りました。
皆さんと内容がほとんど、かぶってしまいますので割愛させて頂きます。
伝えたいことはただ一つ。「嫉妬」ですね(笑)
ラノベの才能があると思いますよ。正直、悔しいくらいです。
なので勝手にライバル心を燃やしてしまいました。
自分も携帯から投稿しているのですが、文字数制限はちょうど2000字以内になってるし編集しにくいし、大変パソコンが恋しいところであります。
それでは、執筆ご苦労様でした。
sakaya様こんばんは。
上手くまとまっていると思いました。
考えさせられる作品でした。
自分から指摘できる点は特になかったです。
これからも執筆頑張って下さい。
短いですが、失礼します。
sakayaさん、こんにちは。
作品拝読させていただきました。
読みやすくて、面白い。よく出来た掌編だったと思いました。
魔王の捨て身の計画が、成功しましたね。
オチもばっちり決まっていました。
なかなか世界観が良いですので、20枚ぐらいの作品でも
読んでみたい素材でした。
また新しい作品を読ませていただきます!
点数の高さと感想数と短さに引かれて開いてみた。
作者名を見て、さっき感想残した相手だ――とか思って、また暖かい話かとタカをくくってたら、まさかのバッドエンド気味で驚いた。良い意味で。
いきなり会話(というより喧嘩)から始まったおかげで、魔王と娘の考えがきちんと伝わってきて良かったと思う。
オチはバッドエンド気味と言ったが、この短さで綺麗に終わらせていたと思うし(なにより無駄がなかった)、魔王の行動には胸を打たれた。
あと、チャンピオンロードには出さないらしいけど、自分は応募した方がいいと思うよ。良い経験になるからさ。
さっきのクリスマスのやつといい、この魔王のやつといい――作者の作品は結構好みだわ。
次読み漁りに来たときには、もっと面白いの期待してるよ。
始めまして。
魔王の物語拝読致しました。
面白かったです。
短いながらも起承転結がしっかり纏まっていてオチもなるほどと納得してしまいました。
面白かったです。
評価をどうしような悩んでいるうちに消えるリミットが近づいてきて……これを消すのは惜しい!
そう思ったので思わず40点入れさせていただきました。
内容も巧みです。この短いなかにこれだけの葛藤とドラマを詰め込み、必要な描写はきっちり、それでいて無駄がない。
まさに掌編の鑑と言うべき作品です。見習いたい^^