高得点作品掲載所       みぎしたさん 著作  | トップへ戻る | 


アイの答え

 昼休み。
 みんながお弁当を食べたり友達と談笑したりと気楽な感じに過ごす中、僕は一人黙々と物理の課題に取り組んでいた。
 しかし、だからといって僕が昼食も取らずに勉強するほど真面目な生徒かと言うとそんなことはない。むしろ逆だ。先週出された課題を僕はついさっきまですっかり忘却の彼方に押しやっていたのだ。で、昼休みに入ったと同時にクラスメイトの竹田がその彼方から課題を引っ張り出してきた。
「秋山、物理の宿題やってきた?」
 その一言で自分が大変な窮地に立っていることを認識した僕は、食べようとしていた弁当をしまって机の中から物理のプリントを取り出した。
 事態は最悪と言っても大げさじゃない。提出は今日の五時間目の初め。今の時刻は十二時半。タイムリミットまであと三十分しかない。まあ、頭が良い奴なら三十分でどうにでもなるんだろう。でも生憎と物理は僕のもっとも苦手な教科の一つである。もうかれこれ十分以上プリントに書かれた課題の問題を睨み続けているが、その十分を無駄にして得たものは答えが全然分からないという焦燥感だけだ。
 くそ。このままだと三十分後にはにっくき物理教師石井和夫三十五歳独身メガネ野郎が実にいやらしい笑みを浮かべて、
「秋山、お前今日はこの席で授業を受けろ」
 と、最前列のさらに前に特別な席を用意して課題をやってきてない僕をそこに座らせるんだ。石井からの距離が近いため何かある度にペシペシ教鞭で頭を叩かれ、その惨めな姿をクラスのみんなに晒すことになるのだ。
 絶対に嫌だ。
 だから僕はこうしてその事態を避けるため昼ご飯返上で頑張っている。
 だがいかんせん僕には物理の才能が無いみたいで、世の中には頑張っても無駄なことがあると、悲しい現実を悟ってしまいそうである。
「あー、ちくしょ。物体の質量がm、重力加速度がgである時のiの値を求めろー? わけわかんねえよ」
 僕は頭を抱えて消え入るような弱々しい声で呟いた。
「iの答えがわからねえ……」



 昼休み。
 戦争のように色々と厳しい高校生活のひと時の安らぎタイム。 
 あたしはクラスメイトである由美と詩織と一緒にお弁当を食べていた。やっぱりご飯はみんなで食べた方がおいしい。同じ教室にいる他のみんなも誰かと一緒にランチを楽しんでいた。
 ところが、窓際の一番後ろ、隅っこの所で一人お弁当箱ではなく何かのプリントを広げて、悩ましげな表情を作っている男子生徒がいた。
 秋山昇。出席番号一番。八月三十一日生まれの乙女座。血液型O型。好きな食べ物はハンバーグで、嫌いな食べ物はピクルス。得意教科は英語で、苦手な教科は物理。中学二年の妹がいるらしい。字を書くときは右利きだが、野球とか物を投げたりするときは左利き。主にバラエティー番組が好きで他はほとんど見ない。だけど、仲間由紀恵のドラマだけは欠かさずチェックする。今は帰宅部だが中学まではサッカーをやっていた。面倒くさがりやだが責任感は強い。あたし以外の女子は気付いてないが、実は結構優しい。平凡でどこにでもいそうな外見。でも内面は良い奴。それと――
 現在彼女はいないらしい。
 当たり前である。秋山くんはパッと見全然冴えないんだから。あいつの良さがわかる女なんて世界に一人いれば良い方である。それなのに彼女なんていたらそれは完全に詐欺だ。訴えてやる。
 と、どうやらあたしは気付かない内にかなりの時間秋山くんを見つめていたみたいだ。
 由美と詩織が下世話な笑みを浮かべていた。
「ふっふっふ、視線が秋山にロックオンでしたよ?」
 ご自慢のポニーテールを揺らしていやんいやんと由美が言った。
「プリンセスの趣味は良くわかんないね」
 わざとらしく肩をすくめて嘆息する詩織。演劇部に所属するこの女はいちいち仕草がオーバーだ。
 あたしはしっかりと見つめてた癖に、秋山くんなんて見てないもんと反論しようとしたが、それも相手の思う壺なような気がしてやめた。代わりに詩織が使った呼び名に文句を言う。
「プリンセスって言わないでよ。あたしには七海みななって名前があるの」
 プリンセス。日本語で姫だがもちろんそんなことは関係なく、このあだ名は以前みんなでカラオケに行った時あたしがプリンセス・プリンセスの曲ばっか歌ったのに由来している。なんかバカにされてるみたいで好きになれないあだ名だ。良いじゃないプリプリ。古いとか言うな。
「あら、顔が赤くなってるわよ、図星ね」
 だけど詩織はあたしの苦情を丸っきり無視した。
「あんまりいじめちゃ可哀想よ、詩織」
「そうね。恋はとても良いことだもんね」
「うるさいな!」
 あたしは直もからかってこようとする二人に怒鳴って、ちょうど良くお弁当を食べ終わったのでその場を逃げるように後にした。いつも休み時間を過ごす由美の席から自分の席に戻る。秋山くんの隣だ。あまり意識しないよう無言で席に着いたが、ちらりと見た由美と詩織がニヤニヤと笑っていたので、あたしはまた恥ずかしさで頬が熱くなるのを感じた。
 悔しいけど、あたしが秋山くんのことを好きなのにあの二人は気付いている。いつも見てるのがいけなかったらしい。でも、好きな人が同じ教室にいたらついついそっちに目がいっちゃうのは仕方ないでしょ。いちいちからかわないで欲しい。あたしだって好きで好きになったんじゃないんだ。いつの間にかに、席替えで隣になっただけで跳びあがりたいほど嬉しい自分がいたのだ。そうだ。全部秋山くんが悪い。秋山くんがあたしと一緒に図書委員になるからいけないんだ。ばか。あほ。鈍感。
 あたしはその恨みを視線に込めて左隣にいる秋山くんを窺った。
 秋山くんは頭を抱えて小さな声でこう呟いた。
「愛の答えがわからねえ……」
 心臓が破裂しちゃうくらいにびっくりした。




 駄目だ! やっぱりわかんねえ!
 そう結論付けた僕は最後のカードを切ることにした。いわゆる切り札だ。
「竹田、教えてくれ」
 前の席で馬鹿みたいにでかい弁当を食らってる竹田に、僕はすがるしかなかった。竹田はそうこなくっちゃな、と弁当箱を途中のまま置いてわかりやすい笑みを浮かべた。
「んじゃ、今度奢れよな」
「ああ、はいはいわかったよ。だから早くiの答えを教えてくれ」
 僕は投げやりに言って、竹田に持っていたシャーペンを渡した。
 こいつは大食いも納得の図体の持ち主の癖に、かなりというかめちゃくちゃ頭が良い。別にガタイが良い奴が頭悪いって言うわけじゃないけど、少なくもともイメージには合わない。で、そんな利口な竹田くんは時折頭の悪い僕とか他の男子相手に、条件付で勉強を教えてたりするのだ。その条件とは大抵なんか食い物を奢らされることなんだが、竹田は本当に大食い野郎なのでその出費もバカにならない。だからできれば避けたい手段ではあったが、背に腹は代えられないというやつである。しかし、昼休みの最初に話し掛けてきた時から竹田がそれを狙っていて、まんまとそれに嵌るというのも嫌な感じだ。
「いいか、秋山。質量mが速度vでこの角度でいくから――」
 と、竹田は余裕しゃくしゃくで説明を始めた。大したもんだ。
「――とまあ、そういう訳で、iの答えはこうなるのだ」
「ああ、なるほどね。良くわかったよ。さんきゅ」
 竹田の書いた数式を眺めても、どうして最終的にこの答えが導き出されるのかぶっちゃけ良くわからなかったが、口ではそう言っておいた。
「じゃあ、今度な。忘れんなよ」
「わかってるよ」
 僕にしっかりとお礼の件について釘を刺して、竹田は昼食に戻った。
 ふう、予定外の出費は痛いが、しかしこれで物理の時間恥をかくこともないだろう。
 やれやれと僕はプリントをしまい、カバンから弁当箱を取り出す。
 早く食べないと昼休みが終わってしまう。



 なんてことだ。
 あたしはあんまりな展開に愕然としてしまった。
 まさか秋山くん相手にライバルもいないだろうと高をくくってたのに、それがいきなり現れて、それも男だなんて……!
 露骨に盗み見盗み聞きするのも良くないと思ったあたしは、あまり秋山くんに注意を払わないようしてたけど、それでも隣にいるため竹田くんとの会話が多少耳に入ってしまった。
 まず、秋山くんが竹田くんに愛の答えを教えてと訊き、竹田くんはそれを快く快諾。
 そして竹田くんは紙とペンを使ってまで熱心に秋山くんに愛の答えを教えて、秋山くんは良くわかったさんきゅと言った。
 じゃあ今度と竹田くんは言って、秋山くんはわかってるよと返事した。
 今度ってなにっ!?
 二人で何の約束をしてるの!?
 ていうか、愛の答えってそんなに単純に出せるものなのっ!?
 どうしよう……。
 秋山くんが足を踏み入れてはいけない道に進もうとしている。
 そういえば二人きりで図書委員の仕事をしてた時もプロレスとか好きなんだって照れながら話してたっけ。
 あーん、ちょっとそれはないでしょ。初恋の人がゲ……、同性愛者だったなんて、そんなの絶対イヤ! このままじゃあたし、二度と恋できなくなっちゃう!
 こうなったら、やるしかないわ。
 あたしが、秋山くんを正しい道に連れ戻してあげる!
 本当の愛の答えを教えてあげる!
 あたしは意を決して席を立った。




 弁当箱の蓋を開けさあ食うぞと箸を持ったら、七海みななが僕の目の前にやってきた。
「秋山くん、ちょっといいかしら?」
 なんだか真剣な口調で七海がそう言ってくるもんだから、僕もちょっと緊張気味に「ああ、うん」と頷き、箸を置いて彼女の次の言葉を待った。
 七海みなな。出席番号二十五番。三月一日生まれのうお座。血液型AB型。好き食べ物は桃で、嫌いな食べ物は酢豚に入ってるパイナップル。成績優秀でどの教科を比べても僕より良い。一人っ子で優しいお兄ちゃんが欲しかったそうだ。恋愛ドラマや漫画が好きで、バラエティーもそれなりに見るみたい。今は帰宅部だが中学までバドミントンをやっていた。恥ずかしがりやなのかあんまり男子と話しているのを見かけない。基本的に真面目。そして――
 僕の好きな人。
 僕以外の男子は良く見ると結構可愛いとかなんとか言っているが、僕は普通にかなり可愛いと思っている。たしかに垢抜けてる今時な感じの娘じゃないが、背中まで伸ばされた黒髪なんか見惚れてしまうほど綺麗だし、清純派と考えれば学年でも指折りの存在に違いない。
 それと、現在付き合っている相手はいないらしい。
 意外と言えば意外だが、七海の性格を考えれば別段驚くほどでもない。七海はなんだか告白しづらい雰囲気を持ってるし、奥手そうだし、なにより恋愛に関して鈍感っぽい。僕が所々で七海に好きだというアピールをしているが、七海はそれに気付いている素振りを欠片も見せない。何のために僕が七海と同じ図書委員を希望したと思ってるんだ。まあ、僕に真正面から告白する勇気と度胸があればいい話なんだけど。
「なに? どうしたの?」
 そっちから話し掛けてきたにも関わらず黙り込んだままでいる七海に、僕は遠慮がちに水を向けてやった。
 どうも世間話という感じじゃない。まるで今から乾坤一擲の告白をしかねない気配だ。
「秋山くんは間違ってるよ」
「は?」
 ようやく口を開いたかと思えば、七海の言葉はどうにも要領を得ないものだった。
「あの、何が間違ってるの?」
 こういう時は考えるよりも訊いた方が早い。事実、
「iの答えよ」
 という七海の返事を聞いて僕は簡単に納得した。
 なるほど。さっき竹田から教えてもらった物理の回答が間違ってたのか。七海のことだ。隣の席でたまたま僕達のやりとりを聞いて、その答えが間違ってたらそれを教えるくらいの親切心は見せるだろう。妙にシリアスなのは男子に話し掛けることが普段ほとんど無いためか。
 僕は竹田に文句を言ってやろうと七海の後ろにある席に目をやったが、すでに飯を食い終わったらしい竹田はそこにいなかった。まあいい。文句はあとでも言える。
「竹田くんのiの答えは間違ってるよ!」 
「ああ、わかったよ。教えてくれてありがと」
 いくらなんでも必死すぎる様子の七海に僕は内心訝しんだが、とりあえず礼を言っておいた。
 しかし参ったな。竹田の答えが違うとなると僕の課題はできてないも同じだ。仕方ない。ここは迷惑かもしれないが七海に頼るしかなさそうだ。うう、好きな人に勉強を教えてもらうというのは、良く考えればちょっとドキドキするイベントだな。
「あの、七海。だったらついでにiの本当の答えを教えてくれないか? さっぱりわからないんだ」
 僕はなるたけ気軽な感じで訊ねた。だがこの問いに七海は、通常ではあり得ないほど狼狽した。
「そっ、そんなの急に言われてもあたしだってわからないわよ!」
「え? そうなの?」
 てっきりわかってるものだと思った。
 そして七海は続ける。
「ていうかiの答えなんて人が一生をかけて模索するものじゃない!」
「ええっ!? いや、そんな壮大な問題じゃないと思うぞ……?」
 なんで物理の課題にそこまで情熱を燃やさなきゃいけないんだ。七海って、そんな物理マニアだったのか?
 何言ってんの! と僕の言葉に七海が憤慨した。
「この問題は高校生ごときが理解できるものじゃないわよ!」
「いや、生徒が理解できないことを学校は教えないだろ」
「当たり前じゃない! なんで学校がiの答えを教えてくれるのよ!」
「教えてくれないのっ!?」
 なんか会話が噛み合ってない気がする。お互いに致命的な勘違いをしているというか……。
「だけど、七海がiの答えを教えてくれないって言うなら、竹田の答えのまま僕は行くしかないぞ?」
「ええっ!? なんでよ!?」
「なんでと言われても……」
 僕は他に答えを持ってないからだ。
「うう、わかったわよ。じゃああたしが教えてあげる」
「本当か?」
「うん。そのために話し掛けたし」
 なんだ。やっぱり七海はちゃんとiの答えを知っていたのか。一安心である。
「あの、何年もかけてゆっくり教えてあげるね」
「何年!? いや、無理だよ無理! 今すぐ教えてよ!」
 いきなりなんて無茶なことを言うんだ。
 七海ってこんな面白いことを話す奴だったっけ?
「今すぐは、無理だよ……」
 七海は病気じゃないかと心配してしまうくらいに顔を紅潮させて、俯いてしまった。
「なんで無理なの?」
「だって、こんな場所じゃ恥ずかしいし……」
「う……」
 今の問題にはどうでもいいことだが、頬を染めて恥ずかしいそうに喋る七海はむちゃくちゃ可愛かった。
「でも、教えてくれなきゃ困るよ。竹田の答えを七海は許さないんだろ?」
「そんなの絶対だめ!」
「だったら、頼むよ」
「…………わかったわよ」
 大分逡巡していたようだが、しぶしぶ七海は了承した。
「じゃあ、場所を変えよう」
「え?」
 僕の返事も待たずに七海は僕の手を取って駆け出した。僕は七海の唐突な行動にこけそうになりがならもなんとかついていく。
 勢い良く教室を飛び出して、そのままの駆け足で廊下を走破し、階段を駆け上がり、七海がやっと止まった場所は屋上だった。
 なんで物理を教えてもらうのに屋上なのか僕は良くわからなかった。




 どうしよう……。
 今すぐ愛の答えを教えてと言う秋山くんの要望に焦って、思わず屋上まで引っ張ってきてしまった。でも、秋山くんを正しい道に戻すためよ。頑張れ、七海みなな。
 あたしは掴んでいた秋山くんの手を離して、正面から向き合った。
 風があたし達の間をすり抜けていく。いくら世間で暖冬と言われてるとはいえ、冬の北風は身に染みる。だけどおかげで、屋上にはあたし達以外の人はいなかった。春とか過ごしやすい時には屋上でお昼ご飯を食べる生徒も多いけど、さすがにこの季節でもそれを実行しようとする人はいないみたいだ。
 屋上で二人きり。告白には絶好のシチュエーションね。
「あの七海、なんで屋上なの?」
 教室で良いじゃないか、と秋山くんはとんでもないことを言った。
「そんなのみんなの前でできるわけないでしょ!」
「そ、そう?」
「そうよ!」
 ああやだな、とあたしは反論しつつ思った。きっと今のあたし、顔真っ赤だ。
 でも秋山くん、平気な様子でそんなこと言うなんて、結構なサディストなのかもしれない。羞恥プレイというやつだろうか。あたしは秋山くんのことが好きだし付き合ったらできる限り秋山くんの好みに合わせてあげたいと思うけど……、いやんそんなのダメ!
「七海……?」
「――はっ、あ、ごめん。ちょっとぼうっとしちゃった」
 秋山くんの言葉によって、乙女ではあるまじき妄想をしていたあたしは我に返った。
 しっかりしろ。今から告白するんだろう。
 すーはー、とあたしは大きく深呼吸をして、
「じゃあ、あたしの愛の答えを教えてあげるね」
 と、声が震えそうになるのを精一杯抑えて言った。
「あの、秋山くん、目つぶっててくれない?」
「え、ああ、うん」
 あたしのお願いに秋山くんは釈然としない態度だったが大人しく従ってくれた。そしてそれを確認した後、あたしは秋山くんに真正面から抱きついた。秋山くんの温もりが制服越しに伝わってくる。
「いっ!? 七海?」
 秋山くんはとても露骨に慌てふためいて、それがちょっとおかしかった。
 だけどあたしはそんな秋山くんを半ば無視した形で、自分の大事な大事な想いを告げた。
「あたしはあなたのことが好きなの! 大好きなの!」
「ええっ!? いや、ちょっと七海? 七海さん!?」
 あたしの告白に丁寧語になってしまう秋山くん。
「大好き! 大好きなの!」
「わ、わかった! わかったから一旦離れて!」
「あん……」
 秋山くんは多分あたしよりも顔を真っ赤にして、あたしの両肩を掴んで身体を離した。温もりが離れていく。ちょっと名残惜しい。
 秋山くんは一キロ全力で走ったあとみたいに乱れた呼吸をなんとか整えて、
「と、とにかく、大好きっていうのが、七海の愛の答えなわけ?」
「そうよ! だから竹田くんのはダメ! わかった!?」
「う、うん。わかったよ。ありがとう、七海」
 そう言って秋山くんは微笑した。その素敵過ぎる笑顔でありがとうって言われて、あたしは泣きそうなくらい幸せだった。勇気を出して告白して良かった。




 結局昼飯は食いっぱぐれることとなった。
 屋上で七海にiの答えを教えてもらい教室に戻ってきたらそこでチャイムが鳴った。昼休み終了と五時間目の始まりを告げる鐘の音だ。まあ、空腹であるが我慢できないというほどでもない。やれやれと嘆息して僕は出しっぱなしだった弁当をしまって授業の準備をした。
 しかし、さっきの七海は一体どうしたのだろう。明らかにいつもの様子と違っていたし、あんな大胆なことをするような娘じゃないと思ってた。僕としてはなんかすげえ良い匂いしたし、抱きつかれた時の感触は最高級のぬいぐるみのそれよりも甘美なもので、夢か現実かの区別が付かないくらい幸せなひと時であったから全然良いんだけどさ。
 でも、問題はiの答えだ。まさか本当に『大好き』が正解ではないよな。だけど、好きな女の子にあれほどまで必死に言われて、どうして僕にそれ以外の答えが書けようか。僕はプリントに書かれた竹田の答えを消して、『i=大好き』と直した。多分、竹田の答えは正解だっただろうから、文句は言わないでおいてやる。
 答えを直してから二分後、誰も来てくれなんて願ってないのに石井は律儀に姿を見せた。
 日直の号令のあと、早速課題のプリントを提出するよう指示を出す。みんな石井の厳しさを知っているためか、忘れた生徒はいないみたいだった。そのことに石井は満足そうによしよしと頷いて、
「じゃあ、答え合わせをするぞ」
 と言った。
 石井の授業は毎回こうやって始まる。授業の終わりに必ず課題を出し、次の授業の初めにその課題の答え合わせをするのだ。そしてやってこなかったものにはその日の授業を特別席受けることを強いる。真面目は真面目なんだろうけど、迷惑な教師である。
 いつもなら石井自身がぱぱっと回答を黒板に書いて終わりなのだが、今日は趣が違った。
「というわけで秋山、前に出てきてやれ」
「えっ!?」
 前振りも何も無い唐突なご指名に、僕は月並みなリアクションで驚いた。
「なんで僕なんですか?」
 当然、抗議の声を上げる。
 ところが石井はそんな文句を全く気にしてない口調で、
「今回の課題は何気に重要だったからな。お前が理解してればみんな理解しているということになるだろう?」
 僕がこのクラスで一番バカだと言った。たしかにそれを力一杯否定するつもりもないが、なんて教師だ。教育委員会とかPTAとかに訴えるぞ。
「ほら、早くしろ」
 と石井に急かされて、
「はいはい、わかりましたよ」
 僕は仕方なく教壇の上に立った。石井は教室の隅に移動して、腕を組んで僕が問題を解くのを眺める体勢に入っていた。
 さて、どうしたもんだか。といってもやらなきゃいけないことは決まっている。僕は一度提出した自分のプリントを手元に戻し、チョークを持って式を黒板に書き込んでいった。どうも、教室中から注目を浴びてるようで嫌なんだよな。こういうの。
 途中まではそのまま竹田に教えてもらった通りに問題を進めていき、最終的なiの値を出す所で僕は迷って手を置いた。
「どうした、秋山?」
 変な箇所で止まった僕に石井が声を掛けてきた
「いえ、ちょっと」
 僕は適当に返事しておいて、考える。
 竹田の答えか。
 七海の答えか。
 僕はちらと首だけで振り返って窓際の後ろの方を見た。
 竹田はなんか爽やかっぽい笑みを浮かべて、右手の親指を立てていた。
 七海は祈りを捧げるシスターのように両手を重ねて、僕に何やら熱い視線を送っていた。
 一瞬で決まった。ああ、わかってるぜ、七海。僕はお前に言われた通りにするよ。
 愛と恋、英語で言ったらどちらも同じLOVEの力に突き動かされ、僕は『大好き』と黒板に書いた。




 秋山くんが前に出て物理の問題を解き始めた段階になって、あたしは自分がひどいなんてレベルじゃないくらい最悪な勘違いをしていたことに気付いた。
 秋山くんが言っていたのは『愛』じゃなくてアルファベットの『i』だったのか!
 うわあっ、やばい! まじでやばい!
 あたしったらそのおかげで秋山くんに――告白しちゃった!
 ああもう、紛らわしいのよバカ! そりゃ普通はこんな勘違いなんかしないんでしょうけど、恋する乙女なめんじゃないわよ! アイって言ったらそれは、藍でも哀でも当然iでもなく『愛』なのよ! ラブなのよラブ! あたしはあなたにフォーリンラブフォーエバー永遠になのよ! やだもう、自分でも意味わかんなくなってる! ていうか、この状況で本当に最悪なのは秋山くん本人が未だに勘違いしているってことなのよ! 気付けよバカバカ! なんであたしがあなたに物理の問題の答えが『大好き』なんて教えなきゃいけないのよ! そんな問題あるわけないでしょ! 一世一代の告白だったのよ!? しかも思わせぶりな笑顔でありがとうなんて言うもんだから、あたしは告白がうまくいったと舞い上がっちゃったじゃない!  責任取ってよ!
 なんて、いくらあたしが心の中で絶叫したところで秋山くんに届くはずもなく、秋山くんはすらすらと数式を書いていく。きっと竹田くんに教えてもらった部分だろう。あたしはそのままの調子でiもちゃんとした回答であることを祈った。
 しかし、最後にiの値を書くだけなのに、竹田くんの手が止まった。迷ってるみたいだった。竹田くんの答えか、あたしの答えか。石井先生に「どうした、秋山?」と言われてる。秋山くんは「いえ、ちょっと」と返事をして、ちらとこっちに視線をやった。あたしは両手を重ねて瞳に精一杯の感情を込めて見つめ返す。
 秋山くん、冷静に考えればどっちが正しいかわかるでしょ。みんなの前であんな答え書いたら卒業までずっとネタにされ続けるわよ。下手したらあたしはもう学校に来れなくなるかもしれないじゃない。そうしたら図書委員の仕事大変でしょ。ほら、良いことなんて一つもないの。だから、お願い。あたしの答えは書かないで……!
 うん、と一回、秋山くんはあたしに向かって頷いてみせた。
 そして、秋山くんは、『大好き』と、黒板に真っ白なチョークで書き込んだ。
 書き込んでしまった。
 教室が変な空気になった。
 ……死のうかな。
「おい、秋山。それは一体どういうつもりだ?」
 あたしがどの死に方が一番苦しくないかなと思案し、他のクラスメイト達が意味のわからない秋山くんの行動に困惑している中、さすがの石井先生もちょっと戸惑いがちに訊ねた。 
「いや、これが答えです」
 秋山くんはなんかやってやったぜみたいな感じで堂々と言った。しかもさり気なくあたしに下手っぴなウィンクを送ってくる。
 バカ! 一瞬トキメキそうになったけどそうじゃないでしょ! お願いだからこれ以上余計なことは言わないで! あたしに恥をかかさないで!
「……秋山、お前この問題人に教えてもらっただろ?」
「……ええ、まあ、そうです」
 確認のような石井先生の問いに、秋山くんは躊躇しながらも正直に認めた。別に教えてもらったからって、丸写しとかじゃなければ石井先生は怒らない。
「誰に、教えてもらったんだ?」
「竹田くんと、」
 言わないで。言わないで。言わないで。
「七海さんです」
「言うなーっ! バカぁーっ!」
 あたしの心中を察してくれない秋山くんに、思わず抑えが利かなくなったあたしは全力で突っ込んだ。
 気付いた時にはもう遅い。あたしはみんなの注目を独り占めにしてしまっていた。
「あっ、なるほど。iじゃなくて、愛の答えね。で、それをプリンセスは秋山に伝えたのか」
 秋山くんとは比較にならない察しの良さで、詩織がポツリとそう呟いた。
「勘違いここに極まれりね。大好きだって、恥ずかしぃ〜っ!」
 詩織と同じく頭の回転の速い由美が状況を悟って煽るように言った。どうやらあたしの友達にろくなのはいないらしい。……バカ。
 次の瞬間、教室は爆笑と驚愕の悲鳴で混沌に陥った。あたしが秋山くんが好きだって気付いてた人は前者、そうじゃなかった人は後者だ。ていうか、女子のほとんどにはバレてたらしい。男子にはあんまり知られてなかったみたいだけど、今全員にそれがバレてしまった。ちなみに石井先生は、この先生には非常に珍しいことなんだけど、お腹を抱えて大笑いしていた。
 最悪だ。
 最悪だ……!
 これ以上ない羞恥のせいで逆に冷静でいられた(というか諦めたもしくはヤケになってた)あたしは、キッと秋山くんを睨みつけてやった。
「あ、あの、気付かなくてごめん、七海」
 さすがに自分のミスに感づいたらしい秋山くんは顔を夕焼けのようにして、
「でも、僕も七海のことが……」
 なんとこんな場所で告白を始めやがった。
 それはホントにホントに超嬉しいし、ずっと待っていた言葉だったけど、何も今言わなくても良いじゃない! 天然物のバカなの!? あと、照れてる姿が無意味に可愛いのよ!
「大ス」
「きゃーっ! 言わないで言わないで! それはロマンチックな場所で二人きりの時にしてえぇぇ――っ!」
 あたしは筆箱やらノートやら教科書やら、手に取れるものは片っ端から秋山くん目掛けて投げつけた。
「うわっ!?」
「いてえ!」
「きゃあっ!?」
 それはほとんど秋山くんに当たることなく、関係ないクラスメイトにヒットしていく。しかし今のあたしはそんなことに気を配れる余裕なんか皆無だ。投げる物がなくなったあたしはついに自分の椅子を持ち上げた。
「お、落ち着け七海!」
「冷静にプリンセス!」
「恋が実ったのよ!」
 さすがに慌ててあたしを静めようとする竹田くん、詩織、由美。
「これが落ち着いていられるかーっ!」
 あたしは椅子をぶん投げた。




 ハチャメチャな物理が終わり、次の国語もなんとか無事に終了し、帰りのHRが担任の都合で省略されて、放課後。
 僕は七海と一緒に帰っていた。
 そして、秋山昇と七海みななは正式に付き合うことになった。
 それにしても、大暴れした七海を止めるのは大変だったけど、怪我人が出なかったのは不幸中の幸いというやつだろう。みんな筆箱とかの軽い段階ですぐに避難したが正解だった。石井の奴も、自分も笑ってしまった引け目からか、今回は勘弁してくれるそうだ。
「昇、手を繋ごう」
「え、ああ、うん」
 ぎゅ、と七海の手が絡めるようにして僕のそれを握ってきた。
 手を繋いで一緒に帰る。なんていうか凄く恥ずかしかったが、七海が上機嫌そうだったのでそのままにしておく。七海は意外と甘えたがりだった。これが噂のツンデレというやつなのだろうか?
「七海」
 と何気なく僕が呼んだら、七海は不満げな顔で、
「みななって呼んでよ」
「いや、急にそう言われても」
「あたしだって呼び方昇に変えたでしょ。だから昇も」
「わかったよ、みなな」
 よろしい、と七海は笑った。
 可愛い。
「由美とか詩織にはプリンセスとか嫌なあだ名で呼ばれてるんだもん。恋人からくらいは好きなように呼ばれたいじゃない」
「なるほど、ね」
 おかしなあだ名がない僕には理解し難い気持ちであったが、とりあえず頷いておいた。
 しかし、次の日、七海はプリンセスに代わる新しいあだ名を付けられていた。
 曰く、『愛の戦士』。
 ピッタリだと僕は思ったけど、七海はかなり怒った。
 まあ、たしかにちょっと語呂が悪いもんな。


この作品が気に入っていただけましたら『高得点作品掲載所・人気投票』にて、投票と一言感想をお願いします。
こちらのメールフォームから、作品の批評も募集しております。

●感想
伊瀬 弥生さんの感想
 こんにちは。伊瀬と申します。

 単なる感想になりますが。
 笑ってしまった。うん。何というか、にやにや笑いが止まらない、という感じでしょうか。
 いやいやしかし、こんなに盛大な勘違いもあるものでしょうかね。もちろんお約束風味なところはありますし、ダメと言っているわけではありませんよ?
 ハンバーガー食べれないよね秋山くん。それともピクルスだけ避けるのか。君、鈍感にもほどがあります。最後の最後までとぼけたお方で……。
  どちらから読んでも七海みなな嬢。非常に可愛いですね。私としては、みなな嬢にフォーリンラブフォーエバー永遠にという感じです。まぁ、椅子を投げるのは やりすぎだとして……。秋山くんに説明していた竹田くんの話も聞いていれば、今回の件は回避できた悲劇というか、喜劇というか、喜ばしい出来事ですね。
 私的にストライクゾーンに入った作品でした。九割嘘なら、一割本当の部分とはどこなのでしょうか? 面白かったです。次回作も期待しています。では。


あかねさんの感想
 こんにちは。ふっふっふ……また発見させていただきましたよ?

 30枚という枚数を気にさせない「ノリ」が素敵です。もはやお家芸ですね。いやはや。
 竹田君は愛の答えをおしえてくれるんですね(爆)しかしやはり七海嬢の答えを書くんですね!いい奴です!
 勢いが強すぎた分、ラストが物足りない感じがしました。好きだった彼女に対して「これが噂のツンデレだろうか?」というのは……いいのか悪いのかよくわからないですがひっかかりを感じました。あと、かなり細かいですが
>あたしが秋山くんのことを好きなのにあの二人は気付いている
 「好きなの/に」か「好きな/の/に」かがわかりにくかったです。

 今日みた夢に物理の先生が出てきたのは予知夢かと思いましたよ〜(んなわけあるか)いつもへちゃれた感想でごめんなさい。次回作も、どこへ隠れようと発見する所存です。ではっ。


ねむりねこさんの感想
 はじめまして、ねむりねこっていいます。
 さっそくですが感想を……

 「おもしろいっ! とにかく面白い!! 面白すぎるぜ、こん畜生!!!」
(言葉遣いが汚くてすみません(汗))
 ストーリーの発想といい、ユーモアのセンスといい実に見事だと思いました。ぼくは普段はあまり恋愛小説は読まないんですが、この作品は見事にツボりました ね。ぼくもいつかこんな小説が書けたらなあ……なんておもいました。(ぼくじゃ3000年かかってもできないだろーけど)
 とりあえずこれからも頑張ってください! かげながら応援してますから!

 以上、ねむりねこでした。


寄尾真也さんの感想
 どうも。寄尾だとされているモノです。
 『アイの答え』、読ませていただきました。

 定番とも言える勘違いラブストーリーですが、作者様の力でしょうか、完成度(もしくは安定度?)の高いお話に仕上がってますねー。
 文章も読みやすく、下手に入り組んだ部分もなく、思考の破綻やぶっ飛びもなく(いや勘違いは凄ぇですが:笑)、良い意味で地に足のついた作品だと思います。悪く言うと安牌ですけれど、安牌を安牌として仕上げられるのもまた実力かと。
 視線移動は全然気になりませんでした。主要人物二人ですし。視点の動かし方もまた絶妙だったりするでしょう。
 ていうか、プリンセス、いい性格してますね。素敵ですw
 「ロマンチックな場所で二人きりの時に」って(笑) 椅子投げるって(笑々)

 最後に、『石井』の頭文字も『i』なので、そこでもう一騒動絡めても良かったかもしれません。
 あー、でもそうすると、ギャグ色が強くなってこじれてしまうのかな……。

 お話としては平凡なので、点数は20にしておきます。
 ともあれ、良質な短編をご馳走様でした(感謝


あいわいさんの感想
 初めまして。あいわいです。

 視点移動は多かったものの、それぞれの一人称が読みやすいものでしたので、引っ掛かるところもなく、すら すらと読めました。短編としては、きちんと纏まっているのではないかと(長編の中の一エピソードして書いてくれたのなら、彼らふたりの面白くて楽しい日常 がもっと、語られるのでしょう、と勝ってに思いました)。
 他の方も書かれていますが、最後のオチの部分が、これまでの流れと違って、かなり弱くなっている気がします。「あたしは椅子をぶん投げた」で終わりにしても良かったと思います。あるいは、これまで通りの勢いを続けて終わるか。
 
 いずれにしても、読んでみて、素直に面白い話と思える話でした。
 それでは。


ディ・ロイさんの感想
 こんにちは。先日小説を読んでいただいたディ・ロイです。
 もう、凄いの一言ですね。僕と一枚しか枚数が違わないのに、完成度の桁がまるで違います! ここまで笑いのある純愛は始めて見ました。僕の求めているものが、ここにありました。(^^)
 これからも作品を読ませていただきます。
 キャラクターとは、こういうことを言うんですねえ……(うんうん)
 僕もみぎしたさんぐらいの小説が書けるよう、日々、鍛錬いたします!
 素敵な短編をありがとうございました。美味しく頂きました。


ハルさんの感想
 初めまして、ハルと申します。

 とりあえずかなりおもしろかったです。笑わせてもらいました。
 文章も読みやすく特につっかかりもなく最後まで読めました。
 視点移動も特に気になりませんでした。
 ただただ感心ばかり。いやぁ、すごいなぁ……。


ぬるさんの感想
 拝読しました。ぬると申します。
 かなり笑えました。とてもうまいと思いました。

 勘違いの面白さを視点移動によってうまく表現されてるなぁと思います。たくさん視点移動する事が良くないように思っていましたが、このような形で視点移動する方が面白くなるのなら、積極的に取り入れるべきで、それが出来ている作品だと思います。

 勘違いがどのような形で決着がつくのか気になりながら読む事が出来ました。ネタが恋愛だった事も面白さを加速させたと思います。さらにそんな事よりも(オチよりも)1行1行を読んでいる時に感じる面白さがこの作品にはあったなと思いました。

 このような状態で読み進む事が出来たので苦も無く読めました。

 ほんと良かったです。


江口猫さんの感想
 はじめまして、江口猫と申します。
 高得点だったこともあって、読ませて頂きました。

 さすがに、高得点なだけあって、おもしろい作品に出会えました。
 特に教室で告白するところは笑わせてもらいました。
 勘違いがもたらす恋というのも、いいですね。
 次回作にこういうのを書こうと想定していたこともあるので、参考になるところもありました。

 ツッコミどころ

1、最初のみなな視点
 最初に、作者コメントから読んだから気にはなりませんでしたが、実際に読んでみると混乱しました。
 でも、そんなに気にはならなかったので、実験でやってるとすれば、成功しているのではないでしょうか。

 でも、このみなな、細かいところまでよく知っているので、どうやって個人情報を集めたのか気になります。
 人気があるなら別ですが、あまりパッとしていないわけですから、なおさらです。
 もうちょっと、秋山くんを好きになった理由があればいいと思います。

2、三回目の秋山視点
 どうして、秋山もみななの個人情報を細かく知っているのか、やはり気になりました。
 お互い気があるからなのかと深読みしながら読んでいました。

3、「あたしが、秋山くんを正しい道に連れ戻してあげる!」が置いてきぼり
 勘違いをするところはおもしろいですが、秋山に近づくための口実のこのセリフが置き去りになっていると思います。
 告白したときも、このセリフに関連するものがありませんでしたし、勘違いと気づいてからは、告白ばかりに目が行って完全に置き去りにされていると思いました。

 よかったところ
1、>「愛の答えがわからねえ……」
 ここで吹きました。ここから、勘違いが始まるのかと。

 そして、秋山視点を読んでいたときに、みなな視点ではどういう勘違いをするのか、先が気になるようになっている構成作りは見事というしかないです。

2、iの答え
 冷静に考えると臭すぎるセリフですが、iの答えをうまく使って、ストーリーにしているのは見事です。
 アンジャッシュのコントのようで、楽しめました。
 それを意識して作ったのでしょうか。

3、後日談
 個人的に、後日談があったのはいいと思いました。
 ただ、もうちょっとひねった後日談のほうがよかったと思います。

 でも、かなりの良作なんじゃないでしょうか。
 ただ好きな理由がお互いに不足しているところや、平坦気味なところがあると思いました。


一言コメント
 ・これはイイ! こんなおもしろいラブコメ、そうそう見かけない!
 ・笑いました。
 ・いやもう、かなり笑わせてもらいました。読みやすいし、みななも可愛かったです。
 ・笑える話なのに、感動もできた。
 ・一つの勘違いからここまで持っていく筆力に拍手w
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