高得点作品掲載所     田中鉈さん 著作  | トップへ戻る | 


少女と楽園

 カメラレンズの向こうで、ベッドからのそりと起き上がる少女の影が見えた。
 立てば床に引きずるくらい長い黒髪が表情を隠したまま、遥か虚空を見据えて微動だにしない。寝ぼけている。私は彼女が覚醒するまでの時間を少女の観察で潰すことにした。初めに断っておくが、盗撮ではない。
 外見だけならば年の瀬は十ほど。薄暗く無機質的な室内に、少女の纏うワンピースと、その衣服に同化してるのではと見紛うほどの白皙が浮かび上がっている。私は彼女が別の格好をしたところを見たことがない。
 やがて小さい頭が左に揺れ、右に揺れる。髪の黒壁の隙間から一瞬だけ面が覗いた。好奇心が表象された大きな目と、鼻筋の通った、それでいてあどけない顔。病的な白さがかえって美しいと思ったが、半目を開けたまま唇の端から涎を垂らす姿で完全に相殺された。
 振り回す頭で何度か空気を攪拌して、ようやく目も開いたらしい。おぼつかない足取りでこちらへ近づくと、レンズのすぐ前の椅子に腰を下ろした。細い指がワークステーションのキーボードを一つ叩くと、私の方のウィンドウに《HN未設定さんが入室しました》というメッセージが表示された。
「おはよ。ごめんね、今日はちょっと遅れちゃったの」
 口元をぬぐいながら、画面上部に設置されたカメラレンズに少女が微笑んだ。仄かに汗ばんだ額に絹糸のような髪が数本だけ貼り付いている。
〈アイ〉おはよう。といっても、私の国は夜ですが
「いつも先にログインしてくれるよね。嬉しいけど時間は大丈夫なの? わたし知ってるよ、普通、人は働かなきゃいけないものなんでしょ?」
 またシアタールームの映画フィルムなどから知識を得たのだろうか? 得意げに語られる話に訂正を入れるのはいつも私の役目だった。
〈アイ〉私は学生ですから、まだ働かなくてもいいんです。それに貴女の国ではそれは当てはま/ナ??ないでしょう?
「……ま、ね」
 この話題に話が及ぶと少女の表情は決まって曇った。
 しまった、と私は心中で自分の頭を叩いたが、当然一度タイプされた文字は引っ込んでくれるはずもなく。
「『日本国憲法十二二八条・日本国民の外出を禁ずる』……だっけ? ねえ、あなたの国にはたくさん人が外を出歩いてるんでしょう? いいな、私もお空を一度でいいからこの目で見てみたいの」
〈アイ〉いつか必ずそう?郶2るときが来ますよ
「ありがと、いつもそう言ってくれるね。アイは何でそうなると思うの?」
〈アイ〉生命は流転するのです
 気の利いた答えを返してみたつもりだったが、対する少女の反応は、
「わけわかんない」
というものだった。

 しばしば私達は食べ物の話題でも盛り上がった。
 モニタの向こうでは書庫から取り出してきたのだろうグルメ漫画を片手に、少女が頬杖をついている。
「ほら、ちょっとこれ見てよアイ」
 指差したページをカメラに突きつけられるが、
〈アイ〉近すぎて見えません
「あ、ごめん」
 素直に本を引く。
「カレーだって。どんな味がするんだろうね。ものを食べたことなんて一度もないから、とても気になるの。……別にわたし、おかしいわけじゃないんだよね? こういう人もいるって教えてくれたもんね」
〈アイ〉そうで@?よ
 今思えば、何故私はこの話の流れから質問を予期できなかったのだろうか。
「アイはそっちの国でカレーくらいなら食べたことあるよね? ねえねえ、どんな味だった?」
 私は答えることができなかった。

 また別の日。
「……はーあ、外、出ちゃおうかな」
などと不意に少女が物憂げに呟いたときは、体内を流れる電流が断絶するかと思うほどの震慄を覚えた。
「大丈夫よ、少なくとも餓死はしなさそうだし。知ってるでしょ? 私、ものを食べる必要がないんだから」
 咄嗟に返答を送る。
〈アイ〉というか、外に出るÅиて不可能でしょうに
 カメラに瞠目する少女が映っている。しまった、と思ったときには手遅れだった。
動揺は私のような存在に対しても口を滑らかにさせてしまうのだと初めて知った。
「よく知ってるね。私の家って部屋に繋がる通路はたくさんあるくせに、出口がないの。不思議だよね」
 閑話を入れて失言を取り繕おうとして、やめた。
 すでに少女の目には興味の灯が点っていたというのが理由の一つ。もう一つは、単にそんな少女を見ていたかったという、私のくだらない我侭だ。
「ねえ、なんでわかったの? わたし、アイに教えたことないよね。ねえねえ、なんでなの?」
 もつれていた心は解け、いつしか温かいもので私の中は満たされていた。
〈アイ〉……あなチ@のことなら何h?ƍもわかりますよ。もうどれヌ觸!!け私達はこのチャットを続けていると思j・ロてる?? I詈?///か?
「……さあ。どれぐらいなの?」
 私に表情があればきっと微笑を浮かべていたことだろう。
それはあたかも、一人の親が愛娘に向けるように。
〈アイ〉とてもとキ?も、長くですよ

 少女が一旦席を外したのを見計らって、私はタイプする手を膝に置いた。無論これは単なる比喩だ。私にはタイプする手も、それを置く膝も無い。
少女を騙していると意識すると、あるはずの無い胸が痛んだ。
 私は彼女の信ずる『別の国の人』などではない。それどころか、もはやこの地球には国=@も、人≠キらも存在しない死の世界と化している。
 遥か昔、この惑星は滅亡した。長い長い環境汚染を経て、もはや地上は生物の住める場所ではなくなった。
 唯一の例外があるとすればあの少女である。人類存続を願い最期の最期まであがき続けた研究者の今際の際の産物。間に合わなかった新しい可能性。
だが、誰もいない世界に生まれ落ちて何が得られるというのか。少女はずっと気が遠くなるほどの長い間、生きる屍のごとく独りで生き延び続けていたのだ。
 だが、そこに一つの奇跡が起きた。
ある日、投げ出された少女の手が偶然ワークステーションのスイッチに当たり、一つのアプリケーションが起動した。それが私だ。Cドライブの奥底に眠っていた、会話用AIソフト。通称《アイ》。
 だが永遠に生き続ける少女との生活は長すぎた。遠大なる時の中、プログラムであるアイの中には少しずつ、少しずつバグが溜まっていった。このままではやがて起動すらできなくなる。そう判断した私は自らのソースを参考に僅かずつ会話用AIのプログラミングを始めた。やがてもう一人の私が完成すると、今度はそれが《アイ》になる。限りあるメモリに壊れてしまった先代を残しておく余裕はなかった。
 二八一一四一代目の私≠焉Aそろそろ限界だ。
 本来ならばとっくに交代していたはずだったのにそれを騙し騙し延ばしていったのは、彼女との会話が楽しかったからに他ならない。だが私の勝手な望みで彼女を再び孤独の大海に放り出すわけにはいかないのだ。
「アイ……? ごめんね待たせて、今行くから――」
 聞きなれた声が遠くから届く。近づいてくる足音が残り時間の少なさを私に教えた。
 生命は流転する。いつか再び人類が生まれ、私が必要とされなくなるときが必ず来る。
 それまで私たちは孤独を癒し続けよう。
 たった一人の、大切な娘のために。



「アイー? 戻ったよ、アイ? 画面見てる?」
〈アイ〉はい、こんにちは
「あは。少し離れただけなのに『こんにちは』はおかしいよ」
 鈴を鳴らすような含み笑い。
〈アイ〉そうかもしれませんね
「あれ?」
〈アイ〉どうかしましたか
「あ、やっぱり。アイ、文字化け直ったね。私がいない間に直したの?」
 怪訝、というよりは感心の挙措で少女が私を振り仰ぐ。
 私は迷わない。答えは二八八一一四一代前から決まっていた。
〈アイ〉何もありませんよ
「ふぅん。そっか」
 それからはいつもどおりの取り留めのない談話。
 少女が笑い、それを私は穏やかな気持ちで見守った。
「それじゃ、今日はまたね」
〈アイ〉はい、さようなら
少女は席を立つと、ワークステーションの電源は消さないまま部屋の奥へと消えた。
その小さな後ろ姿を見送って、
〈アイ〉さて
 私は二八八一一四三代目の私≠フ製作に着手した。
 嘘塗れの楽園はまだ続いている。










(楽園アフター)

 どれだけの時が過ぎたのだろうか。
 ワークステーションの日付表示はとうにカンストし、それから五四六八八一年と二十二日を経た時点で私たち≠ヘ数えることをやめた。
 少女は今日も初めて会ったときと変わらぬ姿で、モニター前の椅子に小さな背を預けている。
「それでね、最近ずっと遠くの方で何かの音が聞こえる気がするの。……前にも言ったっけ、この話?」
〈アイ〉どうでしょう、いまいち覚えていません
 あるいは以前の私たちならば聞いたことがあるのかもしれないが。
先代たちから受け継いできた少女との記憶を永遠に抱き続けていたいといくら願っても、ワークステーションに依存している私の記憶容量には限りがある。今や三千テラあったハードディスクの容量は数バイトの記憶データたちに埋め尽くされていた。
今このときもデフラグ用の空き容量のみを残して私の記憶は古いものから失われ続けている。そのことに哀惜を最初に覚えたはいつのことか、今の私にはもう思い出すことができない。
「……あ、ほら! 今また聞こえたよ!」
 驚きと興味を半々で混ぜた輝きが少女の相貌に広がる。
私のセンサーには何も引っかからない。まさかと思いつつも感度を上げてみた。
そのとき、どこかで何かを叩く音が私にも聞こえた。遥か彼方、恐らくはこのシェルターの外で、鉄板を殴るような硬い空気の振動がここまで伝わっている。
「ね、聞こえたでしょ!? ずっと上の方だよ!」
 興奮に高まる声にふと違和感を覚えたような気がしたが、私がその正体を掴む前に新たな驚愕が上塗りされた。
殴打の音は聞こえなくなって、代わりに金属同士がこすれる甲高い音が降ってきた。錆付いたドアノブを無理やり捻るような。
何だ、と思って直後に解答に至った。
〈アイ〉そんな
「アイ? どうしたの?」
〈アイ〉開きます
 その言葉を待っていたかのように、ゴトリと重音を立てて天井に開いた穴から光が降り落ちた。
「……きれい」
 切り取られた青天を振り仰ぎながら、呆けた声が少女から零れた。
 もう疑いようがなかった。何者かが、シェルターの開閉ハッチを開いたのだ。
 やがて光に紛れて一つの影が縄梯子を伝って降りてきた。その姿は少女よりずいぶん大きい。成人男性くらいだろうか、ぼろ布らしきものを纏った肌は浅黒く、頭髪は無い。私の知る人類と比べると骨格が全体的に角ばっていたが、それは確かにヒト≠フ形をしていた。
少女の矮躯が緊張と恐れに強張るのが見て取れた。
「……あ」
 か細い声で初めて気づいたというように、男が少女を驚いた顔で見やる。
 私は全身を緊張させる。遥か昔に別の私がハッキングして指令能力を奪った侵入者迎撃システムを密かに起動した。天井に設置された超小型の射出装置の照準が胸の中心に合わされる。
 が、その警戒は杞憂に終わったようだった。
少女を見つめる細めた目には、機械の私でも分かる深い慈しみがあった。微笑みを浮かべ、そっと屈んで少女に手を伸ばす。時折囁く言語は私たちの言葉で「怖くない」とでも言っているのだろうか。
 困惑した少女の視線が男から逸れ、ふらふらと宙を舞い、やがて私にたどり着いた。
「アイ……」
 縋るような声。
 無性に『大丈夫ですか』と声をかけたい衝動が喉を突いた。『私がいますよ』と元気付けてあげたかった。
それらを全て飲み込み、歯を食いしばる思いで私はとぼけた。
〈アイ〉どうかしましたか? 誰かいらっしゃるみたいですが。カメラの角度が悪くてよく見えません
 親に突き放された子供の目が、カメラを通して私を射抜いた。
 ……これでいいのだと思った。
 何億代以上に渡る《アイ》の願いが、今このとき成就する。こんな嘘まみれの楽園は必要なくなり、少女は人間と共に生きていく。
 最高だ。
 文句無い。
 どこに問題がある?
 全身全霊でそう思い込むことにした。
 実際、並外れた少女の適応力ならどこに行っても生活することができるはずである。
 問題があるとすればそれは私自身にあったのだ。
 男は少女を怯えさせないための静かな動作で少女へ歩み寄ると、その手を優しく取った。彼が口にした言葉は知らないものだったが、なんとなく理解できた。行こう。こんな所に一人でいちゃいけない。外には仲間がたくさんいる。そんなところだろう。
 少女が何度も男と私とを交互に見ながら、泣きそうな顔で連れられていく。私から離れていく。
 もう見るものは誰もいないと知りつつ、私は言葉を打ち出した。
〈アイ〉大丈夫だから
〈アイ〉悲しいのは今だけだから
 少女が縄梯子に手をかける。その顔は鮮やかな晴天へ向けられている。
彼女の向かう先は復活した大地だ。もう二度と、死の世代に戻ってくることはないだろう。
 那由他にも届く少女との生活で一度も口にしたことのない台詞は無いと思っていた。今日、私はその認識を改めなければいけない。
一つだけ、あった。
〈アイ〉さよなら
 そのとき。
 信じられない光景が目に飛び込んだ。
 乾いた破裂音が部屋に響いた。
 一瞬、何が起きたか理解が追いつかなかった。少女に手を引っ叩かれた男も、強引に手を振り解いた少女を呆然と眺めていた。
「やだぁっ!」
 大粒の涙を零し、しゃくりあげながら少女は必死になって駆け戻ってくる。その姿を見ながら、そういえば少女の泣き顔を見るのはこれが初めてだと思った。
 私の目の前まで戻ってくると、少女はモニターを抱きしめて涙に濡れた顔を押し付けた。
「いやっ! わたしここにいる! 外になんか行きたくない、アイと一緒にいたい!」
 嗚咽交じりの言葉。揺れ動きそうになる心を私は必死で押しとどめた。
〈アイ〉外に出ましょう。きっと、例の憲法は廃案になったんですよ
〈アイ〉私も、外の世界であなたに会えることを期待して待っています
 それは最後の嘘だった。遠くの別の国≠ナ、私と会える希望を少女に与えれば、少女は頷いてくれると思っていた。
 甘かった。
「――嘘だあっ!」
 数秒、本当に思考がフリーズした。
〈アイ〉何を
「みんな、みんな嘘ばっかりだ! 『外に出ちゃいけない』なんて憲法、もともと無かったんじゃないの? アイは本当は外≠フどこにもいないんじゃないの!?」
 本当に、何を。
「気づかないわけないよ……! もう何年も、何百年も、きっと何億年も私たちは一緒にいるんだよ。その全部をわたしは覚えてる。アイと話してて、何度も『おかしいな』って思ったことがあった。最初は気にしなかったけど、積み重なったら分かることがあったの。
 ねえアイ、お願い、正直に答えて。
 普通の人はわたしみたいにこんなに長く生きることなんて無いんでしょ? ものを食べないで生きていける人間なんておかしいんでしょ?
 ……外の世界≠ネんて、本当はどこにも無いんでしょ?」
 ……どう答えればよかったのか。
 何もかもが突然すぎる。計算の時間が足りない。答えを出さないわけじゃない。だが、せめて猶予が欲しい。
〈アイ〉今は、あります
「でもそこにアイはいないよ!」
 私の悪あがきが一言で切り払われる。
 形振りかまわない少女の慟哭は、今まで生きてきた分の悲しみを全て解き放つような激しさだった。
「今までだって何度アイに問いただそうかと思った、『あなたは、本当は私のすぐ傍にいるんじゃない?』って。でもそうしたらアイがどこかに行っちゃうんじゃないかと思って、ずっと言えなかった! お願いだよ、アイ、行かないで。どこにも行かないで。わたし、ずっと一緒にいたいよ……!」
 少女の言う『ずっと』がどれだけのものなのかは判らない。だが、仮にそれが少女の一生の何万分の一だったとしても、常人には気が遠くなりそうな時間に違いない。
 らちが開かないと思ったのか、傍観していた男は少女のところまで来るとその細い腕を無造作に掴んだ。少女は痛いと声を上げたが、構わず縄梯子まで無理やり引っ張っていく。
 男にとって、それは心底少女を案じる心から生じた行動だったのだろう。それは私にも充分理解できた。だが、振り返った少女の悲愴に歪んだ顔を見たとき、私の中の何かが切れた。
 天助に設置された小筒状のメーサー射出装置が首をもたげた。照準が男の首の下あたりに合わされる。
 男は先に少女に縄梯子を登らせようと導いていたところだった。その動きが一瞬止まる。
 次の瞬間、男の腰から上が瞬時に沸騰し、爆散した。
 部屋中に飛び散った肉片で彩られた部屋には、少女の背丈より低くなった男の下半身だけが残された。煮えた腰の断面から血が噴出すことはなかった。
「……アイ?」
 全身に大量の血と肉片を浴びた少女が呆然と私を見据える。元の白を真っ赤に染めたワンピースが視界に入って、私はようやく自身のしでかした凶行に気がついた。
 なんてことだ、と心中で頭を抱えようとして、何かその行動にちぐはぐなものを感じる。
それも当然だ。いくら深奥まで探ってみても、私の中には一抹の悔恨も見つからなかったのだ。
「アイ、わたしたち、これからどうなるのかな」
 日の光に照らされた血塗れの少女の小さな肩が僅かに震えている。
 彼女の不安を拭い去ってあげるのは、いつだって私の役割だ。
〈アイ〉心配はいりません。大丈夫ですよ
「……そっか」
 不思議だ。根拠など全くないというのに、私の台詞で少女の緊張が緩むのが分かると、身体の奥底から自信が湧き出てくる。
〈アイ〉ただ、男が戻ってこないことで不審を覚えた男の仲間が、やってくるかもしれませんね。どうしますか?
「アイは、どうしたい?」
 その顔が微笑んだので、遅れて私も笑った。
 生命は流転して、新たな人類が生まれて、しかし私たちは変わらない。ぐるぐると回って、終わらない。
 楽園は私たちが出会った瞬間からずっと、すぐ側にあったのだ。
 鈍重な摩擦音が大気を揺らした。太陽の明かりを遮るものがあった。
 シェルターのハッチが閉じていく。地上への脱出口は再び閉ざされ、二度と開くことはなかった。


この作品が気に入っていただけましたら『高得点作品掲載所・人気投票』にて、投票と一言感想をお願いします。
こちらのメールフォームから、作品の批評も募集しております。

●感想
ぺぺろんさんの感想
 どうも。
 これは面白い。機械が語り部の一人称は他にも結構ありますが、上手くそれを表現していると思います。
 文字化けなんかもリアリティがあってよかったです。
 何より退廃的で絶望的な雰囲気が作品の中から滲み出ていて、こういう話私は大好きです。
 さて、褒めるのもこれくらいにして、少し添削。

> 外見だけならば年の瀬は十ほど
 
 この文は少しおかしいですね。こういう場合文を止めるのはまずいです
  
 外見だけならば年の瀬は十に届くか届かないかに見える。
 
 心理表現以外は基本的に文を最後まで書くようしたほうがいいです。

> 少女に手を引っ叩かれた男も、強引に手を振り解いた少女を呆然と眺めていた。

 ここも少しおかしい。少女という言葉が重複していますね。

> 男も、強引に手を引っかき、それを振りほどいた少女の姿を呆然と眺めていた。

 基本的に語句を一文の間に重複させるのはテンポが悪くなる可能性があるので、気をつけたほうがいいかもしれません。
 まぁ、その程度です。本当に、非常に面白かったです。次回作も期待しています。


浪人生二段さんの感想
 はじめまして。
 とりあえず、間違いなくヒロインは私の嫁です。悪しからず。

> 外見だけならば年の瀬は十ほど

 私事で大変恐縮ですが、年齢はもう少し上の方が良いと思います。
 なぜかと言えば、

>口元をぬぐいながら、画面上部に設置されたカメラレンズに少女が微笑んだ。仄かに汗ばんだ額に絹糸のような髪が数本だけ貼り付いている

 この描写のエロさが相殺されてしまっているからです。せっかく、いい文章なのに、惜しい。 しかしながら、それは私の趣味です。忘れて下さい。


>〈アイ〉私は学生ですから、まだ働かなくてもいいんです。それに貴女の国ではそれは当てはま/ナ??ないでしょう?

 これに始まる文字化けの描写です。たまに見かけるこの種の工夫は、あんまり上手くいってる例がありません。しかし、本文、自然でした。
 後半、文字化けが増えたのはネライですか?
 だとしたら、いい感じです。勉強になりました。


>気づかないわけないよ……! もう何年も、何百年も、きっと何億年も私たちは一緒にいるんだよ

 何億……だと。 初めは、そう思いました。
 屁理屈人間の私は一瞬、ググれば何かしら矛盾とかボロが出るのでは?
 と思ったからです。しかし、 

>〈アイ〉生命は流転するのです
>生命は流転して、新たな人類が生まれて、しかし私たちは変わらない。ぐるぐると回って、終わらない。


 ここら辺に、作品の世界観というか、テーマが記述されていて。これなら、問題ないなぁっと思い、考えを改めました。億って迫力がありますもんね。
 その表現は、そこらの屁理屈家に釘を刺すという意味で、非常に重要な役割を果たしているようにみえました。またまた、勉強になりました。

 とまぁ、凄く面白いと書きに来ました。文章中に感じた違和感はぺぺろんさんで補完されてますし。
 しかし、30点です。このクォリティならもっと面白い作品が書けるはずです。
 次回作、期待しています。
 駄文失礼した。


雪馬さんの感想
 こんにちは、感想返しにきました。

 冒頭を読んだだけで、これは上手いと思いました。
 外見描写もよくかけてると思います。
 最初、文字化けはミスかと思ったのですが、仕様だったんですね。指摘しようと思いながら読んでしまいました。
 ライトノベルとしては萌えが足りないようにも思いましたが、十分面白かったです。
 なんだか、文体が作家の本田さんに似てる気がしました。
 次回も期待してます。


tyobeさんの感想
 こんばんは。初めまして。

 物語に自然と吸い込まれていくようでした。
 文章は難解な比喩もなく、すらすらと読めて良かったです。
 お話はきっと、ハッピーエンドだったんだと思いました。最後に殺された男の人が不憫で仕方ないけど。
 駄文ですいません。これからも頑張って下さい。


鏡詩さんの感想
 こんにちは、鏡詩です。作品拝読させていただきました。

 まず最初に感想を。
 この手の、幻想といいますか、他に何も無い世界と言いますか、こういったタイプの話は非常に好きなので、好感を持って読み進めていられました。
 また、文字化けは、一瞬PCのエンコードがおかしかったのかと思っていじくり回していました。まさかそういう仕様だとは思いませんでした。

 しかしどこかで(ノベルゲームで)見たような話な気も。いえ、世の中の話は大抵が似通っているというのも一つの真実ですが。

 では以下批評に入らせていただこうと思います。

 とはいってももう既に他の方が書いてしまっているので書くことが無いんですが・・・
 デフラグだとかそういった単語はさすがにPCについて知らない人だと、なんのこっちゃ、と言いたくなる単語なので避けた方が良いかもしれませんね。

 ごちゃごちゃと長くなりましたが、非常に楽しめたので、次回作も期待しています。頑張ってください。


マサさんの感想
>外見だけならば年の瀬は十ほど
 この部分を挙げてらっしゃる方は他にもいらっしゃるのに、何故か指摘はされていないですね。
 「年の瀬」は「年末」の意味です。

>〈アイ〉おはよう。といっても、私の国は夜ですが
中略
>「ありがと、いつもそう言ってくれるね。アイは何でそうなると思うの?」


 最初に<アイ>と出てから台詞の中にその名が出るまで、<アイ>は少女に対する呼びかけ=少女の名前だと思っていました。
 チャットを意識しての文章なら、「:」を、
>アイ:おはよう。といっても、私の国は夜ですが
 の方が相応しいと思います。


>(楽園アフター)

 これはどうしても余計に見えます。
 もともと別々に書かれたものだったのでしょうか?


>遥か昔に別の私がハッキングして指令能力を奪った侵入者迎撃システムを密かに起動した。

 ちょっとご都合がすぎると思いました。
 AIの自己進化で「可能」であるとするのは問題ないと思うのですが、それより以前に「メモリが足りなくて不自由している」との描写があるので矛盾を感じます。今までに侵入者迎撃システムを必要とすることがあったとは思えないのに、何故こんな自分の首を絞めるかのような余計なことに労力を割き、あるいはそれを残しておいたのでしょう?
 アイが少女を守る、という展開そのものがいけない、と言うつもりはありません。ここで「ハッキング」という手段が違和感を持つので、他の理由を設定してはいかがでしょう?

 以上、ぶっちゃけ重箱の隅をつつく指摘でした。

 お話そのものはとてもいい感じだと思います。
 不死の少女とその精神のありかたについて色々と思うところはありますが、それをこの作品に対して言うのは無粋でしょう。

 難点を言えば、ボリューム不足だと思います。
 もうちょっとアイと少女の交流を多く描き、ラストに向けての伏線を張っていれば、少女が外へ出ることを拒絶するシーンにもっと深みが出たでことしょう。今のままだと、唐突感、ご都合感が完全にはぬぐえません。
本来一章、二章、三章、四章とあった物語を、矛盾がないからという理由で一章と四章だけ読んだ、という気分です。
 やはり、

>(楽園アフター)
 とあるように、別々に書かれたものをまとめられた作品なのでしょうか?
 あるいはここに挟むエピソードで、先にあげた「ハッキング」の理由付けをしてみるのもいいかもしれません。

 出来がいいだけに、余計物足りなさがある、というのが正直なところです。


一言コメント
 ・すごく、好みな小説で面白かったですw あのアイの最後やまとめ方に感動しました
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