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生者の魂を喰らい、死者の魂を引き寄せるハンニバル。そんな使い魔の次なる主とは――

ソウル・アンダーテイカー


 ○読者投票結果
 最高です!一押し。 36
 おもしろいです! 11
 なかなか良いです 2
 ふつうです 3
 イマイチです 3
 おもしろくないです。 1
 買うと損します。 0

ジャンル
現代ファンタジー
著者中村 恵里加
出版社:電撃文庫(メディアワークス)
発行年月:2005年02月
本体価格:670円 (税込 703 円)

みづきさん(男性・20歳) 猫舌さん一押し!

■ 解説                               

「運命。私は彼女との出会いをそう表現する。何とも都合のいい言葉だ。
 もっとも、そう胸を張って表明できるようになるのはだいぶ先のことであり、
 出会った時の印象といえば……最悪に近いものがあった」
 生者の魂を喰らい、死者の魂を引き寄せるハンニバル。
 主に忠義を尽くし主と共に死ぬ使い魔の常道から外れ、
 主に不義を働き主を冥府へと誘いながらも己のみは生き長らえるという死を招く猫。
 そんな使い魔の次なる主――江藤比呂緒は弱冠十二歳で、
 たぐいまれな霊的な素質を持っているが、とんでもない“大馬鹿者”で……。



■ みづきさんの書評                       

 端キャラから主人公までしっかりした造形がされており、一人一人のキャラに魅力があります。
 女性作家独特の絶妙な心理描写。それがなんとも憎めないキャラクターたちを描いています。


 しかしさすが中村恵理加というところでしょうか。
 馬鹿である主人公の比呂緒自身が最高の不協和音を奏でてくれる。
 常識のネジが外れた比呂緒の判断、思考、そういったものは時として恐怖にすらなります。
 萌えとか言ってる場合じゃありません。
 そんな彼女の正体が行間で明かされるラスト。
 彼女に与えられた使命は救いではあるけれど、皮肉でもあるという深さ。

 全体的に目に見えない不安を駆り立てながら、
 どこかしら和んでしまうという筆力は素晴らしいです。



お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?
 落合明海ことおっちゃんと江藤文華ことふーちゃん。

 おっちゃんは比呂緒の唯一の友達。
 比呂緒がどんな馬鹿をしてもずっと友達でいてくれる女の子。
 だけど彼女と比呂緒の関係は複雑なもので、
 もしかしたら比呂緒自身をおっちゃんは愛していないかもしれない。
 歪んだ優越感、義務感、そういったものだけが彼女と比呂緒をくくりつけているのかもしれない。

 ふーちゃんは比呂緒の妹。
 比呂緒が馬鹿で手がかかるから両親から受ける愛情も妹なのにちょっと少なめ。
 ド級の馬鹿である姉をふーちゃんが好くはずはない。
 ふーちゃんの比呂緒に対する態度は冷徹で容赦がない。
 口だけではなく両親の目の届かないところで姉に本気パンチをかます。
 時には蹴りをオマケする。ふざけているのではない。本気だ。
 だけど彼女は彼女なりに姉を愛している。
 殴って倒れた姉の反応が無くなった時、
 ふーちゃんは比呂緒へ言いようの無い表情をぶつけていた。

 なんとまあ、皮肉で容赦の無い人間関係なことか。
 何よりその全てが比呂緒本人にとって「本当に大事なこと」なのかどうかすら怪しいというのは、
 もはや空しさすら漂ってくる。



この作品の欠点、残念なところはどこですか?
 気になるところ、ですが。

 ダブルブリッドの頃からですが、ものすごいキャラの視点が変わりまくります。

  Aというキャラの心理描写をしていたかと思えば、
 次にはBキャラの心理描写に移り、さらにはCに移ることすらも。
 さすがに一つの段落でそんなことはしませんが、次の段落では移っていたりするので油断大敵。



■ 猫舌さんの書評                        

 銃を使って「帰れぬ魂」……つまり、幽霊を月に返すお仕事。
 それが、タイトルに在る「ソウル・アンダーテイカー」です。
 その「ソウル・アンダーテイカー」に絶対的な補佐をする、幽霊の使い魔{ファミリア}。
 その使い魔{ファミリア}の常道から外れ、主人を冥府へいざなっていく、
 死を招く猫の幽霊「ハンニバル」。
 そんな不吉な猫が取り付いている銃、
 アストラM44を、ひょんな事から手に入れてしまった、若干十二歳の江藤比呂緒。
 比呂緒はハンニバルを視認出来てしまったために、この銃と、ハンニバルの次なる主となる。
 比呂緒は、類まれなる霊的素質を持つ、言わば天才なのだが……

 真性お馬鹿。であった……

 そして、比呂緒は、「ソウル・アンダーテイカー」として生きている少年、
 三嶋蒼儀に出会い、ソウル・アンダーテイカーの道を歩んでいくが……
 と言うお話。


お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?
 この作者は「ダブルブリッド」という作品にて、電撃で金賞を取った人です。

 「ダブルブリッド」ももちろんお勧めです。
 両方共に言えることは。

 やはり、キャラ作りがかなり巧い、ことです。

 とくに、比呂緒がお馬鹿キャラなのですが、本当に自然にはまってます。
 いやー巧妙ですね。
 このようなお馬鹿キャラだと作者が空回りしてしまう事が多いのですが……
 周りを巧く固める術も心得ていて、とても読みやすいのが印象的です。


この作品の欠点、残念なところはどこですか?
 この作者は、かなり作品に複線を入れます。
 そのため「ソウル・アンダーテイカー」は一巻では終わらないだろうと解るのですが……

 ところが、執筆ペースがすごく遅い。
 一年くらいあたりまえペースです。

 まるでどこかの漫画家さんを思い出します……

 ちなみに、まだ「ダブルブリッド」も続いていて、今九巻なのですが、
 待たされてそろそろ2〜3年と言う長さ。
 おもしろいのに……

 しかし、「ダブルブリッド」が途中なのに、
 この「ソウル・アンダーテイカー」を書くという暴挙に出たりしてます。


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