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マテリアルゴースト
「起きてよケイ! もう朝だって!」 可愛らしい元気な声で、式見蛍の一日がまた始まる。 枕元で彼を揺り起こすのは、超絶美少女。 甘〜い同棲生活―かと思いきや、同居人の正体は浮遊霊だった!? 一見フツーの高校生・式見蛍は交通事故を機に 「自分から半径2m範囲内の霊を実体化する」という特殊能力を得る。 その結果、記憶喪失の幽霊娘・ユウに「憑きまとわれ」ることに。 普段はフワフワ浮遊している彼女も、蛍の側では体温&感触のある普通の女の子で―― 容姿端麗だけど横暴な先輩・真儀瑠紗鳥やクラスメイトの巫女娘・神無鈴音らに囲まれて、 蛍の賑やかな日常生活が幕を開ける。 第17回ファンタジア長編小説大賞佳作。ファンタジック・ゴースト・ストーリー。
『ああ……またありがちなラブコメか……可愛い女の子の幽霊が憑く? はん!』と。 言わせてください! ってか聞いて! これはそんなラブコメなんて簡単なジャンルによるひとくくりで終わる話ではありません! それどころか『ライトノベル』という狭い範疇にとどまりきれるものでもありません。 根源、『死』というものに対する憧れ…… この作品は人が誰しも抱いた感覚を書ききる究極のエンターテイメントです! 一ページを開くといきなり飛び込んでくる『首吊り自殺なんてものは最初から論外だ』の文字。 主人公の口癖が「死にてぇ……」 心理描写でも「死にてぇ……」 そんな話なのにネガティブさの欠片もなく、主人公は日常を楽しく謳歌して、楽しく会話して、 そんな描写を見て私達読者が1コマの描写で「くすり」と微笑できるほどの力さえあたえてくれます。 そのくせ盛り上がるところは非常に盛り上がります。 『生きているってことはすごいことなんだよ……』 最近読む話の主人公の思想が単一化している! 個性のある主張を、世界を体験したい! そんなことを感じている人にオススメな小説です。 少年の心理を描く……『どんなラノベよりもラノベらしいラノベ』であり 世界の真理を描く……『ラノベとカテゴライズするには余りにも大きいラノベ』でもある、と。 それでありながら、ライトノベル的な『主人公の熱くてカッコイイセリフ』も満載です。 つまるところ……いや、もうこの一言でいいでしょう 『面白いです!!読んでください!!!』
彼の『死に対する概念』は共感できるもできないも関係なく考えさせてくれます それとヒロイン?のユウ。 『幽霊初心者』で記憶喪失。 彼女が放つ『自己が認識できない不安』から繰り出される言葉の一つ一つが、 重みを持って心に響きます あとは、『美人で漢言葉の帰宅部部長』と『白磁の肌を持つ巫女服を着ない巫女さん』 ……気になってきました?
『死にむかう理由』というのが曖昧で、解らなくなるところがあるかもしれません。 あと、一人称で、一ページに詰め込まれている文章量が異様に多いので、 好き嫌いが分かれるかもしれません。
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マルゴの調停人
「…それにしてもたくさん集まっていますね」 俺の右隣にいる佐々木が口を開いた。 「そりゃあ、統べるもの公認のお祭りだもの」 今度は左に立っているイサが言う。俺は再びその集団に目をやる。 人型のモノもいれば、そうでないモノもいる。 毛むくじゃらの何か。狼みたいな顔の何か…。まるで百鬼夜行図みたいだ。 草が生え放題の広大な公園の中をそれらが埋め尽くして、各々好きなように行き交う。 これが壮観でないはずがない。 父親に会うためアルゼンチンまでやってきた高校生ケン。 平凡だった人生は、美少年イサとの出会いを契機に思いもよらない方向へ。 あちらとこちらの境界の向こう、人ならぬものが暮らす世界―― 彼はそこで起こった諍いをおさめる「調停人」の候補だそうで……。 第4回C・NOVELS大賞特別賞受賞作。
このキーワードの中のどれかにびびっときた方は是非ご一読を。 互いに異質な3つの要素ですが、これらが意外にマッチしている不思議な作品です。 「普通」の少年・ケンが、仕事で海外出張している父親に会いにいって〜 という一見ありがちなストーリーですが、ブエノスアイレスに行ってからが怒涛。 以下、ネタバレです。 序盤でいきなりイサ(ケンの知り合いの日本人の少年)がギャングを刺し殺してしまいます。 金を取られそうになってもみあって…という理由があるのですが、状況は待ってくれません。 イサを助けに追いかけてきたケンまで、ギャング仲間から追われる身になってしまいます。 捕まって、殺されそうになるのですが、その時イサが…。 と、これだけでまだ序盤。テンポの良さと内容の詰まりぐあいは必見。 文章力も確かです。目立ちませんが、丁寧かつ軽快、門外漢でも読める落ち着いた文章。 セリフばかりの文章に飽きた人、こういうラノベもあります!(と主張してみる) あと効能としては、南米旅行に行ってきました、とお得な気分にひたれます。
最初はちょっと敬遠していたのですが、本文P55の挿絵でうっかり惚れました。 白から黒への鮮やかな転身っていいですよね(笑) あとは美貌の調停人・ノエル。 目だった活躍はありませんが、何気なく大人〜な感じがいいですね。 カラーの口絵が彼なのですが、彼の持つ雰囲気がよく伝わってきます。
それは落ち着いた文体のせいもありますし、逆にそういうのを「狙っていない」のだとも思います。 ですが、ひしひしと読者に伝わってくる何かがあるはず。 大人なライトノベル読みたい人は、ぜひ。 残念なことにまだ一巻しかでていません。(2008年7月現在) それは続くかどうかが、読み手にかかっているともいえます。 私はこの作品が好きだし続いてほしい。 …というのは私情ですが(笑)とりあえず読んでみて下さい。 ついでです。表紙の絵が苦手という人がいるかもしれませんが、 まずは手にとってぱらぱらとページをめくってみてください。 お気に入りキャラで少し語りましたが、口絵のカラー絵は落ち着いた色合いで、とっても綺麗です。 絵師さんの印象が180度変わります…(汗)
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その小説、105円で売られているかも…… |
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