ライトノベル作法研究所
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  4. RAIL WARS!公開日:2012/10/08

RAIL WARS!―日本國有鉄道公安隊

ジャンル:現代FT
著者:豊田 巧
出版社:創芸社クリア文庫
発行年月:2012年02月

ドラコンさん一押し!

■ 解説

「電車内で痴漢が逃走したらどうする?」「もちろん射殺する!」桜井あおいは即答し、俺は頭を抱えた。
 超巨大優良企業・國鉄に就職し、安定した将来を夢見る平凡な高校生、高山直人。そんな俺が研修で配属されたのは、男嫌いの桜井をはじめヤバい奴だらけの「鉄道公安隊」だった!しかも、國鉄の分割民営化を企む過激派「RJ」まで暗躍し…どうなる? 俺の人生設計!
 コクテツが分割民営化されなかったもう一つの日本を舞台に、夢の鉄道パラダイス・エンタテイメント!定刻通りに出発進行。

■ ドラコンさんの書評2012/04/05

 名物列車、ローカル線廃止で、「これ以上ダイヤ改正をしないでくれ!」とお嘆きの鉄道ファンにお薦めできる1冊です。
 「コクテツが分割民営化されなかったもう一つの日本を舞台に」した作品です。ですから、引退した(させられた?)列車や車両が登場します。それに、登場人物の名字も、廃止されたものを含め、全員国鉄・JRの線名です。

 鉄道好きなら、思わず“ニヤリ”とさせられることでしょう。

 また、鉄道員として女性が多数採用されている。予算無駄遣い、組織内の縄張り争い、天下り、融通性なしのお役所根性が健在。このように、JRと旧国鉄との良いところと、悪いところが混然一体になっています。

 最初から、最後まで笑いっぱなしで読み通しました。続編を、期待しています。

お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?

 お気に入りは、主人公の研修配属先の上司、飯田奈々班長です。

 彼いわく、「幼稚園の先生って感じ」。こう書くと、非常に頼りなく感じます。しかし、むしろ逆で、思い切った決断ができる極めて頼りがいのある上司です。小さな子どもを相手にするような気の抜けた口調とのギャップに感じ入りました。
 また、男っぽい美女、「鬼軍曹」のような感じで職務厳正、公正無私の五能瞳隊長(主人公の短期講習の教官)との対比も良いものです。

この作品の欠点、残念なところはどこですか?

 それほどマニアックなことが書かれているわけではありません。
 それでも、鉄道用語に拒絶反応を起こされる方には、お薦めしかねます。

 ある程度説明はされていますが、「国鉄」「湘南色」「0系新幹線」程度の用語がすぐピンとくるぐらいの知識は必要でしょうか。主要な舞台が舞台ですから、主要駅の案内図が掲載されている全国版時刻表をお手元に置かれることをお勧めします。
 舞台のわりには、主人公の移動距離が短いです。トラベルミステリーのように全国を飛び回ることはしていません。

 この作品のジャンル分けは迷いました。主人公が、國鉄へ、就職活動のインターンシップに行っている高校生であるから「学園」。バトルもあることからすると「アクション・バイオレンス」。しかし、鉄道ファンの夢を描いた作品ですので、「現代ファンタジー」としました。

 鉄道ファンの著者と、マニアの絵師が組んだわりには、「山手線」を「山の手線」と表記しているなど、「若干詰めが甘いのかな?」と感じ る部分がありました。ただ、この点が作品の評価を下げることはありません。根本の部分ではしっかりとしているとの印象を受けました。

  「鉄道公安」が「鉄道会社の警察部門」であることを、カバー裏表紙の解説でも明記しても良かったのではないか、と感じます。ライトノベル の場合、書店によっては立ち読み防止のカバーがかけられていることもありますから。

 あまり現実的なことを考えず、「夢」を楽しむ作品であることを付言しておきます。

■ あなたはこの作品についてどう思いますか?(読者投票)

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