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陰陽ノ京
時は平安。陰陽道の名門に生まれたにも関わらず、 家業である陰陽道を捨て、文章道を選んだ一人の青年がいた。 青年の名は慶滋保胤。 保胤は大陰陽師・安倍晴明の依頼に応じて近頃都に現れた外法師の素性を調べ始める。 だが、それはとてつもない怨念と呪いが渦巻く事件へ保胤を導くきっかけに過ぎなかった…! 魑魅魍魎がうごめく平安時代の闇――。 いま、闇から滴る魔が世界を狂わせ始める……。 第七回電撃ゲーム小説大賞「金賞」受賞作、登場。
デビュー作ながら安定した文章力はこの時から既に健在。 地味ながら読みやすい文章、しっかりと軸の通っているストーリーには、 流石としか言いようがありません。 この作品最大の特徴といえば、地味なところですね。 陰陽師といえば誰でも知っていそうなのは安倍晴明ですが、 しかしこの作品の主人公は慶滋保胤という人です。 晴明と同じ時代を生きた実在の人物らしいですが、 知っている人は少ないんじゃないかと思います。僕も知りませんでした。 もうこの時点で地味な人物をチョイスしているのですが、 しかし地味なのは人物や文章だけではありません。 とにかく、陰陽師モノの癖に派手なドンパチが少ないんですね。 他の陰陽師モノがどういったものなのかは、 この作品以外に読んだことがないのでわかりませんが、 しかしここまで静かな陰陽師も無いと思います。 普通陰陽師といえば派手な呪術や符術などを用い、 異形のモノたちをバンバンやっつけていく感じのイメージが、 少なくとも僕みたいな若造にはあったのですが、 この作品はそんな僕の固定観念をぶち壊してくれました。 こういった違う見方もできたんだなぁと感銘を受けます。 地味なようにも見えますが、バトルありラブコメあり感動ありで、 盛り上がるところは盛り上がります。オススメです。
中年でなおかつタヌキのような体型ながらも、なかなか渋い。いちいち渋い。 他にもヒロインやら脇役やら、かなりバランスよく出番が描写されているので、 なかなか面白いと思います。
そもそもこの作品ちょっと脇役が、 主役以上にキャラ立っているような気がするのは僕の気のせいでしょうか。 気のせいならいいんですが、 どうも主人公の出番がもうちょっと多くてもいいんじゃないかと思います。 それ以外は、かなり安定している良作だと思います。
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ガイユの書 薔薇の灰に祈りを
すべては、行き場のない愛と死からはじまった…。 北方の小さな町の旅宿 “白羊亭”にひきとられひっそりと暮らす少女、ポーシア。 彼女はじつは、おのれの過去を知らず、愛する者を失い、 たったひとりこの世に放り出された“灰かぶり”――秘薬“薔薇の灰”のこどもたち――だった。 正体が露見すれば不死の怪物として忌まれる身に、謎の追っ手がつぎつぎ忍びよる……。 新・伝奇ロマネスク。
最終刊のラストでは涙が込み上げてきました。 これほど悲しく、清廉で美しい終わり方はなかなか見ることはできません。 内容は実にシリアスです。 響野夏菜と言えば『東京S黄尾探偵団』を思い浮かべる方が多いと思いますが、 そのノリで入っていったら確実に期待を裏切られます。 しかし、おもしろくないかと言えばそうではありません。 世界観がよく練ってあるのも理由のひとつですが、 主人公が〈灰かぶり〉という〈不老不死〉の宿命を負っているというのが一番大きい要素なのです。 数多く存在する〈不老不死〉設定ですが、このシリーズ内では彼らは徹底的に嫌われ忌避され蔑まれ、 そのせいでどこへ行っても追われる形になります。 社会に背を向かれ、絶望を味わいながら、それでも死ぬことができない運命にある主人公。 涙を流すことすらできない彼女が、どのような形で幸せを手にするのか――それが一番の見所です。 (果たして手にすることができるのか? こんなにひどい状況下で) もうひとつの見所は男性キャラですね。主人公とともに旅する〈灰かぶり〉。 主人公とそっくりの婚約者を追う学生。その同行者。 三人ともそれぞれ個性あふれるキャラクターです。 主人公を含むこの四人の主要キャラが、どのような形でそれぞれの人生に幕を下ろすのか。 そこにもぜひ注目してください。
一年前に失踪した婚約者を追って、身分を学生と偽って主人公の前に現れます。 シリーズの二巻・三巻は、その大部分が彼の視点で語られていて、 過去の記憶を持たない主人公が自分の婚約者ではないかと疑っているために、 主人公にまつわる謎を解き明かす重要な役割も負っています。 ……ですがそんなこととは関係無しに、婚約者一筋で旅を続けるところや 真面目なところは正統派王子の鏡です。 婚約者への愛を貫いて、生涯独身であったところなどは、堅物に過ぎるような気もしますが。 (でもそこがまたいいんですよね。女性視点から見ると特に)
いずれも単行本になることなく終わってしまいました。 シリーズ内でははっきり書かれていない、主人公の幸せだった頃や〈灰かぶり〉が生まれる背景などは、 この短編でしか知ることができませんでした。 なのでよけい、短編集が発売されなかったことが悔やまれます。
逆に世界観を表していて、じっくりと読めたと思います。 少年漫画的な熱い 展開はなく、キャラクタに感情移入して読むタイプの話でもなく、 ただ、人の世の無情と主人公達の生き方を書いているところが好きでした。
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楓の剣!
父の転勤で大坂に下っていた榊原楓が三年ぶりに江戸に戻ってきた――。 人々から「榊原の小天狗姫様」と称される楓は、男装の女武芸者で、 大身旗本の姫ながら常に袴姿で町を歩く、名物じゃじゃ馬姫だった。 ある日、腐れ縁の幼馴染みの筒井弥比古とともに、 狼藉者から子供を助けた縁で、陰陽師・速水宗一郎と出会う。 速水はそのときの御礼に、と源家重代の妖刀「鬚切」を二人に預ける。 楓は速水の菩薩のような人柄にすっかり惚れ込んでしまう。 ところで、江戸では、女の子が歌うわらべ唄を合図に鬼火がおこるという 「わらべ唄火事」が世間をにぎわせていた。 楓は弥比古、幼馴染みの嘉一とともに真相を探るが……。 第5回富士見ヤングミステリー大賞佳作受賞! 破天荒娘が大江戸を駆け回る――愉快な大江戸謎解き草子。
所々にあるギャグも思わずニヤリとさせてくれますが、 内容自体が怨み、憎しみ、嫉妬など人の負の感情をテーマとしている本作品は、 主人公側が時に傷つき、仲間達とすれ違いながらも、 いかにしてそれを解決していくのかが、ネックになってます! 特に終盤のやり取りは胸を熱くさせてくれます。 と、同時に優しい気持ちにもなれる良作なのです! また主人公とヒロイン(この場合、主人公は女の子だから、ヒーロー)が、 現代によく聞くツンデレなのではなく、両者ともツンツンなのは個人的にヤラらた〜、って感じです。 普段はいがみあっているのに、いざ隣にいないと落ち着かない、不安でしょうがない、 これぞ江戸剣客浪漫です!
(以下、若干のネタバレ) 物語中、突然幼なじみの羽織を着て男装するあたりなど、正しく痛快の一言に尽きます。
でも、特に気にする程ではないですが。
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