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  4. 主人公に読者を肯定させる公開日:2015/01/09

主人公に読者を肯定させる

 編集Yさんのコラム 2015年01月07日

 初めまして。編集Yといいます。
 現在ファンタジア文庫にて編集者をしております。
 4年ほど前から新人作家向けにFBで記事を書いていたのですが、この度退会と共に削除することになりました。しかし長年積み重ねてきたものを全て捨てるのも惜しく、どこか残しておける場所はないかと探した結果、こちらに辿り着き、投稿させていただきました。以下、記事となります。

 読者に主人公を好きになって貰う方法の一つ――いくつかあるうちのあくまで一つ――は主人公に読者を肯定させるということだ。
 ラノベの読者層がどんな人達なのか、恐らくあなたは大方知っているはずだ。(知らないとなれば大問題なのでいますぐ調べよう)
 「ぼっちって別に悪いことじゃないよな」と主人公に直接いわせるもよし。
 ゲームが上手いことを誇りにすら思っている様子を描写で示すもよし。
 とにかくラノベの読者を肯定してやればその主人公が好かれる可能性はぐっと上がるのだ。
 ヒロインが重要であるラノベとはいえ、好かれる主人公をつくることは魅力的なヒロインをつくることよりもずっとずっと大事であることは決して忘れてはならない。

 あなたには好きな人がいるだろうか?
 もし彼または彼女が辛い目に遭って泣いていたら、あなたはどうするだろうか?
 きっとあなたも悲しくなり、一緒に泣くことだろう。
 また、好きな人から嬉しい報告を貰った時には一緒に喜べるはずだ。
 逆に自分が嫌っている人間が辛い目に遭っていたらざまあみろと思うだろうし、幸せそうにしていたら面白くないだろう。
 ひどい、と思うかもしれないが、人間とはそういう生き物なのだ。

 さて、この話がラノベとどう関係しているのだろうと思う人もいるかもしれない。
 ここで上記のような話をしたのは、主人公を読者に好かれる存在にしろ、という話にしたかったからである。
 あえて主人公を嫌なやつにするケースもあるが、ラノベの主人公は基本、読者に好かれる必要がある。
 主人公が壁を乗り越えた時に「ケッ」と思われてはならない。
 一緒に達成感を感じて貰う必要があるのだ。

 ここで一つ実験してみたい。
 あなたが好きな人――友人、先輩、後輩、異性なんでもいいが思い浮かべてみて欲しい。
 できれば家族以外が望ましいが、他に思い浮かばなければ家族でも構わない。
 時間はいくらでもあるので、思い浮かぶまでこの行にとどまって貰いたい。

 思い浮かんだだろうか?
 あなたが今思い浮かべた人はきっとあなたのことを好きな人だろう。
 実際に好きであるかはわからなくとも、あなたは彼または彼女からの好感度はそれなりに高いと考えているはずだ。
 何故そんなことがわかるのか。
 人間というのは自分のことを好きだと思ってくれる人を好きになる生き物だからだ。
 自分のことを嫌いな人を好きになれる人なんてこの世の中にはまずいない。

 アイドルのプロデューサーなんかがよく使う手として、アイドルに様々な方法であなたのことが好きですよというメッセージを発信させるというものがある。
 実は私オタクなんです! というのはオタクであるあなたを肯定しますよというメッセージに他ならない。
 グラビアのデート企画もので「あなたのことが好き」と、書くのも見え見えなようで結構効果があるのはこのせいなのだ。
 オタクは嫌いだと発言してたちまち人気を落とした某芸能人もこのことを証明している。

 この「好き」というのは「肯定」といい換えることもできる。
 例えば私がここで「作家にろくなやつなんていない」とあなた達のことを否定したとしよう。
 あなたは私のことを好きになれるだろうか?
 きっとなれないだろう。
 逆に「先生のことを誰よりも尊敬しています」と肯定すれば、恐らく私の印象はそれなりによくなるはずだ。

 読者に主人公を好きになってもらうコツは、主人公に読者を肯定させることなのだ。

 さて、最後になるが、実は魅力的な主人公をつくるためには読者を肯定するよりもっと重要なことがある。
 例えば主人公には必ず欠点を持たせろ、というのがそれだ。
 しかしここであえて読者を肯定するという手法を紹介したのは案外見落とされがちな要素だったからだ。
 あなたの作品の主人公は読者を肯定しているか。よもや否定などしていないか。
 今一度確認してみて欲しい。

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