ライトノベル作法研究所
  1. トップ
  2. ライトノベルの書き方
  3. ストーリー
  4. 竜頭蛇尾を心がけるべし公開日:2012/01/09

物語は竜頭蛇尾を心がけるべし

 物語の導入部分である冒頭部は、小説の最重要箇所です。
 ここのデキによって、作品の評価の8割が決まると言っても過言ではありません。

 なぜならば、ほとんどの読者は、冒頭を見て興味を引かれなければ、その時点で読むのをやめてしまうからです。
 当サイト内で実施した『ライトノベル読者へのアンケート2010年版』によると、『ライトノベルの購入を決める時に一番重視する要素を選んでください』という問いに対して、1000人中134人の方が『冒頭を読んで惹かれるか』という項目に投票しました。
 これは『あらすじ』に次いで第二位であり、

 なんとキャラクターより、冒頭の出来不出来でラノベの購読を決めている人の方が多かったのです。
(ビニールカバーを本にかけている書店が多いことを考慮すると、冒頭を購入の最大の決め手とする人の割合はもっと高いと考えられる)

 あなたも経験ありませんか?
 本屋のライトノベルコーナーに立ち寄って、表紙やタイトルの気に入った小説を手に取る。
 そして、冒頭と粗筋だけ読んで、おもしくなさそうだったから書棚に戻してしまったこと。
 または、ネットしていて小説投稿サイトに立ち寄り、トップに表示されていた小説の序盤だけ読む。
 だけど、どうにも興味を引かれなくて、そのまま去ってしまったこと。
 私はそんなこと、しょっちゅうです。

 さて、これらのことからわかるように、小説は最初のスタート地点がなによりも肝心と言えます。
 冒頭部をインパクトの強いモノにして、読者の興味関心を引くことができなければ、その作品はそこで駄作の判決を受けてしまうのです。悲しいですが、これが現実です。
 作品の頭にこそ、最高のアイディアと全精力を注ぎ込みましょう。
 この小説はひと味違うぞ! というところを思いっきりアピールするのです。

 『終わり良ければ全て良し』などという格言は、小説の場合、適応されません。
 『初め良ければ、かなり良し』です。

 物語は「竜頭蛇尾」を心がけてください。
 なにも好きこのんで「蛇尾」にすることもないだろう、と思われるかもしれませんが、読んだ第一印象が良ければ、その後の展開が多少力の抜けたモノであっても、最後まで読んでくれる人が多いのです。

 また、冒頭の高いテンションをまんべんなく続けてしまうと、メリハリのない作品になってしまいます。
 全編通してヤマ場では、ヤマ場が無いのと同じことです。
 それ以上に、書き手もどこかで息切れしてしまいます。

 プロの作品に共通する手法として、衝撃的な冒頭の次に、テンションを緩めた平穏なシーンが挿入されます。物語の展開に緩急をつけることで、ヤマ場がさらに盛り上がるようになるのです。

 さて、では具体的に冒頭部をどのように工夫したら良いのでしょうか?
 まずは、ダメな例から紹介しましょう。

 どうでもいい通勤通学などの日常描写や、何の変哲もない家族や友人とのやり取り、世界観の説明をだらだら続けるのはNGです。

 手に取った小説の冒頭部がこんなものだったら、私の場合、それ以上読まずにみ~んな、サヨウナラします。
 非日常の世界を求めてライトノベルを手に取ったのに、その入り口が現実世界と変わり映えしない日常シーンだったら興ざめです。

 平和的な日常描写が、後に続く悲劇の伏線になっていたのだとしても、たいしておもしろくもない平凡なシーンを永延と読まされている方は、すぐに飽きて読むのをやめてしまいます。
 それなら、その悲劇から始めた方がよっぽどマシです。

 ステレオタイプな世界観を冒頭から押しつけてくるモノに対しては、
『竜が古代においてこの世界を支配していた?
 こんなありふれたどうでもいい設定なんぞ読みたくない』
 と読み飛ばすか、その場で読むのをやめます。 

 物語の冒頭は重大事件や悲劇、ラスボスからの苛烈な攻撃が加わるシーンにしましょう。

 なにか『非日常的な行動』をしているシーンから描き始めることが、初心者がおもしろい物語を作り出すためのコツです。 
 ミステリー小説のハウツー本には、冒頭には死体を転がせと書いてあります。
 手垢の付いたパターンですが、インパクトという点では有効な手法です。
 とにかく、読者の度肝を抜く、驚愕の冒頭部を創造してみてください。

 では、読者を釘付けにする冒頭部とはどんなものか、『スクラップド・プリンセス』『斬魔大戦デモンベイン』の2作品を例に上げて説明しましょう。

 まずは、小説からアニメ化されるまでに至った『スクラップド・プリンセス』 を例に上げてみます。
 『スクラップド・プリンセス』は、シャノンとラクウェルと、彼らの血の繋がらない妹パシフィカの兄妹愛をテーマにした作品です。
 実は、このパシフィカ。15年前の〈グレンデルの託宣〉によって、世界を滅ぼす猛毒と予言された廃棄王女です。
 彼女は王妃の計らいによって処刑される運命だったところを逃がされ、普通の少女として育てられました。
 さて、この作品の冒頭部は、物語の発端になった〈グレンデルの託宣〉から始まります。
 五人の神官が、血まみれになりながら密室から出てきて、マウゼル神の託宣を告げるというショッキングなシーンです。
 こういう謎めいた、それでいてインパクトある冒頭部にすると、その後に続く物語の期待感が膨らみます。

 次に、ノベルゲーム『斬魔大戦デモンベイン』のプロローグを例にあげてみます。
 デモンベインの冒頭部は、これまたインパクト大。
 地球を背にした宇宙空間で、最強クラスの2体の鬼械神(デウス・マキナ)が、頂上対決を繰り広げるというモノです。 
 鬼械神とは、古代の魔術師たちが持てる英知を結集して作った人造の神です。
 しかし、ヒロインのアル・アジフが操る鬼械神は、とある事情から本来の力が1割も発揮できない状態なっているので、あっさり負けて大気圏に叩き落とされてしまいます。
 ここで、アル・アジフと敵のボスの因縁を臭わせ、上手いこと伏線を張り、世界観の触りを説明しています。

 以上に上げた2作品は、最初からテンションの高い状態で始められており、読者は固唾を呑みながら作品の世界に入ることできます。

 このような冒頭部を工夫してみてください。 

あみんさんの意見2014/03/12

 以前に、こちらでよく勉強させて頂きました。
 最近(2014年3月)では、どうにも状況が変わってきているように感じます。たぶん業界が成熟して、「合格点」へのハードルは昔より上がっているのでないでしょうか。
 とりあえず「物語は竜頭蛇尾を心がけるべし」のテーゼについて。

 近況報告のようになってしまうのですが、実は自分は「展開が不十分」「終盤の盛り上がりが足りない」と批評されることが多いです(新人賞応募で)。
 近年は冒頭から前半だけでなく、最後までやりきらないと駄目なようです。そして「中途半端」でなく「書ききる」ことで、しばしば話が「深化」するので、自分でもやってみてもびっくりします。

 それにしてもレーベルごとに好まれるカラーの違いはあるかもしれませんが、新人賞の「講評」は参考になります(盲点に気付かせてくれますし)。正直、詳しい講評が受けられるなら、賞に応募するメリットは十分あると思いますよ。
 自分は最初の何年間か、「レスポンスが早い(早く結果がわかる)」「応募が簡単(メール可)」な出版社ばかり応募していたのですが、最近では「講評重視」になっています。
 変わるものですね。人間も、状況も(笑)。

通りすがりの物書きさんの意見2014/11/08

 記事の内容が少々、というかかなり危ういと感じましたので、意見させて頂きます。

 沢山の初心者も閲覧するサイトで竜頭蛇尾が真理であるかのように伝えてしまえば、作品をあまり書いた事がない人はこれを間に受けてしまい、竜頭蛇尾な作品が世の中に溢れてしまいます。
 そうして竜頭蛇尾な作品の供給量が増えてくれば、今度は読者がジャケット詐欺ならぬ、冒頭詐欺に耐性を持ってくるでしょう。
 読者だって馬鹿ではありません。
 良質な作品を求める読者は、もっと別の部分によって作品の価値を見極めるようになると思います。
 例えばレーベルとか。

 一度ならまだしも、二度三度と尻すぼみな作品ばかりをつかまされば、読者はそのレーベルを信用しなくなります。
 お分かりになるでしょうか?
 竜頭蛇尾を推奨するレーベルとは、本来積み重ねるべき信用を切り売りしているようなものなのです。

 意図的に竜頭蛇尾として作られた作品で、顧客から金を取ろうとするのは後ろめたい行為です。
 もっときつい表現をするならば、これは顧客を騙す行為です。
 ここ数年、自称プロの編集者さんでさえ竜頭蛇尾を推奨して自滅への道を歩んでいるように見受けられ、恐ろしいばかりです。

 竜頭蛇尾を推奨するのではなく、まずはインパクトの強い竜頭を創って読者を引き込む。
 その上で本当に伝えたい事へと誘導し、画竜点睛を欠く事がないように完結させる、と指導すべきかなと思いました。
 あくまで、核心部分へ誘導するための竜頭で御座います。

smanさんの意見2014/11/13

 ストーリーの竜頭蛇尾は、その通りだと思うけれど、それはしっかりとオチが書かれている(書くことができる技術がある)事が前提だと思います。

 なぜなら、読者が「この小説を読もう」と思う切欠は確かに竜頭蛇尾の竜、すなわち冒頭のインパクトや面白さに強い要素があるのですが、読者が「この小説は面白かった」と感じる要素は読後感にあり、読後というのは当然のこと序盤より終盤のほうが読者の記憶に新しく、鮮明です。
つまり、オチですね。これが弱いと(まさに竜頭蛇尾だと)、「最初は面白かったのにな」という感想にしかならず、次を手に取ってもらえない。

 読者を惹きつけるには「竜頭蛇尾」。
 しかしながら、やはり質を上げるには「終わりよければ全て良し」。

 もっとも、如何に優れた作品であろうと読んでもらえなければ意味が無いので、「終わりよければ」と言いつつも「全て良し」ではないでしょう。
 そういう意味では「竜頭蛇尾」は正しく、この記事が物語の序章についてのみの考察なら有益だと思います。

携帯版サイト・QRコード

QRコード

 当サイトはおもしろいライトノベルの書き方をみんなで考え、研究する場です。
 相談、質問をされたい方は、創作相談用掲示板よりお願いします。

意見を送る

『物語は竜頭蛇尾を心がけるべし』に対して、意見を投稿されたい方はこちらのメールフォームよりどうぞ。

カスタム検索