タイトル:プロローグを本編より後の時系列から始めて、最後の行で本編の内容を思い出すというのは大丈夫ですか?の返信 投稿者: 手塚満
よくあるパターンなので、手法自体としては問題ないと思います。が、狙いと注意点ははっきり意識して使わないと、むしろテンションを下げる等の弊害が起こることもあります。
狙いは単純でして、冒頭のツカミを作るということですね。時系列順だとどうやっても最初が目を引かない。地味で平凡なシーンしかない。読者は物語の先に何があるか知りませんから興味は皆無で、目を引くものがないと読むのをやめてしまいかねない。
そういう場合、盛り上がる中盤を先出で冒頭に使い、続くシーンが過去であると明示して続ける。パターン、テンプレ、セオリーの1つといえるくらい、よく使われてるんじゃないかと思います。
注意点は、それが出だしだということですね。出だしでは読者は作品知識皆無です。普通に中盤まで進んだら、読者にも作品知識は溜まっています。派手で変わった特殊スキルとかを主人公が持っているとして、いきなり行使しても読者は理解でき、迷いません。
それをそのまま出だしに持ってきたら、読者分かりません。繰り返しですが作品知識皆無ですから。分からないと思うと興味も失せがちです。中盤のエピソードだけど、何も知らなくても理解できるシーン作りをしないといけないわけです。
そうなるとジレンマが生じます。中盤ならではの盛り上がりなんだけど、中盤ならではの特徴、派手さなどの盛り上がり要素が使えない。無理に中盤を冒頭に持ってくると、ほぼ絶対的な禁じ手といっていい「冒頭の設定語り」になりかねません。
そういう点が心配なのは、お考えの冒頭が「日常からかけ離れた事件の異常さ」だからですね。異様だけど分かりやすくないといけないわけです。異様さの設定説明に堕してはならず、説明抜きで異様と分かり、事件の動き、キャラの動きが一読して理解できないと、興味を搔き立てることはできません。
それと、中盤でもう一度同じシーンが出てしまうと読者的には退屈になるリスクがあるんですが、「回想はプロローグ一回だけしか使うつもりはない」ということなので大丈夫のようですね。
しかし、それでも時系列を乱す必然として「そのシーンまでは主人公らは存命が決定」という点は要注意かもしれません。どんなピンチに陥っても、切り抜けることが確定してしまうわけです。
普通なら中盤で冒頭先出シーンが出てきたら、それ以降は死ぬか生きるかの危機が、きちんと危機になります。が、シーンを繰り返さないやり方だと、そこが分かりにくくなります。冒頭のシーンが終わったことを軽く言及するとか、ちょっとした工夫を入れておいてもいいと思います。
中盤を出だしに持ってきて、いきなり使えるのは主人公の性分、仲間との関係性などでしょうか。リアルからの類推がしやすいですし、どんな物語ででも開始以前からキャラクターが持っているものでもあるからです。
簡潔にまとめ直します。出だしに時系列で中盤のシーンを持ってくるなら、
・目的は目を引くこと。
・作品知識皆無でも分かる中盤シーンを。
・中盤の展開の支障にならないように。
・キャラクター性は打ち出して可。
くらいなところだと思います。