エンタメ小説の第一の勝利条件は、読者に面白いと思ってもらえること。なのでプロや上級者はそこを目指してしのぎを削っているはずで、創作技法の激戦区と言えます。
また、ワンシーン単位で面白いと思える展開を思いついたとしても、そこに至るストーリーに納得できなければ読者はしらけるだけだと思うんですね。ですから「面白くするための工夫」という質問に対して回り道のようですが、土台として小説全体が総合的にしっかりしていることが不可欠です。
とは言え、それでは答えになっていないのも確かなので、参考になるかもしれないことを一つだけ。虚淵玄さんが『まどマギ』についての対談で語っていたことです。
今の視聴者(読者)はエンタメずれしていて、頭の中にストーリーやキャラのデータベースができていると言うんですね。だから何を見ても「ああ、あのパターンか」と思ってしまうと。
そこで、よくあるパターンと思わせておいて、不意打ちのように予想をはずすサプライズを仕込みます。すると視聴者は、
「あれ? これは俺が考えていたのと違う作品かもしれないぞ?」
「これは、見ておかないとまずいかもしれないぞ」
そう思わせるように作るのがコツなのかな、と思っているとのことでした。
これを単に「ストーリーの意外性」の話と捉えてしまうと有り触れてしまいますが、今の視聴者の「エンタメずれ」という特徴を分析し、戦略的に思考している点に注目してください。