冒頭の印象的なワンシーンは、繰り返しますが印象的であることが第一。
くわえて欲を言えば、ストーリーの核心に関連する要素を含んでいると、なおよいかなと思います。
そういうエピソードなら先の展開につなげやすいということが、まず一つ。
それと、核心的な要素は作者としても力を入れている作品のウリだと思うんですね。そういうのを冒頭に入れられれば、かっこうの伏線にもなります。
例えば「最初に死体をころがせ」とよく言われますが、どうせならその死体の状況に犯人の動機やトリックを示すヒントが隠されていることも重要です。
ヒントや伏線は見え見えだともちろんダメですが、うまくぼかしてチラ見せできれば、適度な謎にもなります。
「これは、何かの伏線だな?」と読者に気付かせるまではOKなんです。伏線なのは分かるけれど、なんの伏線かは分からない。
読者は「分かりそうで分からない」ということにぶつかると、分かるまで読んでみたいという気持ちになるものです。
すなわち伏線は、単に先の展開を準備するためだけではなく、それ自体が読者に興味を持たせる演出にもなるんです。
ちなみに余談ですが。
「伏線未回収はNG」と言われる理由もこれです。伏線に気づいた読者は「これはなんの伏線だろう? わくわく」と思い、自分なりにも考えながら明かされるまで読み進め、答え合わせをしてみたいと期待します。
ミステリなんてジャンルはそういうのの典型で、「自分でも考えて答え合わせがしたい」という読者心理によって成立していると言っても過言ではありません。
伏線未回収は、読者のそういう期待感をすっぽかしてしまうので、非常にまずいんです。