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タイトル:【質問/考察?】主人公及び異世界の設定・描写、その解釈についての返信の返信 投稿者: 手塚満

(No.15の続きです)

3.異世界シャワー(JKハル)

「なろう」にあったものを読んだだけですが、結論を先に申せば「シャワーは必要であり、特別なものであってはならない」です。「JKハル」は女子高校生が(忌み嫌う男子高校生と共に)剣と魔法の欧風異世界に来てしまい、生きて行くために娼婦を始めるというものですね。娼館があって、そこに就職する。

主人公ハルは娼婦を否定はしないけれど、好感を持っているわけではない。娼婦として成り上がろうとも思ってない。欲しいのは平和な日常です。ですが、魔物もいれば戦いも絶えない世界のこととて、そうそうは上手く行かない。好きな食べ物だって、当初はない。感覚的な不満が溜まってしまう世界であるわけですね。

対象読者層を考えると、どうも自分には不向きのようです(少なくとも、女性向けだと感じた)。実際、感情移入もできなければ面白くもなかった。ですが、狙いは自分なりに分かります。娼婦となっても性的に屈せず、むしろ客となるキャラを軽蔑する。ただし、娼館の客だからではなく、普段、あるいは隠された人物像、性格、生き方を軽侮するわけですね。

だけど嫌なものばかりであるわけです(下手な話運びではなく、そこが溜めになって終盤で効果を出している)。物語を壊さなくて、しかしハルの息抜きになるものが必要となります。でないと、ハルに感情移入している読者も溜まる一方の嫌悪感に悩まされる。

だから「シャワー」があるんです。客を取った後、体くらいは流して清潔になりたい。嫌な客と取るという生理感覚的な下げの後、ちょっと上げるわけですね。その落差で、(主人公も読者も)少しホッとすることができる。

これは読者にもなじみがある「シャワー」だから良いわけです。イメージしにくい道具とか、不可思議な魔法で体を清める、では生理的な上げにならない。苦労して読み解いたら、論理的には清潔になることが分かった、ではまずいんです。感覚的にすっと分からないと、感覚的な上げにならない。

シャワーを例に貶した例のプロ作家さんですが、ハヤカワから出ているため、異世界感満載を期待して読んだようです。そりゃハズレと思うでしょうね。「JKハル」は主人公が不快な世界に転移したことが、読者に苦も無く分かることを狙って書いてあるようですから。作品の目的が違うんです。「あれは何?」「これはどういうこと?」みたいな、異世界観光的なものではない。むしろ、現実の不快感を利用し、分かりやすく強調するために異世界を利用してます。場所は隔絶、感覚は類似、といった感じですね。

そのプロ作家さんが、改善案として引き合いに出した作品事例もまずかった。例えば、ヒロインが卵を産む種族、なんてのを称揚して、「JKハル」に駄目出ししようとしてました。生活だけでも元の世界に回帰させたいという主人公、それに感情移入した読者の感覚が分かってない。感情移入した主人公が不潔なことだけでも嫌な思いをしているのに、シャワーはやめとけ、さらに卵を産むのがいいなんて。嫌悪感を減らす必要性・工夫に対して、嫌悪感を増す手法を提示してはいけません。自分が卵を産むと想像して、誰が共感し、嬉しがれると思うんだか。

そういう作品特有のことを度外視して、「異世界にシャワーがあってもいいの、悪いの?」なんて語っても意味はありません。もしシャワーの是非を考えるとしたら、「この作品のここで、こういう風にシャワーが出てくるのは、どういう効果になるのか?」といったことであるべきです。

繰り返しになりますが、「JKハル」は私には不向きです。ありていに言えば、嫌いなタイプの作品ですらあります。しかし、嫌いだからと言って、作品がなし得ていることまで否定することはできません。「JKハル」には、シャワーはごくありふれたものとして必要です。
(極めて個人的な判断ですが、件の作家さんは、自分の好き嫌いが万人共通であり、質の客観的な良さの尺度であると思い込んでいる節があるようです。しかも、どうあしざまに言うかを工夫しがちのようでもある。話半分に聞いておくべきだろうとも思っています。)

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