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タイトル:三人称視点についての返信 投稿者: 手塚満

主人公の視点で三人称というと、三人称一(元)視点と呼ばれるスタイルだと思います。書き方の(大雑把な)説明でよく言われるのが、「一人称で地の文の『私/僕/etc』を、主人公名に書き換える」というものだと思います。地の文の語り手という黒子的なキャラが地の文を語るんだけど、実態は主人公そのものということですね。

これに厳密に従うと、確かに一人称で書いてしまえばいいということになります。主人公に見えないものは、地の文の語り手も見えず、主人公が考えないことは地の文の語り手も考えない。あえて三人称一視点にするメリットを問われたら、地の文が多少は客観的な感じになるくらいでしょうか。

ですが、一人称と三人称一視点はちょっと違うものです。三人称一視点では、地の文の語り手が完全に主人公と重ならなくてもいいのです。地の文の語り手は主人公のすぐそばに付き添っているけれど、主人公そのものではない。地の文の語り手は、主人公の気持ち、思考等は全て分かるけど、すぐそばで主人公と同じものを見ているキャラです。さらに、地の文の語り手が主人公を見ることはOKです。そこが三人称一視点の便利な点ではないかと思います。

一人称と三人称一視点で、ちょっと具体的に描写例を考えてみます。

・一人称
私ははっと目を覚ました。授業中なのに、『机に突っ伏して寝てしまったらしい』。先生が怒るかと思ったら、こちらを見て吹き出している。あれっと思ったら、爆睡してよだれを垂らしていた。そりゃ笑うだろうな。

・三人称一視点
美恵子ははっと目を覚ました。授業中なのに『眠気がして、そのまま机に突っ伏して寝てしまったのだ』。先生が怒るかと思ったら、こちらを見て吹き出している。あれっと思った美恵子は、爆睡してよだれを垂らしていたのに気づき、そりゃ笑うだろうなと思った。『だが、実は顔に落書きされていたのだ』。

主な相違点を『 』でくくりました。三人称一視点だと、たとえ主人公が意識を失っても、どういう状態なのかを描写できます。一人称だと、意識がないのに状況を描写したら変ですよね。意識が戻っても推測でしか語れない。しかし、三人称一視点なら地の文の語り手が起きているから描写が続けられるわけです。

さらに、主人公の顔とか背中とか、主人公から見えない主人公の状況を描写しても不自然にはなりません。一人称なら、鏡を見るか、他のキャラから指摘してもらわなければ、主人公は自分の状態を描写できません。三人称一視点なら、すぐそばで見ている地の文の語り手だから、描写可能になるわけです。

使えたら便利だけど、三人称一視点かどうか微妙だし、書き方のコントロールが難しくなりがちなものもあります。例えば「美恵子の後ろから、こっそりと男子生徒が近づいてきた」とか。主人公とは違う方向を見てしまうと、(カメラ)視点がどこにあって、どちらを向いているのか、分かるように書くのはちょっと技術が要るかもしれません。

一人称は逆に制限が多いですね。書きたいことが書けないという不満が生じがちです。ですが、よく用いられるのは、制限が多いからこそ、カメラ視点がブレず、読者にとって描写が分かりやすくなる点です。一人称で書けてしまえるなら、一人称にしたほうが読者が読んで楽なものにしやすいでしょう。

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