「一人称寄りの三人称」というのは、三人称一視点(一元視点)のことですか?
そうだとして、以下に一人称との主な違いを書いてみます。
《一人称》
・地の文を主観的に記述する。話し言葉に近い感じに書くこともある。
・視点人物の心情を地の文の中に直接話法で記述することができる。
・視点人物の知り得ないことは書けない。
《三人称一視点》
・地の文を客観的に記述する。セリフ以外、話し言葉的には書かない。
・視点人物の心情を地の文に入れる場合は、基本的に間接話法で書く。(テクニックとして直接話法で入れてしまう作者もいますが、技術がないとグチャグチャになりかねないので注意)
・視点人物の知り得ないことを書くのは、NGではないけれど、やらない方がよい。
例えばA男がB子を眺めているシーンで、一人称なら、
・B子は人差し指を唇にあてて何か考えている。可愛いなあ。
と書けますが、三人称一視点では普通はここまでやりません。
・A男は人差し指を唇にあてて思案するB子の横顔をながめ、可愛いと思った。
こんな感じでしょうか?
>この視点にする利点はなんでしょうか。
一人称より客観的に書けること、自由度が高いこと。この二つがまずあげられます。
三人称一視点という手法が一人称のルールに準じるのは、読みやすさとや感情移入などの効果をねらった実践的な理由からです。なので必要に応じて一人称のルールから離れることもできます。
それと、これは私見なのですが一人称よりも三人称の方が情景描写がしやすい気がしています。
たとえば上の例文ですが、
・A男は人差し指を唇にあてて思案するB子の横顔をながめ、可愛いと思った。
これに、「窓からさす夕陽が思案するB子の姿にかすかな陰影をあたえ~」とかなんとか、もう少し凝った描写を付加したりできます。でも一人称だとこう書くとやや硬い感じがしてしまって、私の場合はちょっと書きにくいです。
なので、一人称はキャラの心情を描写するには向いていますが、場の空気感を演出するには三人称一視点の方が適しているんじゃないかと考えています。