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タイトル:起承転結の「起」で悩んでいますの返信 投稿者: あまくさ

サヴァさんがガルパンを例にあげていますが、確かにあの作品は好例だと思うので便乗します。

ガルパンでは主人公(西住みほ)が戦車道の家元(西住流)の次女という設定。序盤ですでに家出していますが、その理由が明確です(ストーリー上は中盤で明かされる)。みほと西住流の戦車道に対する姿勢がはっきり違うんですね。

西住流の戦車道は、「撃てば必中、守りは固く、進む姿は乱れ無し、鉄の掟、鋼の心」。わかりやすいです(笑)。
しかし主人公は対戦中に川に転落した味方を助けるために戦闘を離脱し、それが味方の敗北の原因になってしまいます。この事件が原因で主人公は西住流の落ちこぼれと看做されるようになり、彼女自身も戦車道に嫌気がさして家を離れることになります。

ここまではストーリーの上からは前日談になりますが、注目してほしいのは、

1)主人公をめぐる対立の構図が簡潔にわかりやすく示されている。

2)終盤のストーリー展開が、この対立(葛藤)に対する答えになっている。

という2点です。

2についてですが、これもわかりやすいエピソードが一つ置かれていました。
戦車道大会決勝戦の対戦中、渡河中の味方戦車の1台がエンジントラブルを起こしてストップしてしまいます。敵が迫っている危急の状況下で、主人公はチーム全体をストップさせて味方を助けることを選ぶんですね。

このときの、チームの一人、五十鈴華のセリフ。

「私、この試合絶対に勝ちたいです。みほさんの戦車道が間違っていないことを証明するためにも、絶対に勝ちたいです!」

このセリフ、大袈裟に言えば価値観の革命が起こっています。
「西住流」の思想では、作戦に齟齬が生じるのを無視して味方を助けることは「敗北主義」なんです。
しかし上のセリフは、主人公のやり方から「敗北ではなく勝利をめざすモチベーション」が生まれ得るというパラダイムシフトを含んでいます。
この主人公の性格は、優しい人間味が好感を持たれるタイプ。しかし一方で戦車道のリーダーとしての持ち味も描かれています。それは柔軟性と臨機応変な対応力です。それらすべてが戦闘中に味方を助けるという行動と結びついており、それに感銘を受けた仲間の心に「みほさんの戦車道が間違っていないことを証明するためにも、絶対に勝ちたい」というモチベーションを生み出すという、実にもって素晴らしい発想に辿り着いています。

最終話は「鉄の掟」の西住流を体現した主人公の姉(西住まほ)との一騎打ち。このラストバトルに主人公が紙一重の勝利を得るのは、まあ、予定調和といえば予定調和です。ですが少なくとも主人公の戦車道が西住流の戦車道に勝つことがあってもおかしくはないというところまでは納得できるプロットが作られていたと思います。
注目してほしいのは、「勝敗」と「優しさ」の二者択一ではなく、戦車戦による勝敗という同じ土俵で決着をつけてみせ、「優しいから負ける」のではなく「優しいから勝つこともある」という第3の道を示していたことです。

何が言いたいかというと、ガルパンでは主人公をめぐる対立の図式が明確で、それに係わる問題提起と結末に矛盾がないようにしっかりと考えられているということ。
そこが先決なのだと思われます。

で、ご質問の件に戻ります。

>「起」厳しい家から離れたくて家出

>ざっくり書いたから仕方ないとはいえ、この「起」ではいくらなんでも主人公が忍耐不足過ぎて共感が得られないから無しかなと。

いいえ。
ぜんぜん無しではありません。
ただし、厳しさのどこに問題があるのかを熟慮する必要があります。
例にあげたガルパンの発端だって、主人公が「厳しい家から離れたくて家出」したと纏めても間違いではないですよね? ただガルパンでは、主人公が西住流のどういう厳しさと合わなかったのか、それをどのように乗り越えたのかが具体的に描かれていました。

>「承」軽音部でのバンド活動でいろいろな思い出(本編ではここを膨らませていくつもりです)

膨らませるにあたって、主人公と実家との対立を克服するヒントを何らかの形で含ませる必要があります。そのへん、考えていらっしゃいますか? 考えているのなら、それと結びつけることによって起をどうするかという方向性は見えてくるはずです。

>さすがに身内殺しちゃダメだよ!というのも一意見として受け入れます

どうしてダメなのでしょうか?
身内の死が上に書いたようなことに結びついてくるのなら、誰を何人殺そうと問題ないと思いますよ。
まあ、序盤からあまり刺激が強いのは読者の反発をまねくかもという配慮ならわかりますが。そういう配慮も作品の仕様として軽視はできないかもしれませんが、このスレの質問の本筋とは無関係だと思います。
もっと重要なのは、そもそもプロット上、身内の死を持ってくる必要が本当にあるのかどうかということです。
どうも文面を拝見するかぎりでは、家の方針が厳しすぎるから家出したという動機では情けない感じがするから、もっとインパクトの強そうな理由付けを入れようとされたように窺われます。私の勘違いでしたら謝罪しますが、もしそういうことならその考え方には問題があります。
繰り返しますが主人公が実家と合わなかった具体的な理由、それが中盤とラストにどう係るのか、などを具体的に考えることが大切かと。
そういうことを考慮しないで取ってつけたように身内の死という要因を入れただけでは、それを中盤~終盤に活かすことが難しく、結果的に主人公はただ他力本願に動いているだけというストーリーになりかねません。

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