連載のウェブ小説ではとくにその傾向が強いけれど、エンターテイメントって消費されるものだから、コンビニで売ってる普通の商品と一緒で、パッケージに麦茶って書いてあって飲むとちゃんと麦茶の味がする、みたいな正直さが必要だと思う。
いくらウケる要素を詰め込んだタイトルにしても、中身がそれに見合ったものでなければ意味がないわけで。
いちばん重要なのは題名と中身(とくに序盤の内容)が即応してることじゃないのかな。作り手側からするとどうしてもひねったタイトルをつけたくなるけれど、序盤のキャッチーな部分をうまく要約した題名がひとつの理想じゃないだろうか。
たとえば「俺の○○が××な件」みたいなやつ。こういうタイトルだったらとりあえず主人公の○○が××になるところまでは読んでみようかなって思って手にとって、一話目からちゃんと○○が××になるのかならないのか、みたいな話が展開されているっていうのが良い。こういう、ラーメンを注文したらふつうのラーメンが出てくる、みたいな安心感が大事。ウェブ小説はどれも素人作品なので、読む側からするとタダで作品を選び放題である一方で、作品の質が全く担保されていないっていう不安感がつきまとうから「タイトルと序盤の内容が一致している」っていうのはほんとうに大きな安心材料になる。
追記。
ニャル子さんの投稿時タイトルに言及したコメントで思い出したのですが、西尾維新のデビュー作のクビキリサイクルは、投稿時『並んで歩く』というタイトルだったそうですね。原タイトルのまま刊行されてたら戯言シリーズがこんなヒットすることはなかったと思う。というかシリーズ化できたかどうかも怪しい。
たしかに、クライマックスの一番盛り上がるところまで読むと"並んで歩く"というタイトルに納得するんですよ。でも最後まで読まなければ納得できない題名というのはやはり、作品の顔としてはふさわしくない。クローズドサークルで連続首切り殺人事件を解決するミステリの題名として適切なのは圧倒的にクビキリサイクルのほうなんですよね。