詳細な解説ありがとうございます。
女性の存在を繰り返し意識しながらのモノローグという方法もあったかと思います。
ドラマトゥルギーについては、参考までに次の文章をご覧ください。
https://www.johnan.jp/soukei/pdf/2018/waseda_seikei_kokugo_01.pdf
古典的な5幕構成(悲劇)の順序が説明されています。
1、AとBの対立の事情
2、対立を通してAの力が強くなる
3、AとBの決定的対立
4、Bに敗れたAの力が弱まる
5、終結=調和
もし、伝説を観客が知っていたのであれば、「ひねり」は感じられないでしょう。
むしろ、観客の興味を引き付ける「劇的なもの」は、運命の反転を招いたものです。
そこでソフォクレスが選んだ「1」は「神をも畏れぬ傲慢」、つまり「人と神の対立」だったのではないかと思います。実際、「オイディプスが犯人だ」と告げる盲目の預言者テイレシアスは「第1エペソディオン」で登場していますから。
余談ですが、平田オリザなども……。
「仮名手本忠臣蔵」で最も重要なのは「大評定」の場だといいます。これは「バカな殿様のせいで家臣たちが右往左往する話」だからです。
「ロミオとジュリエット」なら、「2人が出会ってしまった」ことが最も重要ということになります。「無鉄砲な子供が大人たちを振り回した挙句、2~3日で死んでしまう」話なのですから。
ではなぜ、「忠臣蔵」は「松の廊下」が先に来るのか。
それはまさに、日本の伝統的な「絵巻物的方法」によるといえるでしょう。ひとつひとつの出来事が、独立した事件なのです。
それでも全体を通してみれば、「大評定」での対立が吉良邸討ち入りまでの事件を動かしているという点で、「ドラマトゥルギー」が働いているとみることができます。