「それ」「その」は文章を展開するときに、非常に便利です。便利さの裏、それらがどの言葉にかかってくるのか分かりづらいという欠点があります。
本来、指示代名詞は文章をすっきりさせる役割を持っています。しかし、指示代名詞は読み手の読解力を要求する言葉なので、多用しすぎると読み手を混乱させてしまいます。
例えば、この文章。
『私はコードバンの高級長財布を持っている。それはとても艶やかで美しく、その姿は品がある。それは手入れがとても大変で、こまめな作業を必要とする』
ボヤッと意味は伝わるかもしれませんが、とても「わかりやすい」といえる文章ではありません。
句点が付いて文が終わった、段落が変わったというときは指示代名詞をいったんリセットしましょう。
リセットした文章。
『私はコードバンの長財布を持っている。コードバンの長財布はとても艶やかで美しく、品がある。コードバンは手入れがとても大変で、こまめな作業を必要とする』
分かりやすくなりましたよね。
指示代名詞のうまい使い方といえば、「長いエピソードをくくる(例:人々は、その神話を〇〇と呼んだ)」「引用したものを強調する(例:それ、いいね)」などでしょうか。
「それ」「その」を、単語に変えられるなら変えてしまったほうが分かりやすいです。
お目汚し失礼しました。